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2007年5月 6日 (日)

「バべル」その2

Baberu_1  「バベル」に関する批評で、「なぜ日本が舞台?」というのが結構ありました。

確かに、あのエピソードについては、何処の国が舞台であっても構わない内容ではあります。

それを解くカギとしては、私は主人公たちの役名に着目しました。

Baberu2 役所広司扮する父親の役名は、“ヤスジロー”です。
今の時代に、あんまり見かけない古くさい名前です。

で、ピンと来たのが、映画ファンなら誰もが知っている映画史に残る名監督。
―そう、“小津安二郎です。

彼の代表作で、世界的に知られた傑作が「東京物語」(53)ですが、この作品のテーマもまた、“親子の断絶”なのです。

東京で生計を営む子供たちに会う為に、故郷尾道から、はるばる東京にやって来た老いた両親(笠智衆と東山千栄子)。しかし子供たち(山村聰、杉村春子)は快く迎え入れず、あげくに住む部屋もないという事で、夫婦はバラバラに子供たちの家や、熱海の旅館へと転々と移り、舞い戻っては迷惑がられる。慌ただしい東京暮らしを通じて、両親は、親子の絆の脆さを思い知らされる事となる。

この作品以外にも、小津監督は「一人息子」(36)、「戸田家の兄妹」(41)など、親子の断絶というテーマに取り組んだ作品を多く手掛けています。

「東京物語」は世界中で絶賛され、ジム・ジャームッシュやヴィム・ヴェンダース、アキ・カウリスマキ、ホウ・シャオシェンなど、海外の多くの映画人からもリスペクトされている不朽の名作です。当然イニャリトゥ監督も観ているはずです。

ついでながら、小津のもう1本の傑作「晩春」(49)では、“妻を早くに亡くし、娘と二人で暮らす男が、娘の行く末を案じる”という、これまた本作と似たようなシチュエーションが登場します。

おそらくは、密かに小津安二郎監督を敬愛するイニャリトゥ監督が、“コミュニケーション不全”というテーマで作品を作ろうと思いたった時、東京を舞台に、親子の断絶を描いた「東京物語」をまず思い浮かべたに違いありません。

だから、本作は東京が舞台となり、主人公の男に“ヤスジロー”という役名を与えたのでしょう。

では、菊地凛子の役名、“チエコ”とは…。
―老夫婦の、妻役を演じた名優、“東山千栄子”さんからいただいた…に違いありません。

もう一つついでに、二階堂智演じる刑事の役名は、“間宮”です。
これも、小津映画ファンならピンと来る。そう、小津の、これも傑作「麦秋」(51)の主人公の、父(菅井一郎)の役名が、間宮周吉です(ちなみに、こちらの作品にも東山千栄子さんが奥さん役で出演してます)。

ここまで一致すれば、もう偶然とは言えませんね。

「バベル」は、小津安二郎リスペクト映画なのです。…誰か、イニャリトゥ監督に聞いてみてくれませんかねぇ。

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