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2007年9月 2日 (日)

「ダイ・ハード4.0」

Diehard40 (2007年・20世紀FOX/監督:レン・ワイズマン)

「ダイ・ハード」1作目(ジョン・マクティアナン監督)の登場は衝撃的だった。それまでの刑事ものと言えば、「ダーティ・ハリー」「フレンチ・コネクション」に代表される、コワもて、クールでタフで強靭な神経を持つ行動派のスーパー・ヒーローか、「コロンボ」のような頭脳で謎を解いて行く名探偵型、はたまた「砂の器」「張り込み」などの松本清張原作もののように、地道な捜査と足でコツコツ事件を解決して行く社会派ドラマ…のいずれかに分類されていた。

本作の主人公、ジョン・マクレーン(ブルース・ウイリス)は決してコワもてスーパー・ヒーローでもなく、頭脳で事件を解決する名探偵でもなく、エリート・キャリアとして出世してるわけでもなく、どちらかと言えば警察内部でも冷遇され、妻からも疎まれ(妻のホリー(ボニー・ベデリア)は自己紹介する時、旧姓で名乗る)、行きがかりで否応なく事件に巻き込まれてしまい、「なんでオレがこんな目に」と愚痴を連発する、なんとも冴えない男なのである。

そのショボくれた、どこにでも居そうに見えていた男が、人質となっている妻を救う為、必死で行動し、次第に智恵と行動力を発揮して行き、最後は遂にヒーローとなる、その姿に多くの観客は感動し、純粋アクション・エンタティンメントでありながらなんと!この1作目はお硬い(?)キネマ旬報ベストテンで堂々ベストワンに輝いたのである。まさに前代未聞の快挙であった。

この1作目が大ヒットした為、パート2、パート3と続編が作られたが、回を追うごとに質的レベルはダウンして行き、前作「ダイ・ハード3」は同じマクティアナン監督作品とは思えないつまらない出来であった(この原因の一つとしては、1作目、2作目を製作した名プロデューサー、ローレンス・ゴードンならびにジョエル<マトリックス>シルバーの降板が大きいと私は思っている)。

さて、そんな不安の中で新作「ダイ・ハード 4.0」を観る事になったのだが、
結論から言うと、思った以上に良く出来ていた。派手なアクションと頭脳プレイが程よくブレンドされ、アクション映画としては十分楽しめる出来になっていた。

監督のレン・ワイズマンは、1作目の大ファンだそうで、本シリーズを監督する事が念願だったという。そんなわけで、随所に1作目へのオマージュが盛り込まれ、1作目を知っている人にはニンマリしたくなるくだりもあちこちにあって余計楽しめる出来となっている(例えば、人質となったマクレーンの娘が、事件解決後に、自分の姓名を名乗るシーンは、ファンならニヤリとし、次に感動出来るはずである)。

ただ、CGをふんだんに使ったアクション・シ-ンは良く出来てはいるが、「いくらなんでもそれはやり過ぎだろう」という部分もあり、マクレーン刑事も1作目の頃よりずっとタフでマッチョなヒーローになっており、頭をカラッポにして楽しむにはうってつけだが、1作目の感動が忘れられないファンにはちょっと寂しい感じを受けたのも事実である。

まあ言ってみれば、007シリーズのうちで2作目「ロシアより愛をこめて」を最高傑作だと思っているファンにとっては、いくら後期の作品がアクション映画としては優れていても、ジェームズ・ボンド映画としては認められない・・・と感じるのと同様なのである。まあアクション主体のシリーズとしては悩むところであろう。

そんなわけで、「ダイ・ハード」シリーズとしては 1作目>本作>2作目>3作目という所に位置付けられる出来で、採点は(★★★★)、 但しシリーズを度外視してアクション映画として観るなら★★★★☆ を差し上げたい…とまあ難しい評価になりました(笑)。

