「パッセンジャーズ」
美しいセラピストが、事故にまつわる不可解な謎に巻き込まれていく心理サスペンス。
飛行機事故で奇跡的に生還した5人の乗客。セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)は彼らのカウンセリングを任されるが、事故の際の証言が少しづつ食い違う。やがて彼らの周囲に不審な人物が現れ、また日を追うごとに生存者の姿が消えて行く。クレアは、航空会社が事故原因の真相を隠蔽するために、生存者の口封じを行おうとしているのではないかと推測するが…
登場人物が、みんな謎めいて見える。生還者のうちの一人、エリック(パトリック・ウィルソン)は事故に遭ってるのに不思議に明るいし、航空会社の担当者(デヴィッド・モース)はいかにも胡散臭く、クレアの隣人のオバさん(ダイアン・ウィースト)は妙に親切でかえって気持ち悪いし、…と、なにやら大きな陰謀が隠されているように見えて出だしはまずまず。
こういうミステリー・タッチの作品は、いかに巧妙に伏線を撒くか、観客をいかにうまくミスディレクションに導くか―がポイントとなる。その点では導入部は成功している。
この映画のポイントは、ラストに明かされる驚愕の真実である。ネタバレになるので書けないが、あまり考えずに観ていればうまく騙される人もいるだろうし、伏線部分を注意して見ている人は早々と気付くだろう。
残念なのは脚本がいささか弱い。脚本のロニー・クリステンセンはこれまでTVムービー数本程度の実績しかないようで、例えばカウンセリング・シーンがあっさり過ぎる。生存者の過去や、心の傷を丁寧に描くなど、もう少し登場人物のキャラクターをきちんと掘り下げて描いておればもっと面白くなっただろうに、惜しい。「彼女を見ればわかること」のロドリゴ・ガルシア監督も、この脚本では腕の揮いようがなかっただろう。
(以下重要なネタバレですので隠します)
実は、クレアも5人の生還者も、みんな死んでいた…というのがオチで、これは明らかにM・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」からのいただきだろう。主人公がセラピストで、自分が死人だった事に最後でやっと気付く…という点まで似ている。ただ、主要登場人物が全員死人だった…という点が目新しいところか。よく考えれば、最初に病院に行ったクレアが、すれ違う人に声をかけても無視される…というシーンや、生存者がみんなかすり傷ひとつ負ってない…という辺り、ちゃんと伏線になっている。
ただ、おかしなツッコミどころも目に付く。クレアが車を運転するシーンがあるが、あの車は一般の生者には見えてるのだろうか。見えてれば無人の車が走ってる事になり、騒ぎになるだろう。それとも、車も幽霊?(笑)。
クレアが、飛行機に乗ってた事を全然覚えていないのも変。5人の生還者はみんな事故の記憶があるし、事故現場でウロウロしてたのに、彼女だけは家で寝てて、しかも上司(これも死人)からの電話を受けている。何故彼女だけが特別なのか、その理由を説明しておく必要があったのでは。
…と言う具合に、欠点も多いが、しかしラストにおいて、すべての謎が一挙に解明され、同時にクレアとエリックの、悲しいラブストーリーにホロリと泣かされる辺りはエンディングとしては悪くない。
↑ネタバレここまで
まあ、細かい所で難点もあるが、出演者はアン・ハサウェイ以外はあまり有名どころは出ていないし、製作費も、浜辺の事故機の残骸以外には大して金はかかっていないようで、コスト的にも低予算の作品である。配給もメジャーではない。
つまりは、昔で言う、B級映画(プログラム・ピクチャー)なのである。上映時間からして、93分とB級サイズである。
そう考えれば、2番館か地方公開で、お目当ての作品(話題作)を観に行って、その併映作としてまったく予備知識もなく、期待もせずに観たなら、結構楽しめるだろう。大阪で言うなら、新世界国際劇場で、3本立で観た人はきっと予想以上に楽しめたに違いない(笑)。
まああまり期待せず、白紙の気持ちで、細かい事を気にせずに観る事をお奨めする。B級映画は、B級なりの楽しみ方があるのである。 (採点=★★★)
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コメント
keiさん、ちょっとお久しぶりです♪
やはり脚本のせいでしょうか、前半は
ちょっとテンポが悪くて退屈なところも
ありましたσ(^◇^;)
ですが、クレアまでもが・・・・だったとは!
とラスト驚きました(+_+)
最初、あんな大事故で、なんで生き残った人
あまりケガをしていないんだろうと思ったのですが、そういう物語だったんですね。。。
クレアの正体がわかってから、冒頭の病院で
無視されたこともそういうことだったんだと
気がつきました。
確かにB級ですが、それなりに楽しめました♪
投稿: ひろちゃん | 2009年3月16日 (月) 22:04