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2008年9月 8日 (月)

「ロードショー」誌の休刊に思うこと

Roadshow_2 先ごろ、映画雑誌「ロードショー」が休刊になるとのニュースが話題になりました。

私は、「ロードショー」など、ほとんど読んではおりませんでしたので、雑誌がなくなる事に、特に感慨はありません。

それに、「ロードショー」誌は後発で、創刊が1972年、…まだ36年の歴史しかありませんし。老舗の「スクリーン」誌が休刊にでもなれば少しは感慨が湧くかも知れませんが。

しかし、この雑誌が何故休刊に至ったか、その理由をいろいろ考えてみると、その背後には現在の映画界の置かれた状況や、映画観客の動向などが密接に絡んでいる…という点が見えて来た気もします。その辺りを検証してみましょう。

 
「スクリーン」、「ロードショー」誌は、映画雑誌と言っても、批評・作品研究中心の「キネ旬」や「映画芸術」誌とは異なり、正確には、“外国映画スターのファン向け雑誌”と言った方が正しいでしょう。映画スターのブロマイド、グラビア写真、ゴシップ記事を満載した、映画スターに胸ときめかせる若い人向け雑誌…といった所でしょう。
(ちなみに、日本映画のスター・ファン向け雑誌としては、「スクリーン」を出してる近代映画社が発行する「近代映画」がありましたが、現在は「KINDAI」と雑誌名を変え、どちらかと言うと映画よりもジャニーズ・タレントが中心で、もはや映画雑誌とは言いかねます)

何故このような雑誌が売れてるかと言うと、そもそも昔の映画観客は、映画の内容よりも、出演しているスター目当てで映画館に通っていたのです。人気スターが出ておれば、乱暴な言い方をすれば、映画の中身などどうでもいいといった感じだったのです。

これは、映画創世記からの一貫した流れで、戦前はエロール・フリン、ダグラス・フェアバンクス、グレタ・ガルボ、戦後はジェラール・フィリップ、アラン・ドロン、オードリー・ヘップバーン、スティーブ・マックィーン…と、超有名スターが映画雑誌の表紙を飾り、彼ら、彼女らが出演していれば映画はいつも大ヒットしたものです。

無論、日本映画も、戦前はバンツマ、アラカン、林長二郎(後の長谷川一夫)、田中絹代、山田五十鈴、戦後は、特に全盛を誇った昭和30年代には、日活なら石原裕次郎、小林旭、吉永小百合、東映は中村錦之助、大川橋蔵、片岡千恵蔵、市川右太衛門、大映は市川雷蔵、勝新太郎、山本富士子、東宝は三船敏郎、加山雄三、松竹、東宝掛け持ちで原節子…と百花繚乱。映画人気は、ひとえに映画スター人気のおかげだったわけです。

彼らの出演作の中には、一流監督の映画史に残る名作もありますがそれらはごく僅か、大半は毎回ワンパターンの、他愛ない娯楽映画でした。
逆に、小津安二郎や黒澤明、木下恵介などの一流監督が、芸術性の高い映画でも、とにかくも作れたのは、原節子、三船敏郎、佐田啓二・高峰秀子などの人気スターを主演にしていたからです。

日本映画が1970年代以降急速に衰退し、ジリ貧になって行ったのは、スターの賞味期限が切れ、新しいスターが登場しなくなった(と言うよりも、スターを作り出す努力をしなかった)のが大きな原因であると言えます。

洋画はその点、常に新しいスターが誕生したし、話題作りもうまかった事もあり、どんどんシェアを伸ばして行きます。

 
'70年代後半から、角川春樹が登場し、邦画界に角川映画ブームが巻き起こりましたが、これもヒットの要因は、薬師丸ひろ子、原田知世、松田優作といったスターを中心に据えた戦略のおかげです。

その角川春樹が薬物問題を起こして消えた後は、日本映画はさらに低迷を続け、1980年代末期には、遂に配給収入における邦・洋のシェアが逆転し、洋画シェアが全体の50%を越え、これはつい最近まで続きました(最大で、洋画シェアが73%に達した事もあります)。

一時は、日本映画はどん底状態でした。何よりも、ファッショナブルさを求める若い人に、日本映画は徹底的に嫌われました。日本映画の話をすると、「日本映画?ダサイ、暗い、ショボイ、貧相」と散々バカにされ、ほとんどの若い子は100%洋画しか見ない状態でした。ひどいのになると、「日本映画を見る」と言ったら、「えー、日本映画って、ヤクザもんとポルノばっかでしょ?」と蔑まれ、日本映画ファンは変わり者扱いされた、そんな時代だったのです(信じられないでしょうが、事実です(笑))。

ここ数年、日本映画が復活の兆しを見せ始めたのは、色々理由が考えられますが、主だったものでは、
① シネコンが普及し、邦画・洋画の上映館の区別が薄れて来て(昔はブロック・ブッキングで邦画は(一部例外を除いて)邦画専門館でのみ上映されてました)、さらに洋画が混んでれば、邦画でも観ようか…という選択肢も出て来た。
② 邦画にも若いスターが登場し、映画自体もファッショナブルな感覚のものが作られるようになって若い観客の抵抗がなくなった。
③ テレビ局が、ヒットしたテレビドラマを映画化し、テレビとの相乗効果でそれらの作品がヒットするようになった。

