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2008年2月15日 (金)

市川崑監督 死去

Photo_2  映画監督の市川崑氏が、13日、肺炎の為、92歳で亡くなられました。

実は、私の父も、昨年、同じ92歳で亡くなりました。しかも死因も肺炎で市川氏と同じ。

それだけに、訃報を聞いた時、他人とは思えない気がし、感慨に耽りました。

 

市川崑監督作品は、多数観ています。監督作品は約70本余り。よく比較される黒澤明監督は30本ですから、巨匠の割には、頼まれれば気軽に撮っていた感があります。有名な、金田一耕助シリーズは、角川春樹に依頼され、大ヒットした為に次々と手掛けました。

テレビ作品も多数あります。有名なのは「木枯し紋次郎」ですが、刑事ものもあったはずです。

CM演出も多数手掛けています。ライオン歯磨、サントリーなどが主ですが、私が大好きなのが、雨が降る京都の街中を、一匹の子犬が彷徨う、トリスウイスキーのCMです。
 ↓ これがそうです。
http://jp.youtube.com/watch?v=XDEzFPzUfUM&feature=related

youtubeは画質が良くないのでいまいちですが、フォトジェニックで、詩情に溢れていて、CMでありながら、芸術の域に達しているのではないかと思います。終り間際の、瓦屋根の路地を駆け抜ける子犬を俯瞰で捕えたショットは、そのまま引伸ばして額に入れて飾っておきたいほどです。

カメラは、名手宮川一夫さん。絵作りも宮川さんの映像感覚による所が大きいと思います。

映画に戻って、市川崑監督作品で是非お奨めしておきたいのが、次の作品群です。

「炎上」(58)
「おとうと」(60)
「黒い十人の女」(61)
「私は二歳」(62)
「東京オリンピック」(65)

「おとうと」「私は二歳」はいずれもキネマ旬報ベストワン。他にも、この時期には「鍵」「野火」「ぼんち」「破戒」など、秀作が目白押し。

つまり、市川崑のピークは、この昭和30年代だと言えるでしょう。以降もコンスタントに作品は作っていますが、このピーク時の作品は傑出しています。
観るたびにその斬新な映像感覚、歯切れいいカッティング、情感溢れる演出に唸りたくなります。

Itikawakon2 カメラマンは、「炎上」「おとうと」「鍵」「ぼんち」「破戒」が宮川一夫。「東京オリンピック」も宮川さんが参加しています。
…つまりは、前述のCMも含め、その映像の冴えは、宮川さんによる所が多大であると言えましょう。

無論、宮川さんが参加していない後期の作品でもフォトジェニックな映像は見られますが、元々持っていた映像感覚が、宮川さんによって更に研ぎ澄まされ、完成されたと見るべきでしょう。素敵なコラボレーションだったと思います。
(テレビ作品「木枯し紋次郎」の、市川監督が演出したタイトルバックもフォトジェニックな美しさに溢れています)

脚本に関しても、善き伴侶でもあった和田夏十さんの存在を抜きにしては語れません。また「東京オリンピック」や、サントリーCMにも参加している、詩人の谷川俊太郎さんの協力も忘れてはならないでしょう。

そういう意味では、素晴らしき人材に恵まれた、幸福な映画人生だったのではないかと思います。

 
遺作は、リメイク版「犬神家の一族」が長編としては最後ですが、オムニバスの「ユメ十夜」の1篇(第2話)が実質上の遺作でしょう。サイレント風の、まさに市川崑タッチ健在の佳作でした。

本当に、たくさんの素晴らしい作品を有難うございました。謹んでご冥福を祈りたいと思います。

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コメント

 このサントリーのCMが市川昆監督の作品とは初めて知りました。
 企画がサンアド、コピーが仲畑貴志ということは知っていましたが。
 

投稿: 雫石鉄也 | 2008年2月16日 (土) 17:00

雫石さん、こんばんは。TB、コメントありがとうございます。

あのサントリーCM 子犬篇は市川崑監督の演出です。当時はファンの間でかなり話題となりました。

て言うより、瓦屋根の俯瞰撮影…を見ただけで、「あ、市川ショット!」て思いましたもん(笑)。
市川監督・宮川一夫撮影の「ぼんち」を見ていただければ分かるかと思います。

詳しく知りたければ、グーグルで「市川崑 CM 子犬」で検索かければいくつかページが出てきますので、参照してください。

投稿: Kei(管理人) | 2008年2月16日 (土) 22:03

大学時代、宮川一夫キャメラマンに、このCM
の話しは何度も聞かされました。CMを撮るということは、映画とはまた別の楽しさがある。あのCMが賞をとったことを誇らしげに話していました。宮川一夫の俯瞰は、宮川キャメラマンの映画ならば、一度は出てくるのですが、あのCMのインパクトは、今でも新鮮です。市川監督の次回作、第80作は必ずあると信じていたのですが、ひとつの時代が終わったなと感慨深いものがあります。四騎の会は、これで終わりました。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2008年2月16日 (土) 22:37

CMの最後の方の俯瞰ショット
市川崑印くっきりってかんじですね

撮影は宮川一夫ですか。
あのころ、カメラに宮川、脚本に橋本忍、監督は市川崑に黒澤に木下に小林正樹、音楽は芥川也寸志に伊福部昭に佐藤勝に・・・と才能あふれるスタッフがわんさかいて、今から思うとユメのようですなあ

投稿: しん | 2008年2月17日 (日) 00:56

はじめまして。いやー、なつかしかったです。
あのCM。映像が悪く残念でしたが、俯瞰のカット、いいですなー。私のお勧めの市川監督映画もブログご覧ください。

投稿: 筆知 刻久 | 2008年2月17日 (日) 18:49

>冨田さん
宮川さんの俯瞰撮影はいつも印象的ですね。
奇しくも、先般亡くなった、田中徳三監督作品で、宮川さんがキャメラを担当した、「続・悪名」のラスト、モートルの貞(田宮二郎)が刺殺されるシーンが見事な俯瞰撮影で、素晴らしい効果をあげていました(本当の所は、ロケに行く時間がなかった為、撮影所内で撮った苦肉の策ですが(苦笑))。

>しんさん
本当に夢のような豪華メンバーでしたねぇ。
市川崑監督の凄い所は、あの子犬のCMにしろ、「黒い十人の女」にしろ、今見ても、ものすごく新しくて新鮮なのですね。
天才は、時代を超える。

>筆知さん  はじめまして。
追悼番組で、あのCM、放映してくれませんかねぇ。大原麗子の「すこ~し愛して、なが~く愛して」はやってましたが…。
ブログの方にもまたお邪魔いたします。

投稿: Kei(管理人) | 2008年2月18日 (月) 21:43

大変素晴らしい記載ありがとうございます。。大変興味深く、懐かしく、読ませていただきました。心より御礼申し上げます!
未だに、あのCMを超える入魂の作品はございませんね。日本人として、誇りに思います!
本日、なぜか懐かしくて・・アメブロで記事を更新いたしましたので、こちらにも寄らせて頂きました。突然失礼いたしました。

投稿: chizu | 2012年7月26日 (木) 20:59

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