「プラネット・テラー in グラインドハウス」
(2007年・ブロードメディア/監督:ロバート・ロドリゲス)
タランティーノ企画の、もう1本のグラインドハウスもの。
こちらはB級映画の定番、ゾンビ・ホラーもののバリエーションであるが、前半が退屈だったタランティーノの「デス・プルーフ」に比べて、全編ほぼノン・ストップのアクションのつるべ打ちで、おバカぶりもより徹底していて、純粋娯楽映画としてはタラ作品よりこちらの方が楽しめる出来となっている。
本作でも、「デス・プルーフ」と同様、フィルムの傷(雨降り)、コマ落ち、ガタつき、カラー褪色などの“グラインドハウスで上映された状態のB級映画の再現”を試みているが、フィルムの雨降り状態は「デス・プルーフ」よりも更に酷い状態だし、セックス・シーンの途中でフィルムが止まり、熱でフィルムが溶ける…というアクシデントまで再現している凝り様である(その後、「1巻紛失」という字幕まで出たのには笑った)。
正確には、ゾンビものではなく、科学者が開発した生物化学兵器がバラまかれ、そのガスを吸った人間たちの体が溶け出し、次々人間を襲う…という展開。そこに軍隊(指揮官がなんとブルース・ウイリス)まで介入して…という筋立てはどうでもよくて、ただひたすら、逃げる主人公たちVS、襲って来る軍隊や溶解人間たちとの派手なドンパチ大アクションが繰り広げられる。
以下、ややネタバレに付き隠します。映画を観た方のみドラッグ反転してください。
えげつなさもハンパじゃなくて、何故か男性の○玉をちょん切っては収集してたり、それが大量に地面にぶち撒けられたり、レイプ魔の兵士(クェンティン・タランティーノ!)のアソコが溶け出したり(笑)と、もうやりたい放題。
ちなみに、転がってきた○玉を靴の先でブチュッと潰すシーンは、「キル・ビル2」でブライドがエル・ドライバー(ダリル・ハンナ)の目玉をくりぬき、足で潰すシーンのパロディと見たがどうだろうか。
↑ネタバレここまで。
ヒロイン、(ローズ・マッゴーワン)の片足が溶解人間たちに食いちぎられた為、そこに機関銃を取り付け、派手に乱射するシーンがカッコいいし笑える。“どうやって引き金を引いてるんだ”なんて突っ込みはヤボというもの(笑)。とにかく理屈抜きで笑って楽しむのが正しい鑑賞法である。
アメリカ版ポスターでは、わざわざ周囲をボロボロになってるかのように印刷するなど、細かい所まで凝っている。よく見れば機関銃を取り付けた足が左右逆なのだが、これも恐らく、ワザと裏焼きした印刷ミスであるかのように装っているのである(笑)。まったく、よくやるよ。
おそらく、いろんなB級ホラー映画からの引用、オマージュも沢山あるのだろうが、ホラー映画は残念ながらあまり観ていないので何とも言えない。
それでも、ジョージ・ロメロの元祖ゾンビもの「ナイト・オブ・ザ・リヴィング・デッド」とか、人間がドロドロ溶ける、「溶解人間」あたりは間違いなく頂いていると思う。ホラー映画ファンならもっと楽しめるだろう。しかしそんなのを観ていなくても十分面白いし楽しめる出来である。
アメリカや東京・大阪の一部の館では「デス・プルーフ」と2本立で(1本90分に短縮)公開したそうだが、グラインドハウスものとしてはそれが正しい公開方法だと思う。だいたいB級映画は昔はみんな90~95分だった。最近の映画はどれも長過ぎる。この2本、全国すべて2本立で公開すべきである(その上、ローズ・マッゴーワンをはじめ、何人か両方の作品に出ている俳優がいるので、これも2本同時に観たら、なおの事ニヤリとさせられるだろう)。
とにかく、こういうバカバカしいB級映画はもっと作られるべきである。そういう作品を何本も演出する事によって、スピーディで観客を退屈させない映画作りをマスターし、やがては一級のエンタティンメント大作を作れる人材が育つ事にも繋がるからである。
我が国でも、誰かグラインドハウス2本立番組を作ってくれないかな。監督は是非鈴木則文と三池崇史の組合せで(笑)。いや、マジメに本気でそう思う。この2人が本気でおバカ映画を作ったらスゴいことになると思いますよ(笑)。
(採点=★★★★☆)
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