« 「インサイド・マン」は誰だ | トップページ | 「嫌われ松子の一生」 »

2006年7月 2日 (日)

「カーズ」

Cars (2006年・ピクサー/監督:ジョン・ラセター)

CGアニメ界を常にリードして来た、ピクサー社の新作で、しかも監督がピクサーの総帥、ジョン・ラセター。実に7年ぶりの監督復帰である。

大いに期待する半面、ちょっと心配もあった。なぜなら、同じく監督業を休業して製作総指揮に回っていたジョージ・ルーカス久々の監督復帰作「スター・ウォーズ・エピソード1」が駄作だったからである。やはり永年のブランクは大きいと思った。

おまけに、これまでの“おもちゃ”、“虫”、“お化け”、“魚”などは一応生き物か、手足のある、擬人化し易いものだったのに、“車”という表情も手足もないメカを主人公にするというのは相当な冒険(と言うか暴挙)である。果たして楽しめる作品になっているだろうか・・・と不安を抱きつつ観た。

結果として…面白かった。いや、ピクサー作品としては「モンスターズ・インク」以上に感動した。これは本年でもベスト3に入れたい心温まる秀作であった。

まず何より、キャラクター造形が素晴らしい。フロント・ウィンドウを目玉にする…という発 想が秀逸。マブタもあるし。これで凄く表情が豊かになった。パトカーはいかにもちょっと冷たくてコワそうだし、町の重鎮、ドック・ハドソンは老獪さと渋みがにじみCars3出ている。レッカー車のメーターは人懐っこくて愛嬌があるし、ヒロインのサリーはマブタにアイシャドーがかかってる!(笑)。どうでもいいけど、ちょっとクレヨンしんちゃんに似てます←(笑)。

CG技術はさらに進化している。車のボディには周囲の風景が映ってるし、山の上から見たアリゾナの広大な自然は実写と見まがうほどリアル!
細部のこだわりはハンパじゃなく、サーキットのタイヤスリップ跡、タイヤのゴム滓が走行の都度飛び散ったり、ハドソンの物置では舞い上がったホコリが差し込む陽光に反射しているところまで描いている(アニメでそこまでやりますか!)。

Cars2  

 

 

 

そうした技術的な素晴らしさにも十分堪能出来るが、
この映画の素敵な所はそれだけでなく、“人が生きてゆくうえで、本当に大切なものは何なのか。勝つことよりも、速く走ることよりも、もっと大事なことを忘れてはいないだろうかという点にテーマを絞り、それをきちんと描いている所にある。

主人公のマックィーンは、レースに勝つことだけが目標の傲慢な若者。友人もいないし、信頼出来るピットクルーもいない。

そんな彼が、レースの最終舞台カリフォルニアに向かう途中、ひょんなことから幹線道路から外れた小さな田舎町“ラジエーター・スプリングス”に迷い込んでしまう。

おまけに、パトカーに追われ、慌てて逃げるうちに道路を壊し、裁判の結果、道路を修復するまで町を出る事を禁止される。

レースに出たいマックィーンは何度か町を逃げ出そうとするが、その都度捕まり、渋々工事車を牽引して道路工事をする事となる。

だが、人懐っこいメーターや、純朴な町の住人、愛らしく、世間から見捨てられたようなこの町を心から愛しているサリーたちと暮すうち、マックィーンは次第にこんな田舎町もいいもんだと思い始めるようになる。

そのマックィーンの心境の変化を観客に納得させる為には、サリーに案内されてマックィーンが見た、町はずれの山から望むアリゾナの大自然の風景を雄大かつ美しく描く必要があるのである。

ラストでマックィーンが選択する、ある勇気と決断には、目頭が熱くなる。
それが前述のテーマである。

マックィーンは、勝つことよりも、本当に大事なものを得たのである。

 

