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2006年5月 3日 (水)

「鴛鴦(おしどり)歌合戦(デジタルリマスター版)」

(昭和14年・監督:マキノ正博)

Osidori1_1 この映画は戦前に作られた旧作ですが、私の大好きな作品であり、また最近デジタル・リマスタリングされ、大阪・九条のシネ・ヌーヴォにて公開中ですので、是非多くの方に観ていただきたく紹介いたします。

 

これは、実に楽しい、和製シネ・オペレッタの快作です。まあ和製ミュージカルなのですが、セリフがほとんど歌になっており、こうした作品は当時からオペレッタと呼ばれておりました(最近では鈴木清順監督の「オペレッタ狸御殿」がありましたね)。

とにかく、出演者のほぼ全員が歌ってます。バカ殿役のディック・ミネや服部良一の妹で歌手の服部富子は言うに及ばず、主演の片岡千恵蔵も、志村喬も市川春代もみんな歌っております。あの志村喬サンが気持ちよさそうに、♪さ~てさてさてこの茶碗♪-と歌うシーンは必見(いや必聴)です。

Osidori2 この志村さんが、意外!にも結構いいノドを披露します。マキノ正博さんの自伝「映画渡世」によれば、ディック・ミネがそのうまさに驚嘆して「志村さん、是非テイチクに入りなさいよ」と強く薦めましたが、本人は冗談と思って、実際にあったレコード会社からの誘いにも乗らなかったそうです(笑)。

お話は実に他愛なく、千恵蔵を取り巻く美女たち(市川春代、深水藤子、服部富子)の恋の鞘当て、それにお春(市川春代)に惚れたディック・ミネのバカ殿がからんでの大騒ぎ、最後は千恵蔵とお春が結ばれてのハッピーエンドとなります。

その底抜けに明るい歌合戦とドタバタぶりは、とても戦前(それも第二次大戦間近)に作られたとは思えないくらいです。それだけでも映画史に残る快挙といえましょう。

これほどの名作が、別に予定していた作品が流れ、急遽短期間で早撮りしたというのですからまた驚きです(脚本、作詞・作曲に要した日数はわずか4日間!ということです)。また千恵蔵がこの時盲腸炎を患い静養中で、彼がカメラの前に立ったのは、わずか2時間だったというのも信じられないエピソードです。

なお撮影を担当したのは、後に黒澤の「羅生門」や溝口健二の「雨月物語」を手掛けることになる名手・宮川一夫である点にも注目です。

ミュージカル好きな人なら必見です。そして、「寝ずの番」を監督したマキノ雅彦の伯父で、数々の娯楽映画の名作を作った稀代のエンターティナー、マキノ正博監督の素敵な職人技をとくと堪能あれ…。

シネ・ヌーヴォの上映は5月19日まで、モーニングショーでの上映(6日~12日はレイトショーもあり)。お見逃しなく。  (採点=★★★★★

 

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コメント

コメント、ありがとうございます。感謝します。マキノ正博監督の映画を1作品のみの上映っていう企画者の意図がわかりません。亡くなって何年になるのでしょうか。誕生○○年特集、没後○○年特集なんて、やってほしいですね。日本映画史を語る上で、なくてはならない監督ですから。若い人にも観ていただいてほしいと願う一人です。

投稿: 冨田弘嗣 | 2006年5月 9日 (火) 00:05

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