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2006年1月 1日 (日)

「アリーテ姫」

Princessarite (2001年:オメガ・エンタティンメント/監督:片渕 須直)

 宮崎駿「魔女の宅急便」で監督補をやっていた片渕須直の監督第1作。彼は学生時代から宮崎がテレビ・アニメを作っていたテレコムにもぐり込んで、宮崎に脚本を書けとすすめられ、「名探偵ホームズ」の初期のエピソード「青い紅玉」、「海底の財宝」、「ミセス・ハドソン人質事件」、「ドーバー海峡の大空中戦」の4本の脚本を書いた。これらはすべて宮崎が絵コンテ・演出を担当し、いずれもシリーズ中屈指の傑作となった(前の2本は「ナウシカ」、後の2本は「ラピュタ」のそれぞれ劇場公開時に併映されたので、覚えている方もいるだろう)。そんなわけで名前はずっと覚えていたので、今回の監督デビュー作には注目していた。

 原作はイギリスの童話。嫁ぐ日まで、お城に幽閉されたお姫さまが魔法使いにさらわれ、やがて自分の意志で生きる道を切り開いて行く・・・というのがストーリー。まあ無難な材料だと思って見たのだが・・・。出来としては予想を裏切る-いや、ケナしているのではありません。逆に、良い意味で予想以上の作品に仕上がっていたのである。

 アリーテ姫のキャラクター・デザインがまず変わっている。普通のお姫さまとはかなり印象が異なり、眉は太く、髪はボサボサ、はっきり言えば田舎娘のようである(宮崎駿が美術設定を担当したテレビアニメ「母をたずねて三千里」の主人公、マルコと似ている)。そして、宮崎ヒロインのように行動力を発揮して大活躍するわけでもない(そうなる要素はあったのに…である)。かと言って、彼女が無気力だというわけではない。好奇心は旺盛で、書物はたくさん読むし、さらわれる前にはこっそり城から抜け出して町の様子を観察したりもする。むしろ姫は、アクションでなく、自分の立場や存在について考察し、「自分探し」を目的として行動する、いわゆる心理面での“冒険者”であるのである。これはアニメの主人公としては異色である。その上、アニメ特有のアクションも、ギャグも、笑いも少ない。だから子供たちには退屈でつまらないと思えるかも知れない。それが、アニメであるにもかかわらずごく限定された地域での、ミニシアター公開となった原因のようである。

 しかし、映画ファンから見れば、これは非常に知的好奇心をくすぐられる作りとなっている。魔法使いに誘拐されているにもかかわらず、彼女はおびえもせず、芯の強さと知的行動力を見せ、王子様の助けも借りず、自分の力で活路を切り開いて行く。魔法使いも、その落ち着いた立ち振る舞いにむしろ感動し、彼女を解放するのである。・・・これ、どこかで見たことありませんか?宮崎駿のファンなら気が付くと思いますが・・・

 答を言いましょう。・・・前述の、片渕監督が脚本を書いた、名探偵ホームズ「ミセス・ハドソン人質事件」と、話の展開とヒロインの行動などがそっくりです。ビデオを持ってるなら、一度見比べてください。あちらも、シリーズとしては珍しくアクションが少ない一編でした。

 まあこれは私の独断と偏見だが、そういう意味でも、姫のキャラクターは、アクションこそないが、宮崎ヒロインと共通するものがある。不思議な飛行メカとか、突然飛来する金の鷲とかの宮崎的アイテムもチラリと登場するし…。インタビューによれば、片渕監督はこの作品を「こころの活劇」として楽しんで欲しい…と言っている。なるほど、分かる気もする。ともあれ、見ておいて損はない異色のアニメであり、また、異色のアニメ監督の誕生を告げる作品でもある。彼の2作目が楽しみになって来た。で、片渕さん、次は同じホームズの「ドーバー海峡の大空中戦」みたいな大活劇作りませんか?   (採点=★★★☆) 

(2001年8月1日)

   

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