観終わって、古く懐かしい、アメリカ映画のいくつかの秀作を思い出した。

フランク・キャプラ監督「のいくつかの名作「素晴らしき哉、人生!」「我が家の楽園」「オペラハット」・・・

シドニー・ポワチエが、荒野の真ん中に教会を建てる工事をするハメになり、最初はイヤイヤながら、やがては進んで工事に取り組む…というラルフ・ネルソン監督「野のユリ」(63)…。
特にこれは、舞台の土地もアリゾナという共通点もある。

まさか、21世紀、コンピュータ・グラフィック、自動車…というハイテク・アイテムだらけの映画で、キャプラ的世界を味わうとは思っても見なかった。
CGが格段に進化しても、人間味や温かいハートは少しも失っていない。むしろ、近代化、ハイテク化が進む中で多くの現代人が失ってしまっているモノが、ここにはある。

それだけに、余計感動したのである。

オトナが見ても感動する見事な傑作だが、子供にも是非見せてあげて欲しい。きっと大切な何かを学ぶはずである。
特に、物を壊したら、必ず償いをしなければならない…というモラルを頭に教え込むには持ってこいである(笑)。

アニメでは、とかく派手にモノをぶっ壊したまま、後始末を何もしない…という作品がほとんどだけに、これには溜飲が下がりました。見習って欲しいですね。

エンドクレジットも、いつもながら楽しい。過去のピクサー作品のパロディには大笑いしました。絶対最後まで席を立たないように。    (採点=★★★★★

 

ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログへ

|

« 「インサイド・マン」は誰だ | トップページ | 「嫌われ松子の一生」 »

コメント

TBありがとうございました。
いつもながら楽しく読ませてもらいました。
個人的にはフィルモアのバンパーに貼られていた
'Save 2D Animation.'
というステッカーに泣かされてしまいました。

投稿: nikidasu | 2006年7月 3日 (月) 01:53

>nikidasuさん

コメントありがとうございます。
へえぇ、そんなステッカーが貼られて
いたのですね。気が付きませんでした。
まだ他にもあるかも知れませんね。
今度見る時は、そこらも要チェックですね。

投稿: Kei(管理人) | 2006年7月 4日 (火) 01:03

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/174742/10755634

この記事へのトラックバック一覧です: 「カーズ」 :

» カーズ(字幕版) [ネタバレ映画館]
 ケニーG風の音楽聴いてたら眠くなって事故るぞ! [続きを読む]

受信: 2006年7月 2日 (日) 10:04

» カーズ [Akira's VOICE]
観賞後グッズを買いに走り, 帰り道に目にした全ての車に愛着が湧きました。 [続きを読む]

受信: 2006年7月 2日 (日) 10:34

» 感想/カーズ(試写) [APRIL FOOLS]
たまっちゃったから今週はレビューウィーク。とりあえず5日連続で映画の感想いきます。 『トイ・ストーリー』のジョン・ラセター監督が6年ぶりに撮ったディズニー/ピクサー映画『カーズ』。7月1日公開! 『カーズ』公式サイト レーサーのマックィーンは、スピード命のかっ飛び野郎。が、次のレースへの移動中、地図からも消え行く滅びの街に迷い込む。一悶着の末、しばし街に残ることを余儀なくされたマックィーンだったが、地に足つけながら街の復興を願って生活する街の人々(ん、クルマか)を見るうちに、自らの生き... [続きを読む]

受信: 2006年7月 2日 (日) 10:51

» 今回は大人向けかも?ピクサー映画「カーズ」 [bobbys☆hiro☆goo☆シネプラザ]
※画像は試写会終了後に 行われたキャラクター人気投票で bobbyshiroが投票した 「グイド」です。 「トイ・ストーリー」の ジョン・ラセター監督の 新作ピクサー映画「カーズ」の 試写会に行ってきました。 ワンパターン的な感じもあるが どうして「ピクサーの映画」は 楽しくて 勇気と希望をいつも与えてくれるのだろう? 俺が幼稚すぎるのかなあ〜 今度は<クルマの世界>だったので 話の�... [続きを読む]

受信: 2006年7月 2日 (日) 13:40

» カーズ・・・・・評価額1700円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
「ビックリした!」というのがファーストインプレッション。 ジョン・ラセター御大自らが、久々に送り出してきた作品が、これほどマニアックな代物だったとは。 「カーズ」は、勿論非常に優れたファミリー映画である... [続きを読む]

