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2006年3月19日 (日)

「サウンド・オブ・サンダー」

Soundofsander (2005年・ワーナー/:監督 ピーター・ハイアムス)

 SF界の大御所、レイ・ブラッドベリの短編小説の映画化。監督は秀作「カプリコン・1」をはじめ、「2010」「アウトランド」「タイムコップ」など、SF映画は得意のピーター・ハイアムス。

 西暦2055年、タイムトラベルが可能となった時代、旅行社が6,500万年前の白亜紀に恐竜ハンティングに行くツァーを企画する。歴史を変えたら大変な事になるので、もともと現地で死ぬ運命にある恐竜を倒すだけとし、過去からは何も持って帰ってはならない等の厳しい条件でツァーを行っている。ところが、客の一人がうっかりあるものを持ち帰ったために、地球の進化が大きく狂い、人類全滅の危機が訪れる。果たして人類は過去を復元し、歴史を元に戻す事が出来るのか…。

 まあ、このパターンは昔からよく使われており、有名な所では「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」でも、スポーツ年鑑を過去に持ち込んだ為に、現代が大変な事になっていた。藤子・F・不二雄原作の映画「ドラえもん・のび太のパラレル西遊記」も、同じような話であった。1952年に書かれたブラッドベリの原作は、現代が大変な状況になった所で終わっており、原作にない、再び過去に戻って時間軸を元に戻そうとするくだりは、どうも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をパクっているフシがうかがえる。まあ「バック・トゥ-」自身もブラッドベリ原作を前半部分のヒントにしたかも知れないのでおあいこと言えなくもないが(笑)。

 クランクイン後、製作会社が倒産したりで一時は製作中止寸前にまで追い込まれたようだ。そんな事情もあってか、SFXは最近のSF作品に比べたらかなり雑で安っぽい。その点をとらえて、ネットレビュー等では相当酷評されているようだ。しかし私はSFXがチープだろうが、大した問題ではないと思っている。要は、映画そのものが面白いかどうかという点にあるのだから。むしろ、SFXは凄いけど、映画はてんでつまらない作品の方がよっぽど腹が立つ「ザ・コア」とか「ステルス」などはその典型である。

 本作は、私の独断と偏見だが、製作時のトラブルを逆手に取って、あえてB級映画的な面白さを狙ったのではないかと思っている。大量の虫(?)に襲われたり、ヒヒと爬虫類のアイの子のような怪物が大暴れしたりするシーンは、まさにかつてロジャー・コーマンが量産していたB級SF映画のノリである。未来都市の造形や、車のデザインなど、細部にもなかなかのこだわりが見られ(それらの造形スタッフとして、あの「ブレード・ランナー」シド・ミードの名もクレジットに見る事が出来る)、私は結構楽しめた。ラストはちょっと甘い気もするが、トラブルを乗り越えここまで仕上げた職人ピーター・ハイアムスの頑張りに免じて許そう。

 (採点=★★★★

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2006年3月 7日 (火)

「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」

Waresgroumit (2005年・ドリームワークス/監督:ニック・パーク/スティーヴ・ボックス)

今では希少価値となった、クレイ(粘土)・アニメ・シリーズとして、これまで短編が数本作られ、大評判となったおなじみコンビ主演の久しぶりの、そして初の長編作である。―それにしても、前作「ウォレスとグルミット危機一髪!」(95)から、実に10年!も経っているのである。初期の作品からの大ファンである私にとっては、特に感慨深いものがある。

本作のような、人形を1コマずつ動かす、いわゆる“コマ撮りアニメーション”は、古くはジョージ・パルによる“パペトゥーン”の時代から、レイ・ハリーハウゼンやわが川本喜八郎などの活躍もあって一時は人気があったが、なんせ1分撮るのに1週間かかるという、おそろしく根気と時間がいることもあり、加えてここ数年の、コマ撮りアニメより手間も時間もかからないCGアニメの台頭により、コマ撮りアニメは存亡の危機を迎えたと言っていい。そんな時代に、ひたすら粘土アニメにこだわり続ける、本シリーズの生みの親であるニック・パークの存在は貴重である。…それにしても、10年前にはCGアニメなんてなかったはずである。技術の進歩は目を見張るものがある。なお、ニック・パークのクレイ・アニメ作品としては2000年に「チキンラン」(ピーター・ロードと共同)が作られている。

で、物語の方は、野菜畑を荒らすウサギ退治に、発明家のウォレスと助手のグルミットが乗り出し、ウサギ捕獲機や、ウサギを野菜嫌いにする洗脳マシンなどを次々発明し、稼動させるのだが、手違いから大騒ぎになって行く…というおなじみのパターンで、まず安心して観ていられる。いつもながら、いろんな映画のパロディ(今回は特に'50年代B級ホラー・SF映画中心)も満載で、映画ファンなら余計楽しめる。なお本年度のアカデミー賞では、見事アカデミー長編アニメーション賞を受賞した。

10年経ったとはいえ、作り方は基本的には同じで、ギクシャクした動きもほとんど変わらない。人形の表面にうっすら指紋が残っているのもご愛嬌。ただし、夥しい数のウサギやら、100人もいるという町の人々が動き回るので、手間は昔よりもっと大変だろう。なお、ガラスの捕獲機の中をウサギが空中遊泳するシーンでは一部CGが使われている。大人から子供まで楽しめる、手づくりの芸術品と言ってもいい佳作である。

あえて難点を挙げれば、長編(1時間25分)になった分、話が広がり過ぎて散漫になった感があった(特にウォレスの変身はいま一つ)。

30分にぎっしりアイデアとギャグを詰め込んだこれまでの作品(「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ」「危機一髪!」等)の方が私には愛着がある。未見の方には是非それらの作品もビデオなどでご覧になることをお奨めする。     (採点=★★★★☆

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