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2008年10月30日 (木)

「僕らのミライへ逆回転」

Bekindrewind(2008年・FOCUS-FEATURES/監督:ミシェル・ゴンドリー)

「エターナル・サンシャイン」のミシェル・ゴンドリー監督による、下町を舞台にしたハートウォーミング・コメディの佳作。

いまだにVHSしか置いてない街角のおんぼろレンタルビデオ店“Be Kind Rewind”(これが原題)。アルバイト店員マイク(モス・デフ)は、店長が視察旅行に出かけた留守の店番をまかされる。ところが、彼の友人、ジェリー(ジャック・ブラック)がうっかり発電所で電磁波を浴びた為、ビデオの中味がすべて消えてしまう。困ったマイクとジェリーは、家庭用ビデオカメラを使い、即席で名作映画をリメイクするが、それが意外な評判を呼び…。

舞台となる、まもまく都市開発で取り壊される運命にある、ひなびた町の風景がまずノスタルジックでいい(ちょっとウェイン・ワン監督の秀作「スモーク」の舞台を思わせる)。

ジャック・ブラックが例によっておバカなキャラでハタ迷惑な騒動を繰り広げるので、他愛ないハチャメチャ・コメディかと思ってしまう。リメイクの方法も、ゴミ捨場のガラクタやアルミホイル、ダンボール等のありあわせ素材を衣装や小道具にしてるので、チープこの上ない。子供の学芸会レベルである。

これが意外にもウケてしまったのは、おそらく下町の人たちが、ジェリーたちのチープだけど、アナログな手づくり作品に、人間的な温かみを感じたという事なのだろう。
CD(デジタル録音)が全盛の現代でも、いまだに針で聞くアナログ・レコードが根強い人気があるのも、同じ理由だろう。

裏を返せば、大規模予算、デジタルCGで派手にはなったが、中味は空疎なハリウッド娯楽作へのアンチテーゼにもなっていると言えるだろう。
デジタル画像のDVDが主流の時代に、アナログ録画のVHSテープしか置いていないレンタルビデオ店が舞台であるのも象徴的である)

実際我々観客も、最初はあまりのダサさとチープさにうんざりするものの、次々とリメイクされる過去の名作を見ているうちに、少しづつそれらに愛着を感じ、自然と頬が緩んで来るのである。

(参考までに、リメイクした作品名を挙げると…「ゴーストバスターズ」、「ラッシュアワー2」、「ロボコップ」、「ライオン・キング」(アニメ!)、「キングコング」、「2001年宇宙の旅」、「ドライビング・Missデイジー」…順番に並べると、派手なハリウッド大作から、次第に古典的な名作にシフトしているのが分かる)

ちょっとした思い付きから始まったジェリーたちの手作りリメイク・ビデオが評判になり、やがて行列が出来、はるばるニューヨークからもうわさを聞きつけ、レンタル客が押し寄せるまでになる。この辺り、やはりノスタルジックな味わいの秀作「フィールド・オブ・ドリームス」のラストシーンを連想させる。

物語は後半、著作権違反で無断リメイクが出来なくなると、映画作りの楽しさ、素晴らしさを覚えたジェリーたちは、オリジナルの本格的ドラマを作ろうとし、遂に、この店が生家だという伝説のジャズ・ピアニスト、ファッツ・ウォーラーの伝記映画を製作する事になる。

そしてラストシーン、あえてここでは書かないが、あの、映画を愛する人が感動の涙を流した名作「ニュー・シネマ・パラダイス」を思わせる、素敵なエンディングが待っている。

真面目に考えたら、あんな安物のインチキ・ビデオに人気が出るなんてありえないお話なんだけど、温かい人の心が奇跡を呼び起こす、フランク・キャプラの名作「素晴らしき哉、人生!」のようなファンタジーと考えれば納得出来るはず。

 
さすがは、おバカな「ヒューマンネイチュアー」の監督であると同時に、切なく悲しいラブ・ストーリー「エターナル・サンシャイン」の監督でもあるミシェル・ゴンドリー監督だけの事はある。

低予算のマイナー映画にもかかわらず、シガニー・ウィーバーやミア・ファローやダニー・グローヴァー(そしてジャック・ブラック)といった大物スターが顔を出しているのも、映画の主旨に賛同しての事かも知れない。素敵な事である。

多くの映画を観て来た映画ファンであるほど感動し、ラストに泣けるだろう(特に、上に茶色の太字で挙げた映画が大好きな映画ファンならなおの事)。

ただ、多分多くの人が指摘するだろうが、題名のヒドさはなんとかならなかったのか。原題のRewindから“逆回転”を連想したのかも知れないが、映画のテーマと全然関係ない。原題は Be KindRewind を引っかけ、韻を踏んでいるシャレた題名なのに…。

(“ミライへ逆回転”って、まさか「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に引っかけた…    てワケないか(笑))       (採点=★★★★

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コメント

これトホホな邦題がついてますが、
「原題そのまま+一言」
(最近の例でいうと、リダクテッド 真実の価値)みたいな感じにすれば良かったんではないかと思います。

でもいい映画でした~♪大好きな「ロボコップ」ネタが出てきたのも嬉しいです。ラストはちょい泣きそうになりました。

投稿: タニプロ | 2008年11月 3日 (月) 02:57

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