受信: 2006年7月 2日 (日) 14:16

» 「カーズ」 Cars [俺の明日はどっちだ]
主人公は、オーバルコースのレースで活躍するアメリカレーシングカーのスティーヴならぬライトニン・マックィーン。 レースに勝つこととより大きなスポンサー契約にしか関心のなかったマックィーンだったけれど、大事なレースを前に、ルート66にある田舎町「ラジエーター・スプリングス」に迷い込んでしまう。 そしてそこでトラブルを起こしながらもやがて町の住民というか住車(?)と友情が芽生え、そうした様々�... [続きを読む]

受信: 2006年7月 2日 (日) 19:41

» 『カーズ』(字幕版) [京の昼寝〜♪]
今度の奇跡は「クルマ世界」に起こる 地図から消えた街「ラジエーター・スプリングス」を救え! ■監督・脚本 ジョン・ラセター■キャスト(声) オーウェン・ウィルソン、ラリー・ザ・ケーブル・ガイ、ボニー・ハント、ポール・ニューマン、マイケル・キートン□オフィシャルサイト  『カーズ』   (注:結構重いので開くのに時間がかかります。) カー・レース... [続きを読む]

受信: 2006年7月 3日 (月) 12:47

» 栄光の意味と価値を問う映画。『カーズ(字幕版)』 [水曜日のシネマ日記]
車たちの世界を舞台に、レースでチャンピオンを目指す人気者のレースカーと、それを取り巻く車たちの物語です。 [続きを読む]

受信: 2006年7月 4日 (火) 12:30

» 【劇場映画】 カーズ [ナマケモノの穴]
≪ストーリー≫ カー・レースの最高峰ピストン・カップに出場する若きレーシングカー、マックィーン。新人ながら天才的な実力と圧倒的な人気を誇る彼は、優勝まであと一歩のところまで登りつめていた。ところが次のレースの開催地へ向かう途中、マネージャーとはぐれたマックィーンはルート66沿いのさびれた田舎町へ迷いこんでしまう。突然のハプニングで気が動転し、町の道路をメチャクチャに破壊してしまった彼は、道路の補修を済ますまで町に足止めされることに…。(goo映画より) まあ磐石な作りでしたね。ちょっと小生意... [続きを読む]

受信: 2006年7月 7日 (金) 20:20

» 『カーズ』 [Simply Wonderful ‐Cinema&Diary‐]
轟渡るエンジンの爆音! タイヤの焼ける匂いまで伝わってきそうなリアリティ溢れるレーシングシーン。 迫力のあるレーシングカー同士のデッドヒートには、いやが上にもテンションは急上昇! 今年のピクサーアニメの主人公?主人車?は、レーシングカーのライトニング・マックイーン。 ちょっと小生意気な奴だけど、レーシングカーの王者決めるピストンカップでは、新人でありながらチャンピオンを狙う実力派! 当然スポンサーやファンの期待の的! ... [続きを読む]

受信: 2006年7月 8日 (土) 22:28

» カーズ/吹替版(映画館) [ひるめし。]
そこは、地図から消えた町――― CAST:山口智充/戸田恵子 他 ■アメリカ産 122分 他の製作会社のCGアニメは字幕版で観るけど、ディズニー、ピクサー作品だけは吹替版で観るという変なポリシーを持っているワタシ。 おもちゃ、昆虫、モンスター、魚、ヒーロー、ときて今回は車のお話。 人面CARが活躍するのよ。目も口も歯も舌もあるのよ。車のくせに眠くなっちゃうし。 人、動物、その他の生�... [続きを読む]

受信: 2006年7月 9日 (日) 15:32

» カーズ−(映画:2006年92本目)− [デコ親父はいつも減量中]
公式サイト 監督:ジョン・ラセター 評価:90点 (ネタバレあります) トイ・ストーリーをはじめてみたときに、そのCGのリアルな質感に驚いたものだ。 あれは画期的な映画だった。 それからPIXERはいくつものCGアニメ映画を作ってきたが、今回の完成度の...... [続きを読む]

