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2007年2月25日 (日)

「バブルへGO! タイムマシンはドラム式」

Bubblego (2006年・フジテレビ=東宝/監督:馬場 康夫)

1980年代後半、「私をスキーに連れてって」「彼女が水着にきがえたら」などの軽快でファッショナブルな青春映画を連発して一世を風靡した、ホイチョイ・プロダクション・ムービーの'99年の「メッセンジャー」以来8年ぶりとなる新作。

いつも、時代のトレンドを巧みに切り取り、かつ日本映画には珍しい、洋画センスのギャグや語り口(当時としてはです。)で、馬場康夫は私にとってお気に入りの監督だった。

前作「メッセンジャー」は、絶頂からどん底に落ち込んで、そこから必死の努力で這い上がり、遂に勝利する…という娯楽映画の王道パターンを巧みに踏んでいて、大好きな作品である。

本作は、今度はタイムスリップSFコメディに挑戦。それも、800兆円という借金で崩壊寸前にある日本経済を救う為、その遠因となったバブル崩壊を食い止めるのが目的という。なるほど、さすが発想がユニークである。

厳密に言うと、バブル崩壊の元となった、大蔵省の「総量規制」通達をストップしたからと言って、日本経済が良くなるわけはない。バブルとは、実態価格以上に土地の値段が上がり続け、文字通りパンパンに風船が膨れ上がった状態であるので、総量規制をしなかったら、更にバブルは膨れ続け、結局どこかでパンクする事となる。その場合、日本経済ほもっと大変なことになる。

日本経済を立て直す為に過去に行くのなら、むしろ土地価格が異常に上がり始める直前の時代に行って、そこで土地価格上昇規制をかけるべきだろう。

・・・と言ってしまえば身もフタもない(笑)。本作は、バブル絶頂という、今から考えれば若者から家庭の主婦に至るまで、何も考えずに浮かれていた、あの時代を振り返り、笑い飛ばし、皮肉るのが目的であるのだから。今の40歳代以上の人なら、当時を振り返り、懐かしさ半分、後の半分はなんでみんなあんな事やってたのだろうと複雑な気分になるだろう。それぞれのバブル体験を語り合うのも面白いかも知れない。

私の体験では、とにかくマンションの価格が異常に跳ね上がり、買って7年で買値の3倍くらいになっていた。あの時売ってれば…(泣)。今では元の価格程度です。

やはり元凶は銀行だろう。なんせ個人向けに、「株投資資金ローン」、不動産業者向けに「土地転売資金ローン」を堂々売ってたのだから。借りた金で株を買ったら数日で何倍にもなって、それでローン返してボロ儲けできたのである。その資金でまた株買って…こんな事繰り返してたら確かにバブルになるわな。政治家も銀行でカネ借りて株投資に注ぎ込んでたなぁ。

 

で、映画の方は、そんな浮かれたバブル時代を見事に再現していた。ディスコ・ブーム、ワンレン、ボディコン、ソバージュヘア、あったなぁ。船上学生パーティなんて、聞いた事はあったけどあんなものだったんですね。さすが当時、若者の風俗や流行、アイテム等を分析、紹介していたホイチョイだけの事はある。

馬場監督は、そうした時代風俗を巧みに取り入れ、幾分自虐を込めてシニカルに描きながらも、映画全体としてはコメディ・エンタティンメントのツボをちゃんと押さえて、前作同様、楽しい娯楽映画になっている。
その為に、ややバブル時代描写は食い足りないものになっている。

例えば、大蔵省銀行局長を一番の悪玉にして、それを退治するというパターン通りの展開にしているが、バブルに踊っていた、本当の悪玉と言える土地業者や銀行、政治家―といった連中をもっと叩いて欲しかった。…がそうするとエンタティンメントになりにくい。娯楽映画としてはこのくらいが妥当なところだろう。

洋画ファンの馬場監督らしい、洋画的エッセンスも散りばめられ、その辺りも楽しみどころである。全体的には、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」へのオマージュにもなっている。過去の時代で、現代であった出来事をそのまま繰り返すギャグ(例えば、現代では借金取りの田島に真弓が追いかけられるシークェンスは場所もカット割も現代と全く同じ)や、未来から来た事をなかなか信じて貰えない辺りなど。

下川路(阿部寛)が女の子に一発殴られる度に「効くねぇ」と同じセリフを繰り返す(このセリフが一番最後に出るシーンが笑える)などはまさに洋画センスである。私見を述べると、この辺りのギャグはマンガ…特に高橋留美子作品からいただいているフシがある。例えば、女同士が言い争っている間に、いつの間にか下川路の姿が消えたと思ったら、もう別の所で女を口説いている…というくだりは「うる星やつら」の諸星あたるの行動とそっくりである。女に手当たり次第にモーションかけては「このぉ女たらしがあっ!」と殴られるギャグも「うる星」タッチである。

ギャグあり、ドタバタアクションあり、時代の変化に対するシニカルな観察眼もあり、親子の情愛もあり…といろんな要素を巧みに配した脚本(君塚良一)もいい。気軽に楽しめる娯楽映画としては及第点であると言えよう。

総量規制通達を撤廃し、現代の日本に戻って来たら、時代がすっかりいい方に変わっている…というのも「バック・トゥ・―」にそっくりである。CGを使った、現代の余りにノー天気でオーバーな変わりようが、「これはあくまで笑って楽しめるB級娯楽映画である」と宣言しているようで潔い。突っ込もうと思えばいくらでも突っ込みどころはあるが、ヤボなツッコミは止めて気軽に大笑いするのが正しい鑑賞法だと思う。

PS:現代の阿部寛の髪型がなんだかコイズミ元首相に似てるなあ…と思っていたら、ラストはそういう事だったのですね。しかし、映画を製作した当時は、まさかアベ総理大臣”が誕生するとは思わなかったでしょうね。そこまで予想してたとしたら大したものですが(笑)。      (採点=★★★★

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 ご無沙汰しています。トラックバック、コメント、感謝です。単身赴任で中部におられるとか・・・。本当にご苦労様です。駅前、社長シリーズ、クレージーキャットシリーズ、私も大好きです。若大将シリーズもかなり観ました。そんなわけで、昔の喜劇を楽しんだのですが、私は2本立ての添え物映画のような印象を受けてしまいました。重い映画を観た後だったからでしょうか?どうも最近の東宝には偏見を持っています。客観的に書くことができないのが、私の癖みたいなもので・・・ちょっと反省です。読ませてもらいました。ありがとうございます。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2007年3月10日 (土) 00:41

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