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2007年10月14日 (日)

「デス・プルーフ in グラインドハウス」

Deathproof_2(2007年・ブロードメディア/監督:クェンティン・タランティーノ)

Q・タランティーノ企画による、その昔隆盛を誇ったB級ピクチャー2本立の復活を目指した作品の1本(もう1本は盟友ロバート・ロドリゲス監督の「プラネット・テラー」)。

タランティーノは知らなかったようだが、我が国にもB級映画2本立はつい10数年前まで存在していたし、昭和30年代の映画全盛期はそれこそ、全邦画番組のおよそ95%までがB級映画2本立てだった。残りの5%が名匠・巨匠の監督するベストテン級秀作というわけだ。

東映チャンバラ映画、東宝喜劇シリーズ(社長・駅前・クレージー)、松竹メロドラマ、日活無国籍(和製西部劇)アクション、大映の座頭市に眠狂四郎、果ては新東宝のゲテモノ怪談・エログロもの―に至るまで、B級映画花ざかりだった。見終わったら忘れてしまうようなガラクタも多かったが、B級であるにも拘らず、記憶に残り続けている佳作も多い。

ほどんどが低予算、製作日数も今では考えられないほどの短期間(1週間という記録もある)という悪条件の下、それでも監督や脚本家は、とにかく客を喜ばせようと智恵を絞り、努力をしていた。

また当時は封切館の上映が終わると2番館、3番館、さらに地方の小屋へとフィルムが巡回して行き、後ろへ行くほどフィルムの劣化は進み、画面にスジが走り(俗に“雨振り”という)、コマ飛び、ノイズ、焼き付き(フィルムが停止し、熱で溶ける)、さらに色彩の脱色…などの傷もの状態となる。

私は当時田舎にいたので、回って来る映画はことごとくこうした傷ものばかり、上映中にフィルムが切れて、数分間上映が中断…という事態も何度も経験した。

今ではそうした2番館、3番館そのものがほとんど無くなり、全国の封切館やシネコンなど数百館で一斉に真っサラの状態で上映するようになったので、画面に雨が走るとかコマ飛び…等の欠陥フィルムに遭遇する事は、(よほどマメに新世界とかの場末に行かない限り)ほとんど無くなったと言える。おまけに、B級映画そのものがほとんど作られなくなってしまった

そんな時代にあって、昔を知る映画ファンにとっては、あの猥雑で、いかがわしくて、バカバカしくも稚気溢れるB級映画を、雨降りの劣悪な状態で観たあの頃が、今となっては懐かしく思い出される。

タランティーノは、そうした場末の映画館(=グラインドハウス)で観たB級映画の記憶を現代に蘇えらせようとしたのだろう。さすが、究極の映画オタク(笑)・タランティーノの考えそうなアイデアである。

わざとフィルムに傷を付け、雨を降らせ、コマ落ちさせ、カラーまで昔のようにケバケバしくして、見事なまでにグラインドハウスで上映された状態のB級映画―を再現している。そのこだわりにはむしろ感動してしまう。

 

―で、肝心の作品はと言うと、デス・プルーフされた改造カーで女たちをいたぶる変態カーマニア(カート・ラッセル)の行動をスリリングなカーアクションを中心に描く…という物語は悪くないのだが、タランティーノ監督作品のトレードマークとでも言うべき、女同士のダラダラと続くお喋りが、こうした単純B級アクション・ムービーにとっては煩わしくて邪魔である。

ラスト数分間のカー・アクションはさすがに見応えがあり、楽しいが、全体としてはタランティーノ流演出がB級映画の楽しさを減殺したと言える。まあタラ・ファンには楽しいだろうが、“B級映画復活”という目的からすれば、本作にはあえてタランティーノ色を省いて欲しかった。

その点はちょっと残念だが、登場する小ネタが楽しい。ラッセルが映画スタントマンという事で、女にカー・アクション映画の題名を並べ立てるが、それが「バニシング・ポイント」「ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー」「爆走トラック’76」「バニシング IN 60"」ときた。ムフフ、どれも'70年代のB級カー・アクション映画ばかり。
中でも「バニシング・ポイント」はリチャード・C・サラフィアン監督の傑作で、主人公がコロラドからカリフォルニアまで運転する車が'70年型ダッジ・チャレンジャーなのだが、本作の後半、女性達がブッ飛ばす車が同じダッジ・チャレンジャー!しかも色まで同じ白なのだから楽しい。他にも、「バニシング IN 60"」で大活躍したフォード・ムスタングも登場する。カート・ラッセルが乗る車(これも上記どれかの作品に出て来たと思う)のエンブレムが、ペキンパー監督「コンボイ」に使われたものであるといった具合に、'70年代カー・アクション映画へのオマージュがぎっしり詰まっていて楽しませてくれる。

携帯の着メロが「キル・ビル」でダリル・ハンナが吹いていた口笛のメロディ(曲名は「密室の恐怖実験」)だったりと、あちこちで遊んでいる。

まあそんなわけで、やはり昔のB級映画を多く観た人には楽しい作品に仕上がっている。これも懐かしい“THE END”のクレジットも含めて、映画ファンにはお奨めの快作である。     (採点=★★★★☆

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コメント

トラックバック、感謝です。読ませていただいて、懐かしい映画のタイトルがたくさん出てきて、地方都市で雨の降ったB級映画をことごとく観ていた中学生時代を思い出しました。あの頃の作品、ほとんど観ていると思います。映写機のトラブル、フィルムが停止し焼ける画・・・もう30年も前のことなんですね。B級は作られているはずなのに、なかなか輸入されない現在、とても残念です。ラストのカーチェイス・・・いきなりA級になるのは、タランティーノのサービスなのでしょうか・・・。

投稿: 冨田弘嗣 | 2007年10月20日 (土) 02:33

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もしかしてオラオラですかーッ!? 公式サイト ロバート・ロドリゲスとクエンティン・タランティーノによる、"グラインドハウス興行"のパロディを意図した二本立て映画スタイルの一本の作品、だったはずが、日本では何故か一本ずつ別々の映画として公開されるはこびとなっ....... [続きを読む]

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