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コメント

 ご無沙汰です。トラックバック、ありがさうございます。読ませていただいて、確かに私もシリーズとは別ものの「ダイハード」を楽しみました。頭もからっぽにして。だったら「ダイハード」でなくてもいいのだけれど、『1作目へ愛を込めて』いるんですね。十代、二十代の若い世代は「ダイハード」ってすでに古典なのでしょう。あのシリーズを知らない人も多いようです。しかし、ただ、びっくりして、お祭り騒ぎのように楽しんだ本作でしたが、もう一度、考えながら観たくなりました。「007」がショーン・コネリーだった頃と今のジェームス・ボンドと、私はまったくの別作品として楽しんでいます。この頃、ようやく「007」も楽しめる映画に復活してきたようで・・・。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2007年9月 2日 (日) 03:28

こんばんは。私もマクレーン大好きで、「1」はホント、一つ一つの伏線がみんな最後でいきてくる脚本が素晴らしく、奥さんがまた素敵で、もう最高でした。「2」も「1」がなければすばらしい映画でしたが、「3」が最悪で、失望。私も、いまさら「4.0」って言われてもなあ、どうせ「1」には勝てないだろうしなァと思っていて、公開2ヶ月後にやっと見ました。
http://pub.ne.jp/omiko/?daily_id=20070827
結果、思いっきり楽しんじゃいました。後半の戦闘機とのチェイスと高速道路(?)ぶっ壊しは余計でした。ヘリコプターを車でぶっ壊すところまでで止めておいてほしかったなというのが正直な感想です。
娘は、goodでした。ニヤリです。奥さん(まだ生きてたっけ?)が出てくれば最高なんですけど。。なんか出せない理由あるんですかねぇ。

投稿: kinky omiko | 2007年9月 6日 (木) 19:17

「007」については、やっぱりショーン・コネリーで、一時質が下がりいやになっちゃいましたが、
私はアクションよりも粋なところ、ユーモア、ラブシーンが好きなので、ロジャー・ムーアも不死身の「ジョーズ」が出てくるシリーズでまた好きになり、「007私を愛したスパイ」が、カーリー・サイモンが歌う主題歌「Nobody Does It Better」と共に最高にお気に入りです。特にオープニングのシーンは何度見ても、粋な落ちがついていてたまらなくいいです。

投稿: omiko | 2007年9月 6日 (木) 19:29

>冨田様。
「007」最新作「カジノ・ロワイヤル」でやっと原点回帰の傾向が見えて来ましたね。でもショーン・コネリーの“粋”というかダンディズムにはまだまだ追いついていない気がします。

>omiko様。
奥さん(1、2作目でボニー・ベデリアが演じてました)は今回は離婚してるという設定でしたね。娘の身を案じて駆けつけて、ヨリを戻す…ていう展開ならなお感動できたかも。
多分引退したか?何かで出られなかったのかも知れませんね。最近はあまり映画に出てないようですし。

「007/私を愛したスパイ」はロジャー・ムーア主演作では一番面白い出来だと私も思います。
でも(しつこいようですが(笑))、ボンド映画の真髄は原作にある、自分の知恵と体力だけで行動し危機を乗り越えて行く、エスピオナージもの…という部分にあると思いますし、コネリーはまさに原作のイメージにピッタリでしたから、このムーア作品をボンド映画とは認めたくないですね。痛快娯楽映画としては申し分ないですが。

投稿: Kei(管理人) | 2007年9月 9日 (日) 17:40

>奥さん、娘の身を案じて駆けつけて、ヨリを戻す…ていう展開ならなお感動できたかも。

そのとおり!実は、まさにそういうシナリオ期待してました。ハイ。

投稿: omiko | 2007年9月11日 (火) 20:17

ダイハードシリーズ大好きです。でもやはりダイハード1がイチバン好きです。シリーズ中評価の低い3も大好きだったりします。変わり種のエイリアン3が嫌いではないのと似てます。趣向を変えようと試行錯誤してるのがシリーズの3作目なのかなと。荒唐無稽に開き直った4.0も楽しめましたが、もはやダイハードというよりダイネバーな感じでした

投稿: サイモンセッズ | 2010年10月31日 (日) 23:17

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