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2008年2月19日 (火)

「L change the WorLd」

Eru2 (2008年・ワーナー/監督:中田 秀夫)

2006年に作られた「デスノート・前篇」「デスノート The Last Name」は面白かった。

詳しくは「The Last Name」の作品評に書いたが、この作品の魅力は、天才的な頭脳を持つキラこと夜神月(ライト)の、警察も絶対に見破れない完全犯罪のプロセスの完璧さと、それに対抗し、月を追い詰めるこれも天才的名探偵L(以下エル)との息詰まる対決にある。
特に、前篇に登場する、監視カメラで見張られている中で行われる、巧妙な殺人トリックには唸った。これは実に上質なアリバイ・トリック・ミステリーなのである。

したがって同作品は、若者だけでなく、ミステリー・ファンも十分楽しめる完全犯罪ミステリーとしても出色の出来であり、大ヒットした原因はその点にもある。

後編の封切り直前に、前篇をテレビ放映するという前代未聞のプロモーションも大成功であった。
前篇があまりにも面白かった為、劇場で前篇を観ていなかった人にも、テレビで前篇を観て、後編を劇場で観たいという気にさせ(実は私もその一人(笑))、結果として後編の興行収入が前篇の倍という、通常の前後編公開では考えられない現象を招いた(前篇を観ないと、後編だけ観ても訳が分からなくなるので、後編を劇場鑑賞した人のうちの半分は、前篇をテレビで初見参した人たちだろう)。

そして、月を追い詰める天才探偵、エルのキャラクターも秀逸。見た目も服装も冴えない(まるで引き篭もりオタク、実は頭脳明晰な名探偵…。顔も服装も、ステータスも、まるで夜神月とは対照的にマイナス要素ばかりのアンチ・ヒーローが、頭脳戦で見事な逆転勝利を収める…その展開に観客は喝采を贈ったのである(私は、刑事コロンボ・死神バージョン」と命名した)。

 
前置きが長くなったが、そんなエルのキャラクターをこの1作だけで終わらせるのはもったいない。前作の作品評で、私は「今後はエルを主人公にしたスピンオフ・ドラマを是非見てみたい」とエールを贈ったが、それが本作で実現したわけで、喜ばしい事だと思った。――本作を観るまでは…。

はっきり言って、大失敗作である。製作者たちは、上記に挙げたような、「デスノート」及びエルの魅力が全然分かっていない。いったいどこを見ていたのだ!
(以下多少ネタバレがあるが、隠すほどのネタでもないのでそのまま書く)

まず、ダメな点、悪役側がてんで魅力なし。
前作の素晴らしい点は、悪役たる夜神月のキャラクターや行動ポリシーが、実に魅力的だった事である。天才的頭脳で、見事な計画により、許せない悪をこの世から抹殺する、その行動に世間の多くはむしろ共感さえ抱いたのである。―そんな具合に、悪が魅力的であるほど、ライバルのエルも引き立つのである(「刑事コロンボ」が面白い点もそこ)。
だから、エルを引き立たせる為には、悪役は天才的に頭が良く、武力でなく頭脳で完全犯罪を企んでもらわなくてはならないのである。

なのに、こいつらときたら頭は悪いし、魅力はないし、ヘマばかりやってる。

研究所へ強引に武力侵入するだけでバカである。監視カメラで録画されてるかも知れないし、ガラス越しに脅して、二階堂博士(鶴見辰吾)が簡単に抗ウイルス薬を渡すはずがない。頭を使って手に入れなければならないのに、何やってんだか。博士が死ぬシーンも延々とクドい。

エルが、市販されてる本から博士の共同研究者・松戸(平泉成)を見つけ、そこに向かうのだが、悪役の九條(工藤夕貴)は研究所の同僚なのだから、その存在に気付かないはずがないだろう。エルより先回りして松戸を押さえようと、何で気が付かないのか。まったくバカだ。

そういうアホな悪役にペースが狂ったのか、エルの行動も理解出来ない。ウイルスの潜在保菌者である真希(福田麻由子)を電車や自転車で連れ歩くのは大問題。うっかり真希がケガしたら、そこら中にウイルスが蔓延してしまうんじゃないのか。案の定、松戸から叱られてる。子供でも分かる事だ。

一番問題なのが、なんで警察が一切登場しない?

前作では、エルに全面的に世話になってるし、研究所襲撃事件があって、ウイルス絡みのBOYがエルの所にいるのだから、警察はまずエルに事件の相談をするのではないか

エルも、自分の住居に的場たちが無断侵入して来た時点で(あきらかに家宅侵入罪だ)、警察に通報すりゃいいだろうに。松戸の所に真希たちを連れて行くにしろ、警察に連絡してパトカーで連れて行ってもらえば簡単だし、危険な目に会わずに済むんじゃないか。当然、ラストでも警察にまず連絡して、機動隊を空港に差し向けるべき。なんで一人で行動してしまうのか。

エルが警察を頼らないのは、どう考えても不自然。そうであるなら、警察に頼れない理由を作っておくべきではないか。

総じて、本作のエルは、前作に見られたような、天才的な頭の良さ…がほとんど見られない。これではわざわざエルを主役にした意味がないではないか。
ラストに至ってはキャラクターに反し、アクションまがいまでやってる。ここも頭が悪い。ヘタしたら銃撃されるではないか。デスノートのおかげで死なないとしても、大怪我したら意味ないではないか。

FBIだとかの南原ナンタラの存在もアホだ。「後はまかせろ」とか言ってて、結局何の役にも立っていないし、そもそも、エルも簡単に信用し過ぎ。出て来てすぐ、こいつも的場らの仲間か…と疑うのが常識。あんなマヌケなFBIはいない。

感染した的場たちが、抗ウイルス薬注射したら、もう連行時に顔の出血が引いてピンピンしてる…という誰もが突っ込むアホらしいラストに至るまで、とにかく出て来るやつらも、脚本家も監督も、みんな頭が悪い

いろんなハリウッド映画のパクリといい、満載の突っ込みどころといい、昨年の駄作「ミッドナイト イーグル」といい勝負である。こんなデタラメな、エルのスピンオフ映画を見せられるとは思わなかった。カネ返せ…と言いたい。

我々が期待しているのは、天才対天才の頭脳合戦である。悪役側の見事な完全犯罪計画に唸り、それを見事な智恵と奇策でうち破るエルの作戦にまた唸る。これでなくては。頭を使わないハリウッドまがいのアクションは不要である。脚本家(これが「ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ」の小林弘利)は、コロンボや、古畑任三郎を何回も見直して研究すべきではなかったか。

今年の、ワースト候補の駄作であった。それでも前作のおかげでヒットしてるのだそうな。松ケンのエルキャラを見たい方以外にはお奨めしません。   (採点=

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