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2007年12月20日 (木)

「エクスクロス~魔境伝説」

Excros (2007年・東映/監督:深作 健太)

宝島社選定『第1回・このミステリーがすごい!大賞』“隠し玉賞”に選ばれた、上甲宣之のホラー小説「そのケータイはXX(エクスクロス)で」を、「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」の深作健太の監督により映画化。

優秀賞でなく、「隠し玉賞」というのが微妙だが、書評を読むと、「文体は、はっきり言ってチープ」、「相当無茶な話だし、文章も下手である」とかなり辛辣。ただ、「しかしながら、そのチープさが作品の内容と実に見事に一体化している」、「読み手を物語世界に引きずり込む妙なパワーはある。ハードカバーで出すような小説ではないが、B級のアナーキーな面白さが横溢している」という誉め言葉(か?)もあり、要するに、小説の完成度という面からはかなりレベルが落ちるB級作品であるが、妙なパワーと勢いだけはあるので、そのつもりで読めば楽しめる…という事になる。

こちら(http://www.asahi-net.or.jp/~jb7y-mrst/YUT/GOS/GOS03l.html)を読めば、もうケチョンケチョンに叩かれている(笑)。突っ込みどころ満載のようである。

ただ一方では、同賞のインターネット読者投票では、第2位に選ばれたそうだから、案外ゲーム世代の若い人から見ればこれはこれで面白く読める作品なのかも知れない。

 
・・・さて、そういう予備知識を持った上で、本映画化作品を鑑賞すると、これが意外に楽しめるのである。

ストーリー展開は、小説とほぼ同じ。4章の章立てになっていて、2章では時系をバックして、同時間帯を別の人物の視点で描く…という展開も原作と同じ。上のサイトで突っ込まれている、“ケーブルカーで昇ったはずの村に、道路があって車で行ける”といういいかげんな設定をそのまま採用している事からも分かるように、脚本(大石哲也)、監督とも、ハナからこの映画をマトモに作る気は無く、原作通りの、突っ込みどころ満載のおバカ映画…に仕上げている。確信犯なのである。

従って、本作を、突っ込みどころを欠点としてあげつらう…というのは間違った捕え方であって、ましてやコワ~いホラー映画でもない。

主人公らをもてなす宿のバアさんが、手がブルブル震えてお茶をそこらにこぼしまくってる…というほとんど志村けん並みのギャグシーンからして、怖いどころか笑いっぱなしとなる。あとは突っ込みどころを見つけては笑い、ほとんどゾンビそのものの村人たちの襲来にまた笑い、そして見せ場となる、小沢真珠扮するブッ飛びハサミ娘対、鈴木亜美扮するブチ切れ娘のチェーンソーとの対決に思いっきり笑えばいいのである。…そもそもが、黒焦げになっても平気―というのは、「トムとジェリー」とか、わが「うる星やつら」などのギャグ・アニメの定番…という事を知っていれば、大笑い出来るはずである。

ホラー映画には、本当にゾッとする、正真正銘怖い作品もあれば、怖さを通り越して逆に笑える…というタイプの作品も結構多い。

後者の例では、サム・ライミのデビュー作「死霊のはらわた」や、ピーター・ジャクソンの出世作「ブレイン・デッド」などは結構笑えた。ちなみにこの二人、今や「スパイダー・マン」と「ロード・オブ・ザ・リング」で飛ぶ鳥落とす勢いである。ロバート・ロドリゲスの「プラネット・テラー in グラインドハウス」もおバカで笑えるホラーである。あ、ダン・オバノン監督の「バタリアン」てのもあったなぁ。

本作は、そうした“笑えるオバカ・ホラー映画”の系列に間違いなく入る作品なのである。

こうしたジャンルは、日本映画ではあまり作られて来なかった。だいたいが不真面目なものを嫌う国民性があるのかも知れない。その結果、暗く陰々滅々とした辛気臭いホラーばかりが作られて来た。

しかし、こういうバカバカしいエンタティンメントがあってもいいじゃないか。チープなオバケ屋敷でもいいじゃないか。とにかく、テンポよく、ゆっくり考えているヒマもないくらい、ノンストップでラストまで突っ切るB級テイストの娯楽アクション・エンタティンメントに、本作は仕上がっている。それだけでも立派な事である。

