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2007年4月 7日 (土)

「デジャブ」

Dejavu_1 (2006年・タッチストーン/監督:トニー・スコット)

出だしと予告編から受けるイメージと、後半がまったく違うというタイプの映画が最近のハリウッド映画では多くなって来た。1昨年の「フォーガットン」がいい例で、いかにも複雑な心理ミステリーあるいは謀略サスペンスと思わせておいて、実は○○だった…というオチに唖然とした。

あっちは伏線も何もない、とってつけたような展開に呆れてしまったが、そんな前科があるものだからこっちも疑り深くなってしまう。本作も、予告編を観ると、いかにも未来予知能力が絡んだオカルト・サスペンスのようである。で、これは前掲作を思い出してひょっとしたらアレかな?と予想したら本当にアレだった(笑)。

しかし、さすがブラッカイマーと言おうか、前掲作のようなトンデモ作にはなっておらず、巧妙に散りばめられた伏線が見事に生かされていて、同じダマされるにしても、まんまとダマされて感心したくなる、なかなかよく出来た佳作に仕上がっている。

無論、人によっては、「どこがデジャブなんじゃい~」と怒りだしたくなる人だっているかも知れない。

しかし、“伏線がよく練られた作品は秀作である”が持論の私としては、この巧妙な伏線に唸ってしまった。と言うのは、伏線とは本来“結末の謎解きのヒント”というのが一般論であるのに対して、本作の伏線はその定義をもう一度捻ってある点がユニークなのである。実は題名の「デジャブ」とは決してインチキではなく、この伏線の二重のヒントにもなっているのである。私はそこに感心して唸ってしまったのである。

以下は完全なネタバレです。映画を観た方のみ、ドラッグして反転させてください。

映画は、フェリー爆破というテロ事件に端を発し、捜査を担当したATF(アルコール・タバコ・火器取締局)の辣腕捜査官ダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン)が、衛星を使った政府の極秘装置=通称“タイム・ウインドゥ”―4日と6時間前の、指定範囲内のどんな映像も再現出来る―を利用し、なんとまあ過去の世界にタイムスリップしてしまうという、早い話がタイムマシンものSFになってしまう。

そして、ダグは過去の世界で、現在の世界では500人が死亡したテロ事件を回避し、それにからんで惨殺された美女、クレア(ポーラ・パットン)の命を救おうとする。

過去に戻って、歴史を良い方向に変えてしまおうとするタイムマシンものは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を始め多数作られており、それ自体は目新しい事ではない。

しかし、よく考えると、辻褄の合わない点(それが伏線でもあるのだが)がいくつかある。

何故なら、現代において、既に次の事象が発生しているからである。

①ダグの勤務するATFにかかって来た、クレアからダグ宛のメッセージ電話
②クレアの自宅で目撃する、マグボードに残された"U CAN SAVE HER" の文字
③同じくクレア宅の流しに残された、血の付いたガーゼ
④手袋をつけて捜索したはずのクレア宅の各所に残された、ダグの指紋
⑤犯人のアジトに残る、吹き飛ばされた家とボックスカー

これらすべては、後に過去の世界にスリップしたダグ自身が、過去の世界において行動したか体験した事実ばかりである(過去の世界で追体験することになるこれらの事象はまさにダグにとって“デジャブ”である)。

すなわち、“惨事が起きた現代の世界にも、実はダグが未来から来ていた事を示している。

ダグは、タイム・ウインドゥを利用し、一度過去に戻って事件を防ごうとしたが、結局わずかの差で失敗し、―死んでしまった…… 

そういう事なのである。

そこでまた、気になるセリフがある。

ダグはタイム・ウインドゥで過去に飛ぶ前に、博士に、「本当に2度目なんだな」と聞いている。

またその直前、「これからそっちに行く」とダグからかかって来た電話に、すべてを悟っているかのような表情をする博士。―

つまりは、ダグが過去に行くのはこれで2度目であり、博士はその事を知っているから、いろいろ彼にアドバイスもするのである。

何故知っているかという点については、恐らく未来の博士から現在の博士宛に、転送装置を使ってその事を書いたメモが転送されて来たのだろう。「多分ダグが過去に行きたいと言って来るだろうが、その通りにしてやってくれ」とかなんとか…。