受信: 2006年7月10日 (月) 01:19

» ★「カーズ」 [ひらりん的映画ブログ]
見れば面白い・感動する・・・ディズニー&ピクサーアニメなんだけど・・・ クルマが喋る・・・っていうのにちょっと抵抗感。 しかし、全米興行収入3週連続トップだとか・・・ 主人公の声が、オーウェン・ウィルソンだとか・・・だったので、 字幕版で観て来ました。 [続きを読む]

受信: 2006年7月11日 (火) 03:26

» 久々に手放しで褒めたい PIXER映画「カーズ」Cars  コレ泣けます! [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜 ]
傑作「トイストーリー」から始まって、「バグズライフ」↓、「トイストーリー2」↑、「モンスター・インク」↓、「ファインディング・ニモ」→、ついには「インクレディブルズ」↓↓... とフルCGの進化はともかく、段々と作品の質の低下が見られると言っても仕方なかったPIXERの映画でしたが、最新作の「カーズ」Cars 、コレ久しぶりにきました!!    「トイストーリー」または「トイ�... [続きを読む]

受信: 2006年7月17日 (月) 08:46

» 『カーズ / CARS』 字幕版 ☆今年60本目☆ [honu☆のつぶやき 〜映画に恋して〜]
「ファインディング・ニモ」「Mr.インクレディブル」のピクサー社がクルマの世界を舞台に描く冒険ファンタジー。 監督は「トイ・ストーリー2」以来6年ぶりとなるジョン・ラセター。 天下のピクサーといえども、車を擬人化させるなんて大丈夫かなぁ?と一抹の不安を...... [続きを読む]

受信: 2006年7月17日 (月) 15:20

» カーズ<ネタバレあり> [HAPPYMANIA]
登場するのは全て車、車、車レース場のシーンで観客も全て車 その車が人間の様な動きや表情をする。とにかく画像がキレイ キレイ過ぎるっ さすがピクサートイ・ストーリーを観た時 凄いと思ったけど 年数が経てば更に進化しまくりですマックィーンとサリーがドライブ...... [続きを読む]

受信: 2006年7月18日 (火) 00:38

» カーズ [ちわわぱらだいす]
うおおおぉぉ・・・ ちょ~っと~すごく感動したんですけど~(T-T) うさぎは感動ものは絶対に見に行かないんです。。。泣くのがいやだから。 これにはだまされたね~ 夏休みの子供向けの映画だと思っていたのですが、あるサイトで すごくいいと書いてあったのでチェック..... [続きを読む]

受信: 2006年7月27日 (木) 19:23

» 「カーズ」 [Tokyo Sea Side]
期待して観に行った映画はいつも割りと評価が低いものなのですが、今回期待を裏切りませんでした!序盤からスグに引き込まれ、車なのに愛着がわきます。特にラストはとにかく感動!普通に泣きました。成長していく姿は見ていて良いものですね。ディテールも細かい部分まで凝っているので、ストーリーともに楽しめます。そしてピクサーはエンドロールまで楽しめるので、最後まで見ないと損ですよ☆とにかくオススメです! [:URL:] 『カーズ』... [続きを読む]

受信: 2006年7月28日 (金) 00:33

» Cars [Tokyo Bay Side]
『カーズ』 アメリカでは一大メジャースポーツとしてF1以上の人気を誇るといわれるNASCAR。今作はそんなアメリカンレース特有のエキサイティングなシーンが満載でとても楽しかったです。 中でもお気に入りはミハエル・シューマッハ(フェラーリ)の登場シーン。シューマッハを目の前に大興奮のルイジと、目を真ん丸にして言葉を失うグイド。結局2人して失神してしまうシーンは場内大爆笑でした。 [:URL:] 『カーズ』... [続きを読む]

受信: 2006年7月29日 (土) 14:01

« 「インサイド・マン」は誰だ | トップページ | 「嫌われ松子の一生」 »