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2008年11月21日 (金)

「ワイルド・バレット」

Runnningscared (2006年・ニュー・ライン/監督:ウェイン・クラマー)

ほとんど話題になっておらず、出演者も地味な為か、ロードショー館でなく、2番館かマイナー・チェーンにてひっそりと公開された(大阪では天六ユウラク座のみ)。

だが、期待せずに観に行ったら、これが意外な拾い物。アクションは満載、お話は二転三転、まったく先が読めない展開に、映画の小ネタも散りばめられ、あっという間の2時間2分であった。

今では数少ない、B級プログラム・ピクチャーの匂い紛々。ある意味では、ユウラク座のような場末の汚れた2番館(ごめん!)でバッタリ出会うにふさわしい映画なのかも知れない(笑)。

Q・タランティーノも絶賛したそうだが、そう言えば“グラインドハウス”ものに近い、いかがわしいテイストも感じられる。

 
主人公はマフィアに所属し、殺しに使用された銃の後始末を仕事にするジョーイ(ポール・ウォーカー)。アジトを襲って来た警官を殺害した銀のリボルバーを自宅に持ち帰り、地下室に隠したが、それを見た息子の友人のオレグ(キャメロン・ブライト)がこっそり銃を持ち出したのが騒動の始まり。オレグは虐待を受け続けていたロシアン・マフィアの養父アンゾ・ユゴルスキー(カレル・ローデン)をはずみで撃ち、逃走した為、銃から足が付くのを恐れたジョーイはオレグを探して夜の街を探索する…。

Runnningscared2 くだんの銃が、次々と人手に渡り、汚職警官や娼婦とそのヒモ、凶暴なホームレスなども絡んで事態は混沌を極め、オレグは小児愛好癖のおかしな夫婦に捕われ、ジョーイの妻が救出に向かったりと話はめまぐるしく展開する。

だが、オレグと二人で銃の行方を追ううちに、ジョーイはオレグに次第に我が子のような情愛を抱いて行く。この辺り、殺伐とした物語の中でちょっとした息抜きになっていて心が和む。単なるドンパチ・アクションではないのである。オレグに扮したキャメロン・ブライトが好演(撮影当時13歳)。

オレグの養父のアンゾが、ジョン・ウェインの大ファンで、ウェインの「11人のカウボーイ」を飽きずに何度もビデオで見ていたり、背中にもウェインの刺青があったりする。このアンゾが最初はイヤな奴だったのが、ラストではオレグの為に壮絶な死に様を見せる。ちなみに「11人のカウボーイ」は、ジョン・ウェインが西部劇のヒーローとしては初めて殺されてしまう作品である。死に際に、アンゾがウェインの決めゼリフをつぶやくが、「11人-」という映画を知っておれば、ここはなお楽しめる。

遥か向こうの塀(タイトルがペイントされている)からカメラが引いて室内に移動する冒頭シーンや、ジョーイの家の2階の窓から隣のオレグの家に移動し、そのまま室内を舐めるまでをワンカット移動するシーンなど、凝ったカメラワークも楽しい。

ラストの、アイスホッケー場でのバトルにも工夫が凝らされており、最後まで飽きさせない。多彩な登場人物を配置し、それぞれが微妙に絡み合って行く脚本が良く出来ている(脚本は監督自身)。

その他、冒頭の、ジョーイが慌ててオレグを車に乗せるシーンや、ラストの葬式シーンなど、観客をミスディレクションに導く仕掛けがいくつも施され、いったいどう話が転がって行くのか、目が離せない面白さに満ちている。

脚本と演出を手掛けたのは、まだこれがメジャー3本目の新進ウェイン・クラマー。本作で一躍注目され、次回作ではハリソン・フォード主演の大作を任されるという事だ。

エンド・クレジットに、サム・ペキンパー、ブライアン・デ・パルマ、ウォルター・ヒルへの謝辞が出てくる。なるほど、そう言えば、バイオレンス描写はペキンパー、スタイリッシュなアクション演出はW・ヒル、凝ったカメラの移動はデ・パルマをそれぞれ彷彿とさせる。

