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2008年7月31日 (木)

「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」

Hotfuzz (2007年・英・仏=ユニバーサル/監督:エドガー・ライト)

イギリス発の、スカッと笑えるポリス・アクション・コメディの佳作。

本国イギリスでは、3週連続No.1になりながらも、配役が地味目の為かDVDスルーとなりかけた所を、熱心なファンの2,000件を超えるWEB署名が集まった結果、劇場公開が決まったといういわく付の作品。

いろんな映画の引用が一杯盛り込まれているが、例えば「裸の銃を持つ男」とか「最終絶叫計画」などのおバカ・パロディ満載コメディとは似て非なる出来。
パロディと言うよりは、映画への熱いオマージュとリスペクトに満ちた、知的なブラックジョーク・コメディである。

これは、イギリス作品という所がミソで、イギリスのコメディは、「モンティ・パイソン」とか、その原型となったリチャード・レスター監督の「HELP!」「ナック」に代表されるように、どことなくシックで上品で、かつシニカルでブラックな笑いに満ちている。
コーエン兄弟の「レディ・キラーズ」の元ネタである、「マダムと泥棒」(55・アレクサンダー・マッケンドリック監督)という傑作コメディもイギリス製である。

こうしたイギリス・コメディの流れを、本作はちゃんと継承しているからこそ、本国では大ヒットしたのだろう。

だから、邦題から連想される、単純おバカ映画を期待したらはぐらかされる事となる。
(同じGAGA配給だからといって、「俺たちフィギュアスケーター」のヒットにあやかったような、このサブタイトルはヒドい。作品の質を見誤りかねない)

 
成績優秀ながら、堅物で融通の利かないエリート警察官ニコラス・エンジェル(サイモン・ペッグ)が、かえって署内で疎まれ、英国一平和な田舎町に左遷され、そこで不可解な事件に巻き込まれるが、持ち前のバイタリティで事件解決に乗り出す事となる。

相棒を組まされるのが、警察署長のグータラ息子、ダニー・バターマン(ニック・フロスト)で、こいつが警察アクション・ビデオの収集家で、映画のようなヒーローになるのを夢見ているというのがおかしい。

この二人が、互いに感化され、友情を深めて行き、ニコラスは堅物な性格が解きほぐされ、ダニーはダメ男から、一人前の警察官に成長して行く…という展開がきっちり描けている。

ストーリーそのものも、さすが英国はアガサ・クリスティやコナン・ドイル等の本格ミステリーを生んだ土地柄だけあって、謎の連続殺人事件に、容疑者のアリバイ、複数の犯人像…と、クリスティを思わせるミステリー趣向が巧妙に盛り込まれていて楽しい。

被害者の殺され方が、首の切断教会の尖塔の落下串刺し…とグロいが、これは某ホラー映画からの引用である事に映画ファンなら気付くはず。

万事この調子で、細かい所までいろんな映画からの引用があちこちに張り巡らされている。しかし、あくまでストーリー重視で、伏線もいたる所にさりげなく配置され、それらが後に生きてくる展開は、おそらく見直す度に、その巧妙さに唸る事になるだろう。監督のエドガー・ライトと主演のサイモン・ペッグが共同で書いた脚本がうまく練られていて見事。
従って、古い映画を知らなくても十分に楽しめるが、知っていればもっと楽しめる仕掛けになっている。

その引用された映画は、ダニーが愛蔵する「ハートブルー」をはじめとする無数のハリウッド製刑事アクション、ジョン・ウーのハードボイルド・アクション、さらにホラー、バイオレンス・サスペンス、マカロニ・ウエスタン、本格ミステリー…と実に多彩。最後には東宝怪獣映画までパロられているのは、ちょっとやり過ぎの気もするが(笑)。ともかく、そうしたオマージュをいくつ見つけられるかを友人と競うのも一興だろう。

