「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」
(2008年・パラマウント・クラシックス/監督:マーティン・スコセッシ)
平均年齢64歳!になるロックの王者、ザ・ローリング・ストーンズのライブ・コンサートの模様を、名匠マーティン・スコセッシが監督したドキュメンタリーの快作。
ローリング・ストーンズは、ビートルズとほぼ同じ頃デビューした、イギリスのロック・グループ。ビートルズの大ヒットのおかげで雨後のタケノコのように登場したイギリス・ロック・グループの中でも息の長いキャリアを持ち、実力・人気ともビートルズと並び称される伝説的なグループである。
だがその後の歩みは、ビートルズとはいろんな点で対照的である。
ビートルズは、最初の頃は甘いメロディ、美しいハーモニーで、若いファンの熱狂的支持を集めた、いわゆるアイドル・グループである。ファッションもカラフルで、時代の尖端をリードした。
それに対してローリング・ストーンズは、ファッションにこだわらず、服装も髪型もいつもラフな格好(ジーンズなど)、失礼だが顔もブサイク(笑)、そして音楽は黒人R&Bをベースに、荒削りでワイルドである。
ビートルズが、アルバムを発表する度に音楽レベルを格段に向上させ、今では教科書に載るくらいの名曲「イエスタデイ」や、芸術的とも言える「サージェント・ペパーズ・ロンリーハート・クラブ・バンド」などのアルバムを発表し、やがてメンバーそれぞれの個性が衝突して軋轢を生み、グループを解散せざるを得なくなった…のに対し、
ローリング・ストーンズは、何年経っても、音楽的にほとんど変わらない。悪く言えば進歩がない(褒めてるつもり)。永遠のロック・バカである。
デビューして、もう45年!にもなるのに、いまだに現役で、昔のままのスタイルで精力的にコンサートを行っている。
変わらない…からこそ、'60~70年代に活躍した多くのバンドが解散した中で、おそらくはただ1グループだけ、解散せずに現在まで生き残って来れたのだろう。
本作を見れば分かるが、驚くなかれ、リード・ボーカルのミック・ジャガーは、顔のシワこそ増えてはいるが、体型も、歌唱力も、パフォーマンスも、まったく昔と変わっていない。他のメンバーも同じだ。
パワフルに歌い、飛び跳ね、舞台狭しと動き回る姿は、遠くから見れば若い時そのまま。とても63歳(撮影当時)には見えない。
それどころか、Tシャツにジーンズ、時たまヘソまで見せながら歌う姿は若い人よりもセクシーだ(笑)。
親子ほど歳が違う、若いクリスティーナ・アギレラとのセッションでは、ピッタリ寄り添った腰の動きもセクシー。歳の差を感じさせない、ギンギンのパワーに満ち溢れている。
私は、正直に言うと根っからのビートルズ・ファン。なのでローリング・ストーンズは、も一つ熱心には聴いて来なかった(アルバムは数枚持ってはいるが)。
しかし、本作を観て考えが変わった。感動した!特にミック・ジャガー、見直した。あんたは凄い。
ドラムのチャーリー・ワッツが、演奏が終わると、フウとため息をついたり、キース・リチャーズに至っては、最後の曲が終わると床にへたり込んだり、さすがに歳を感じさせたが、ミックなんか、あれだけ激しく動き回り、メンバーで一番体力を消耗してるはずなのに、まるで疲れを見せていない。日頃から鍛錬して体を鍛えているのだろうが、なかなか出来ない事である。いつまでも、その意欲を持続させ、腰が立たなくなるまで、歌い続けて欲しい。
マーティン・スコセッシの演出は、18台のカメラを使い、いろんな角度から彼らのパワフルな熱演ぶりを余すところなく捕らえる事に成功している。また合間には過去の、若い頃のインタビュー映像を挟み、長い年月、歌い続けて来た事を観客に改めて認識させている。
冒頭、ストーンズがセット・リストをなかなかスコセッシに渡さず、スコセッシが苛立つシーンもさりげなく挟み、少しでもカメラに邪魔されず、最高の舞台を見せようとするストーンズ側と、こちらは少しでもいい映像を捉えようとするスコセッシ側との、まさに芸術家同士の火花を散らす格闘ぶりも感じさせ、出だしから俄然テンションの高まりを見せる辺りも面白い。
だが、なんと言っても素敵なのは、“60歳を超えようが、自分がやりたい事を真摯にやり遂げようとする意欲があれば、年齢など関係ないのだ”という事実を、身をもって示してくれた“永遠の不良少年”ストーンズたちの姿である。
これには感動した。目頭が熱くなった。“年金が貰えるようになったらノンビリしよう”などと思っている人(私も含めて)は、大いに反省すべきだろう。
ローリング・ストーンズ・ファンは無論のこと、ビートルズ世代、ロック・ファンの方も必見。いや、音楽ファンのみならず、厳しい社会環境に元気を失いかけている中高年の方や、還暦を越えて、何をしていいか分からなくなっている世代の方々にもお奨めである。きっと、もう少し頑張ってみようという勇気が沸いて来る事だろう。DVDが出たら、宝物にしたい、そして元気を失いかけた時に観直せば、元気を取り戻す妙薬にもなるであろう、これはそんな素敵な作品なのである。 (採点=★★★★★)
サウンド・トラックCD
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コメント
はじめまして。
TBをありがとうございました。
驚くべきパフォーマンスでしたね。
史上最強のバンドといわれる理由がよくわかりました。
目頭が熱くなる――私もスクリーンがにじんでしまいました。
DVDのリリースが楽しみです。
投稿: masktopia | 2008年12月15日 (月) 14:09