こう考えて来ると、この映画の脚本はなかなかよく練られている事が判る。

まあ、タイムマインものは、どう捻ろうとも絶対に矛盾や辻褄が合わない事が出て来るものであり、私の推論でも矛盾はあるのだが、それ以上は追及しないように(笑)。

こうした、物語が終わってもいくつかの謎を残し、それを観客があれこれ推論して楽しめる映画としては、昨年の「インサイド・マン」があり、私もいろいろ書かせてもらったが(こちらを参照)、よく考えればあれもデンゼル・ワシントン主演作だった(笑)。デンゼル主演作は要チェックのようである。

ラストはいかにもハリウッド的なハッピーエンドであるが、エンタティンメントはこれでいいのである。

派手なカーアクションに、サスペンスに、タイムスリップSF、そして最後はラブロマンスと、いろんjな娯楽要素をてんこ盛りした本作は、ブラッカイマー製作作品としても久しぶりに楽しめた。映画が好きな方ほどいろんな楽しみ方が出来る、お奨めの娯楽映画の佳作である。        (採点=★★★★

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コメント

こんばんは。
なぜかこちらからのTBが反映されないようで・・・

kei様の推論をじっくり読ませていただき、なるほどと感心させられた次第です。
博士が「死体安置所で自分と対面するかもしれないな」などと言ったところで、この説はかなり正しいところなのでしょう。

しかし、二度観てわかったことなんですが、現在進行形で死んだクレアの経緯と過去に戻ってクレアを救出したことを照らし合わせると、ちょっとおかしいような気もしてきたのです。
最初のトリップでは彼女は指を切られ釣り堀で焼死させられたので、二度目のトリップ時にクレアの家での一連の行動がなぜそのまま同じように行われたのか不自然に思われてきたからです。
1度目のトリップで救出できなかった流れをぜひDVDの特典映像に付け加えてもらいたいところです(笑)

投稿: kossy | 2007年4月 8日 (日) 19:06

kossyさん こんばんは。
>最初のトリップでは彼女は指を切られ釣り堀で焼死させられたので、二度目のトリップ時にクレアの家での一連の行動がなぜそのまま同じように行われたのか不自然に思われてきたからです。

うーん、実は私もそこがどうしても解明できなかったのです(だから本文で“それ以上は追及しないように”て書いたんですが(笑))。
現在の世界で、クレアがATFに電話かけてますから、現在でも間違いなくこの時まで、クレアは生きているはずですね。

強引に推論しますと、ダグとクレアが彼女の家を出発した後、2人を生かしておいたらまずい…と気が付いた犯人のジム・カヴィーゼルがUターンしてきて鉢合わせ…。
銃撃戦の末、ダグは死亡、クレアは気絶させられ、河原でガソリンで焼かれ、ダグの死体を乗せた車はフェリーに詰まれ…
という事になるでしょうか。
でもそうすると、過去世界のカヴィーゼルはなんでその事に無頓着なんだ? と又新たな謎が出て来て堂々巡り(笑)キリがないですね。
脚本書いた人も、いくら考えても解決しないので諦めたのかも知れませんねぇ(笑)。

投稿: Kei(管理人) | 2007年4月 9日 (月) 00:49

なるほど、観客は強引に最初のトリップでのストーリーを組み立てればいいんですね・・・
そうそう、もうひとつ。
カヴィーゼルが留置所で尋問されてたとき。
ダグ(デンゼル)とは面識があったのかどうか。
意味深な台詞ばかりだったので、どう解釈していいのか未だに自己解決できていません。
もしダグを殺していたのだったら、生きているダグを見て相当驚くはず。自分を撃ってきた相手の顔を確認できなかったのだったら納得なのですが、フェリーでの争いまでは経験しなかったのかもしれません。と考えると、釣り堀で殺してしまったのか・・・そうなるとクレアの家まで辿り着けない。
やっぱり、これも強引にストーリーを作ってカヴィーゼルがUターンして鉢合わせて殺したことになるのかなぁ・・・

深く考えると眠れなくなるので、あきらめます・・・・

投稿: kossy | 2007年4月 9日 (月) 02:18

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