いろいろなホラー映画のオマージュも散りばめられている。美女をいけにえにする因習…というのもホラーからコメディまでよく見られるパターンである。「キング・コング」もその代表。コメディではビートルズ主演の「HELP!」もそう。リーダーが変なマスクをし、奇妙な呪文を唱える…というのはこの2本にもそっくりそのまま出て来る、お決まりパターンである。
巨大なハサミ…というのはバンボロが暴れる「バーニング」だし(しかしデカ過ぎる(笑))、チェーンソーは「悪魔のいけにえ」「死霊のはらわた」、炎で丸焼けになってもシブとく立ち上がって来るのは「ターミネーター」か。ラストのオチも、ホラー映画の定番である。

深作健太監督、ようやく自分のスタイルを見つけたようである。奇しくも、親父さん、深作欣二は、「キル・ビル」の冒頭でオマージュを捧げられたように、Q・タランティーノから敬愛された作家である。是非ともタランティーノ・ファミリーに入り、ロバート・ロドリゲスと競い合って、おバカなアクション映画道に邁進して欲しい。頑張れ、健太(半分マジ(笑))。      (採点=★★★☆

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(追記・お楽しみはココからだ) もう一つ、引用元の映画を発見した。J・ルーカス製作、S・スピルバーグ監督の「インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説」である。
人里離れた魔境が舞台で、妖しげな儀式は出てくるし、ヒロイン(ケート・キャプショー)はキャーキャー悲鳴を上げて逃げ回り、あげくに捕まっていけにえにされそうになる。何よりも、本作の冒頭の宿で出される食事に注目。ヘビやカエルや虫とかのゲテモノばかりだったが、「魔宮の伝説」の、晩餐会で出される食事のメニューも、やはりヘビとか虫とかのゲテモノのオンパレードだったはず。
本作の宣伝文句はジェットコースター・スリラーという事だが、「魔宮の伝説」もクライマックスはまさしくジェットコースターだった。
サブタイトルそのものが、あちらは宮の伝説、こっちは伝説とほとんど同じ。明らかに狙っているとしか考えられない。

考えれば、親父さん(深作欣二)も、かつては「宇宙からのメッセージ」という、ルーカス監督の「スター・ウォーズ」まるごとパクリの珍作を撮ってるし(SFだというのに千葉チャンが甲冑兜姿で白馬にまたがり登場する(笑))、スピルバーグだって「1941」という、これまたパロディ満載のアホ映画を撮っている。
何が言いたいかというと、後の巨匠だって、おバカなパロディ、オマージュを盛り込んだ珍作・怪作を、嬉々として撮った事があり、むしろそういう所に作家の映画愛を感じてしまうからである。深作健太監督もまた、そうした先人の辿った道を歩んでいると考えれば、将来が大いに期待できるではないか……というのは考え過ぎ?(笑)

原作本です

サントラ盤 

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コメント

TB、ありがとうございます。実に様々な映画作品、テレビのオマージュが、この映画に込められているんですね。私はまったくわかりませんでした。ただ、単純に観てしまいました。私の評価はボロボロでした。たくさんの過去の作品をよく観て、覚えておかなければ、映画というものは本当には楽しめませんね。読ませていただきました。ありがとうございます。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2007年12月22日 (土) 01:00

>冨田さん コメントどうもです。
別にですね、古い映画をたくさん観ていないと楽しめない訳じゃないと思います。
監督自身が、狙ってバカバカしい映画に仕立ててる、その狙いを読み取って一緒に楽しめるかどうかという事だと思います。オマージュ部分は、映画が終わって、その後ゆっくりふり返ればいいわけですから。
古い映画を知らなくても十分楽しいし、知ってればもっと楽しめる…という事です。

深作健太監督は舞台挨拶で次のように言ってます。
「“映画はお祭り”という親父の言葉がありますが、お祭り気分でスタッフ、キャスト一丸となって楽しんで作りました。何よりお客さんにも一緒にお祭りのような気分で楽しんでいただきたいと思います。上映中はお静かにせずに、大騒ぎしながら、つっこみながら観てください」…
まさに私が言いたい事、そのまま言ってくれてます。こういう余裕が出てきた点でも、健太監督、成長したな…と思います。

この、監督の意向を汲んで見直したら、きっと笑って楽しめると思いますよ。

投稿: Kei(管理人) | 2007年12月22日 (土) 01:45

>Keiさんへ
 本当に、私はおかしな事を書いていますね。過去の映画をたくさん観なきゃなんてことはないですね。私は、本作を観ているとき、映画館なのに、ホラービデオを見ている気がしてしまいました。しかし、この評論を読んだとき、なんだかびっくりして、あっ!と自分の気づかなかった点が述べられていて、そういう風に反応してしまった次第です。コメントのお返し、ありがとうございました。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2007年12月23日 (日) 19:41

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