なお、ストーリー・ラインのベースになっているのは、1973年製作のイギリス製カルト・ホラー「ウィッカーマン」(ロビン・ハーディ監督)である。

行方不明の少女を探すために、スコットランド本土から小さな島へやって来た警部が、謎の儀式を行う集団に翻弄されて行く…というストーリーで、その主役の警部を演じたエドワード・ウッドワードが、本作でも、近隣監視同盟連絡係・トム・ウィーバー役で出演している事からも、これが同作のオマージュであるのは明白。

怪しげな集団のボスを怪演しているのが、「007/黄金銃を持つ男」でボンドと対決したクリストファー・リーであったり、ボンド・ガールのブリット・エクランドがエロい美女役を演じたりしているのだが、本作で怪しい村のボスを演じているのが4代目ボンド役者のティモシー・ダルトンであるのも、同作との関連を考えれば当然かも知れない。

とにかくそういった具合で、これは映画への熱いオマージュと、凝りに凝ったいろんな仕掛けが施された、熱烈な映画ファンであればあるほど余計楽しめる快作である。

こういう楽しい作品は、映画会社もちゃんと宣伝して、もう少し興行的にもヒットさせて欲しい。また、観客も、有名スターが出てるとか、ヒット・シリーズの続編であるとか、派手な宣伝などに惑わされず、たまには「映画秘宝」誌なども読んで(笑)、本当に楽しい映画を見つけて映画館に足を運ぶようになって欲しいと思う。…そう、お楽しみはココからなのである。    (採点=★★★★☆

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コメント

ご存知でしたら、とばしてください。こちら東京では7月頭から渋谷シネマGAGA!のみで公開が始まりました。

もう8月から「俺たちダンクシューター」、9月から「蛇にピアス」の公開が決まっていたため一ヶ月限定ということで、念のため前売り指定席券を購入しておきました。これが大正解でした!3週目の土曜に行きましたが、3週目でもほぼ終日満員完売状態。渋谷シネマGAGA!がこんな混むのは始めて見ましたとおっしゃってる方もいました。洋画がこのご時世に快挙でしょうか!?このためか、新宿区などの他2館でも公開になったそうです。

それで渋谷GAGA!では、毎週土曜に一回著名人の方々によるトークショーがセットで行われていました。
本当は四週目が山下敦弘監督でしたのでここに行きたかったのですが、都合合わず三週目のトークショー付きの回にしましたが、こちらも豪華で、映画評論家の町山智浩氏と、ドーンオブザデッドのTシャツでホットファズに出てきたタイプのサングラス姿で現れた漫画家の花くまゆうさく氏でした。

このお2人のトークショーも短い時間ながら大爆笑で、主役2人の口の爪楊枝を「ドカベン」岩鬼の葉っぱに例えたりして脱線アリで、熱くなりすぎで時間オーバーのため会話の途中の中途半端な形でトークショー終了でした(笑)。

映画の感想ですが、ご指摘のようにタイトルと、事前の宣伝や予告編で、コテコテ爆笑アクションコメディだと思って観に行ったのが僕です(笑)。なので丁寧なミステリーとドラマの作りに普通に見入っておりました。いい意味で裏切られました。ただ終盤の畳み掛けは爆笑と興奮でした。

あとピータージャクソンとケイトブランシェットがカメオ出演してたそうですが、僕は全く気付きませんでした。(アレかな?というくらいで)。

長くなり恐縮ですが、管理人さんの地域でも混雑してらっしゃいますか?兎にも角にも、映画館で観れて良かったですね!

投稿: タニプロ | 2008年8月 2日 (土) 01:38

>タニプロ さま
コメントありがとうございます。

東京ではよく混んでいるようですね。
大阪ではブルク7の1館のみの上映で、私が観たのは3週目の平日最終回だった為か、ガラガラでした。東京ほどは入っていないようです。

ケイト・ブランシェットは、ニコラスがロンドンを離れる間際に会いに行った検死係(?)の恋人役です。ずっとマスクしてたので判りにくいでしょうね。
ピーター・ジャクソンは私も見逃しましたが、どうやら写真に写っている人物で出演しているようです。

投稿: Kei(管理人) | 2008年8月 2日 (土) 02:08

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