ジョーイを演じるのは、「ワイルド・スピード」のポール・ウォーカー。本作の邦題はその作品にあやかっていると思われる(原題は"RUNNING SCARED")。
悪徳刑事役を、渋いチャズ・パルミンテリが演じているのも見どころである。

 
決して、傑作というわけではない。突っ込みどころもいくつかあるし、荒っぽい所もある。

だが、派手なアクション・シーンがあるにも拘らず、あちこちに張られた巧妙な伏線、さりげなく配置された、親子、家族愛などがラストに向かって収斂して行き、観終わっても爽やかな後味を残す辺りに、並みのアクション映画では終わらせない、クラマー監督の才気を感じる事が出来る。

ウェイン・クラマー監督、今後の、なお一層の活躍が期待できる人である。名前を覚えておいて損はない。      (採点=★★★★

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» 『ワイルド・バレット』 [ラムの大通り]
(原題:Running Scared) 「いやあ、これはスゴい。 今年、公開されたアクション映画の中でも 群を抜くオモシロさだ。 公開規模が小さいのがホントもったいない」 ----へぇ〜っ。 アクションで、そんなに褒めるの珍しいよね。 どういうところがいいの? 「動きが主体のアクションだけに、 言葉で語るのは極めて難しいけど、 この監督がエンドクレジットで捧げている3人の巨匠、 サム・ペキンパー、ウォルター・ヒル、そして ブライアン・デ・パルマというのが この映画の魅力を端的に言い表している」 -... [続きを読む]

受信: 2008年11月21日 (金) 22:57

» 「ワイルド・バレット」 [It's a wonderful cinema]
 2006年/アメリカ、ドイツ  監督/ウェイン・クラマー  出演/ポール・ウォーカー      キャメロン・ブライト      ヴェラ・ファーミガ  なんだか思いっきりB級臭さが漂っている作品ですが、ポール・ウォーカーのB級作品は結構好きなのですよ。この作品のどんでん返しも、結構良かったです。・・・まあ、ポール・ウォーカー、またそれか!とは思いましたけど。(←観た人にはわかる)  殺しに使用された銃の後始末を任されたチンピラのジョーイは、家の地下室にそれを隠す。しかし、その一部... [続きを読む]

受信: 2008年11月22日 (土) 00:03

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(原題:RUNNING SCARED) 【2006年・ドイツ/アメリカ】試写会で鑑賞(★★★☆☆) 犯罪に使われた銃の後始末を命じられたチンピラが、その銃を扮したことで起こる一夜の出来事を描いたクライム・サスペンス。 イタリアン・マフィアの下っ端組員であるジョーイ・ガゼル(ポール・ウォーカー)は、犯罪に使われた銃の後始末をするのが仕事だった。ある日、麻薬取引現場に乱入してきた悪徳警官を射殺してしまい、ジョーイはその危険な拳銃の処分をボスの息子トニー・ペレーロ(ジョニー・メスナー)に命じられる。ジ... [続きを読む]

受信: 2008年11月22日 (土) 02:37

» ワイルド・バレット [★★むらの映画鑑賞メモ★★]
作品情報 タイトル:ワイルド・バレット 制作:2006年・ドイツ/アメリカ 監督:ウェイン・クラマー 出演:ポール・ウォーカー、キャメロン・ブライト、ヴェラ・ファーミガ、カレル・ローデン、チャズ・パルミンテリ あらすじ:殺しに使用された銃の後始末を仕事にするジョーイ(ポール・ウォーカー)は、警官殺害に使用した銀のリボルバーの始末をすることに。しかし、地下室に隠したはずだったリボルバーが、隣の家で起こった発砲事件で使用されていたのだ。発砲したのは、ジョーイの息子の友人で、ロシアンマフィアの養父から虐待... [続きを読む]

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