等が挙げられるでしょうが、特に②が大きいでしょう。小栗旬、松本潤、松田翔太などの若手スターが登場して、彼らの主演する「クロースZERO」、「花より男子FINAL」が予想外の大ヒットを記録したのもその為でしょう。

日本のスターを扱ったファン雑誌も増え、もう昔のように「日本映画、暗い、ダサい」とも言われなくなりました。最近では、「スクリ-ン」、「ロードショー」誌ですら、日本映画の話題がかなり取り上げられているくらいです(数年前までは、これら雑誌に日本映画が取り上げられる事は限りなくゼロでした)。日本映画不遇の時代を知っている私にとっては、隔世の感があります。

反対に、、洋画シェアが落ち込んで来たのは、洋画の刺激的なCG・SFX映画が飽きられて来た事と、もう一つは、新しいスターが登場していない事が理由でしょう。トム・クルーズ、キアヌ・リーブスは賞味期限切れ、シュワちゃんは政界に進出、新進のオーランド・ブルームは線が細い…何より、60歳を超えたハリソン・フォード、S・スタローン、50歳代のブルース・ウィリス主演の人気シリーズを復活せざるを得ない状況が、スター不在の深刻さを物語っています。

 
「ロードショー」誌が部数を落として来て、遂に休刊に至った理由は、この他にも、競争相手の増加(スターの動向中心の映画ファン向け雑誌は、今では2大誌以外に「CUT],「FLIX」、「MOVIESTAR」なども参入し、乱立気味)、インターネット、モバイルの普及により、人気スターに関する情報収集ルートが多様化し、映画雑誌に頼らなくてもスターの動向・ニュースが容易に入手可能になった事…等が挙げられるでしょう。

しかし、一番の理由は、もう昔の、“洋画スター(これは、はっきり言ってアメリカ、ヨーロッパに限定されます)を看板にして映画雑誌が売れた時代は終わった”…即ち、洋画スターにあこがれた時代の終焉…が最大の理由ではないかと私は思っております(外国映画スターの国籍も多様化し、ジャッキー・チェン、レスリー・チャン、チャン・ドンゴンと、アジア・スターが台頭した事も、同じような顔をした日本人俳優への抵抗感の払拭に役立っていると思えます)。
仮に新しい洋画スターが登場したとしても、昔ほど飛びつく人は少ないのではないでしょうか。

そうした時代の変化を端的に象徴したのが、「ロードショー」休刊ではないか…というのが私なりの結論です。

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コメント

いや、これはかなり頷けるご意見でした。ありがとうございます!

洋画低迷邦画活況の今の状況を、これまでの流れで書いていただいてありがたかったです。最近作った自分のブログでもご紹介させていただきます。
「若年層の字幕離れ」や「DVD普及による劇場離れ」、「ネット等の普及による雑誌低迷」とかはもうだいぶ聞いていたので。
やはりひとつの現象って、多種多様な原因からなるものですね。

自分が映画観始めた頃は「ロードショー」も「スクリーン」も存在してたので、「ロードショー」が歴史が浅いとは知りませんでした。

僕は高校生くらいの頃から既に、トム・クルーズなど「華のあるスター」より「味のある俳優」に影響されやすいタイプでしたので、あまり認識がなかったです。今でも「イースタン・プロミス」のヴィゴに虜になって、「やべえ!もっと鍛えてあんなカッコ良くなりてえ!」とか言い出してジム通いのペースを上げて、周りから失笑されてるタイプです(笑)

それはさておき、今日本で公開になってメディアでも多く取り上げられ、かつ結果を出すアイドル性を備えたスターって・・・デップやウィル・スミスとかになるんでしょうか?女優だと、キャメロン・ディアズ?確かにあまりいませんね。

暴論に近いですが、アメリカ映画が、「若い人も、スター出演で映画選ぶ感じではない」みたいなことなんでしょうか。本国がどうなっているかは不明ですが。

昔からあったことですが、話題の洋画が公開になるたびに、日本のタレント等を呼んで記者会見等をやったり、今でも吹き替えに起用して話題にしてますが(否定はしません。企業努力ですね)、こういう宣伝方法も見直していってもらったほうがいいのかもしれませんね。出演者の話題性を更に盛り上げるより、違う効果的宣伝方法を。

あ、思い出しました。シネコンといえば話が逸れますが、先日東京都新宿にできた、3万円の特別ルームがあるとかいうバブルなシネコンに行きました。かなりの活況振りでした。ジュースを少しこぼしただけで、かなりの罪悪感が発生しそうな、真っ白けの作りでした(笑)。さびれた名画座や閑古鳥が鳴いてる地味な映画館を愛す者としては・・・待ってる間落ち着かないものが(笑)

帰ってから気付いたのですが、「あれ?半券をもぎってない!」と思いました。

近所にシネコンがあるので、個人的に必要性が無いシネコンなため、もう行かないかもしれませんが、自分が間違えてスルーしてしまったのかと思ったら、他にも同じこと言ってる方がいました。

こんな映画館は初めてです。良いか悪いかはさておき。

長くなりましたが、ありがとうございました。

投稿: タニプロ | 2008年9月 9日 (火) 02:33

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