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2006年11月 4日 (土)

「スネーク・フライト」

Snakeflight (2006年・ニューライン/監督:デヴィッド・R・エリス)

わぁーっはっはぁ~ 楽しい~ 笑える。頭をカラッポにして、とにかく107分間楽しむ事だ。この映画に理屈やツッ込みはいらない。気分転換にはもって来いのお奨め作である。

前作「セルラー」でも携帯電話を絶妙に生かした展開で唸らせたデヴィッド・R・エリス監督、本作も“飛行機がヘビに乗っ取られたら…”という、とんでもないおバカなお話を、実にうまく料理して最後の最後まで楽しませてくれる。

発想はB級映画そのものである。―大体がヘビが出て来る映画はB級に決まっているのである。題名挙げてみようか。「怪奇!吸血人間スネーク」「残酷ヘビ地獄」「人蛇大戦・蛇」「恐怖!蛇地獄」…まあ題名だけでも想像がつく、むしろC級作品といってもいい。最近の「アナコンダ」は出来のいい方で、B級なのにA級に見えてくる(笑)。

ジャンル的には、“パニック映画”と称される部類の作品だが、映画史的に見ると、このジャンルには大きく分けて2種類に分類される。それは、“動物もの”と“乗り物もの”(語呂悪いな(笑))である。

動物もの”は、かなり昔からある。巨大化したクモとかアリ(ほとんどは放射能の影響)が人間を襲う、典型的なB級SF作品は'50年代によく作られた。逆に小さい方では、人喰い蟻の大群が襲ってくる「黒い絨氈」 (54)が有名。主演は後に猿の奴隷となるチャールトン・ヘストン。鳥が人間を襲うヒッチコック監督の「鳥」(63)は傑作。

これらは単発で飛び飛びに作られて来たが、'75年にスピルバーグが「ジョーズ」の大ヒットをぶちかましてからは、それこそ雨後のタケノコの如く動物パニック映画が量産された。
クマあり、タコあり、ネズミに猫に下水道のワニに蜂の大群、ミミズの大群もあればクモの大群もありと百花繚乱、そのうち下火になったが今もタマにポツリポツリと作られている。まあ息の長いジャンルと言えよう。

一方の“乗り物もの”では、'70年の「大空港」(原題:Airport)が嚆矢で、以後、「エアポート」シリーズが数本作られる。船の方では、最近もリメイクされた「ポセイドン・アドベンチャー」(72)が大ヒット。スケールがでかい分、A級作品が多い。他では、地下鉄やら大陸横断超特急やらといろいろ。我が国でも刺激されて「新幹線大爆破」(75)が作られ、フランスで大ヒット。後にはこの作品のアイデアをパクった「スピード」が作られた。

 
長々と紹介して来たのは、こうした過去の作品を知っておくと、本作が余計楽しめるからである。

何しろ、上の例でも分かる通り、本作はこの2大パニックものジャンルを見事にくっつけているのである。長い歴史があるパニック映画だが、今までこの2つを合体させてみようとは、誰も思いつかなかったのだろうか。考えた人エライ・・・と言いたい所だが、こともあろうに“ヘビ”を乗せるとは…。
何故かと言うと、前記のように、飛行機もの=A級パニックであり、一方のヘビ=C級ゲテモノ…といった具合に、ジャンルがまるでクロスしないのである。考えた人の頭の中を覗いてみたいものである。

しかし映画は予想以上に面白い。過去の、それぞれのジャンルにおけるアイデアもうまく取り入れている。例えば、ヘビに噛まれてパイロットが死んでしまい、操縦をどうするのか…というくだりは、セスナと衝突して機長が吸い出され、副操縦士も重傷を負うというお話の「エアポート’75」からいただいているし、ヘビの目線によるカメラ移動は「ジョーズ」である。

本作は、そうしたスリリングなサスペンスを盛り上げる部分では正統派映画の流れを継承しつつ、時にうんとおバカな笑いを網羅し、それこそ“笑いと恐怖のフーガ”を奏でているのである。

さまざまな難関もうまく配置されている。空の上だから逃げ場がないし、近くに降りる飛行場もない、蛇が特殊な種類で血清が足りない、パイロットが不在でどうやって着陸するのか、なおも襲ってくる蛇はどうやって退治するのか…と絶体絶命の状況をセットし、さて、それらをどうクリアするのか…。その解決方法もまさにおバカで大笑いさせてくれる。

こういう企画は、我が国なら絶対通らないだろう。それを結構な予算もかけて作り、そして大ヒットさせてしまう(初登場第1位!)アメリカ映画界と観客(それにこんな映画に嬉々として参加し楽しんでるサミュエル・L・ジャクソン)のそれぞれの懐の深さを思い知らされる。

エンド・クレジットにおけるミュージック・クリップもこれまた楽しい。

それにしても、韓国の「グエムル―漢江の怪物」といい、金をかけてしっかり本格的に作ったおバカ映画が、それぞれ大ヒットしているのはうらやましい限りである。我が国にそんな時代がやって来るのはいつの日の事だろうか。    (採点=★★★★

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コメント

 トラックバック、ありがとうございます。偉大なるB級映画でした。予算をかけて、スタッフもキャストも有名だからA級になってしまいましたが、限りなくB級に近いA級ですね。いいオッサンたちが集まって、こんな映画を作っているのが羨ましいとも思います。動物パニックの時代がありましたね。特にゲテモノをぞろぞろと。時代は繰り返されるのでしょうか。これからゲテモノぞろぞろ映画が・・・私はこういう映画も大好きです。歴史を語りながらうならせる評論。読ませてもらい、ありがとうございます。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2006年11月 8日 (水) 23:45

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