« 「パッセンジャーズ」 | トップページ | テレビ「相棒 -シーズン7-」最終回 »

2009年3月20日 (金)

「ジェネラル・ルージュの凱旋」

Generalrouge(2009年・東宝/監督:中村 義洋)

昨年の「チーム・バチスタの栄光」に続く、海堂尊原作の医療ミステリーの映画化。

前作は、私にはイマイチだった。原作はなかなか面白かったが、映画化に際しアレンジした点がうまく嵌っていなかった気がする。原作では中年男性だった不定愁訴外来医師の田口を、若い女性に変えたのも、映画的には面白い発想なのにストーリーに生かせていなかったし、ソフトボール試合もあまり意味がなかった。ラストの展開もモタついていたように思う。唯一、ロジカルモンスター・白鳥(阿部寛)の存在はユニークでちょっと面白かった。

ミステリーに限らず、小説を映画化する場合、原作の面白さは、作者の文体や筆力(勢い)による場合が多く、基本的に、書かれた文字を読者の頭でイメージ化する小説と、すべてが“絵(=ビジュアル)”を中心に進行する映画とは異なるものである。その為、トリック部分などは文章で読めばごまかされてしまうが、映像化すると意外につまらなかったりする。
昔、森村誠一原作の「超高層ホテル殺人事件」を映画化した時、原作ではなるほどと思った密室トリックが、映像にするとあまりにショボくてガックリした事がある。

従って、映画化には、そうした、映像面での配慮をきちんとしておかないと成功しないように思う。松本清張原作を多くシナリオ化した橋本忍は、その点実にうまかった。後半を原作とはまったく変えて、イメージ映像と音楽を主体にした「砂の器」などは顕著な成功例だろう。

そんなわけで本作も観る前にはかなり不安があった。そもそも脚本が、「REDSHADOW 赤影」「ドラゴンヘッド」「252‐生存者あり‐」と、トンデモ駄作づいてる斉藤ひろしが前作に引き続き担当しているから余計不安であった。

ところが、期待していなかったせいか、本作は予想に反してよく出来ていた。前作よりずっと面白い。

 
舞台は前作と同じ東城大学医学部付属病院。ある日田口医師(竹内結子)の元に、『救命救急の速水センター長は医療メーカーと癒着している』という差出人不明の内部告発文書が届く。院長の依頼を受け、調査に当たった田口は、速水が当の医療機器メーカーの営業マンからこっそり紙袋を受け取る現場を目撃するが、やがてその営業マンが病院屋上から転落死する事件が起き…

面白さの一因は、ジェネラル・ルージュの異名を取る、救命救急センター長・速水(堺雅人)のキャラクターの秀逸さだろう。救急患者をすべて拒まず受け入れ、部下の反感を買いつつも、泰然と構え、いつもチュッパチャプス(飴玉)を舐めている。いったいこの男は天才なのか、賄賂を受け取る悪人なのか、俄然興味津々となる。

そして、同じ主旨の内部告発文書が、厚生省役人の白鳥の所にも、こちらはワープロ打ちで届いていた。何故2通あるのか、何故片方は手書きなのか、それは誰が書いたのか、医療メーカー営業マンの転落死は事故か自殺か、はたまた殺人か…

謎や人物設定を前作と比べ、単純化した分、展開もスリリングで引き込まれる。田口が若い女性である点や、ソフトボール試合が、今回は伏線としてうまく生きている。そして白鳥が相変わらずのキャラで楽しませてくれる。今回は足を怪我し、鬼警部アイアンサイドばりの車椅子探偵役であるのも楽しいし、彼の気配を本能的に感じる田口のリアクションがマンガ的ギャグで笑わせてくれる。ここらは前作を観ていないと面白さは半減する。必ず前作で予習すべし。

そしてクライマックスの、倫理委員会での真相究明から、休む間もない救急臨戦態勢への怒涛の展開が見事。ビジュアル的にも見せ場満点で、映画としてのスケール感も出ている。また、ここでの白鳥の鋭い名探偵ぶりも、千両役者ばりに決まっている。歌舞伎なら大向うから掛け声が上がるところだ。

さらにエンディングがまた素晴らしい。昼行灯かと思われた田口の、速水に対する粋な処置もいいが、ラスト30秒(ぐらいかな?)のオチが絶妙で思わず膝を打った。これはハリウッドの都会派コメディにはよく見られる、いわゆる反復ギャグなのだが、日本映画でこんな粋なラストは珍しい。かつてはダサイと洋画ファンから蔑まれていた日本映画もここまで向上したかと、私は思わず感慨に耽った(と言ったら褒め過ぎか(笑))。

 
謎がからむミステリー展開の中に、さまざまな人間ドラマや、現代の医療が抱える諸問題も散りばめ、全体としてウエルメイドでユーモラスな味わいに満ちた社会派エンタティンメントの快作となっているのはお見事。斉藤ひろしさん、ちょっと見直しましたよ。

速水に扮した堺雅人が快演。脇役でありながら主役を食う存在感を見せる。―ただ本人はいいのだが、顔が優しいのが唯一の難点。もう少し得体の知れない凄みと怪物性が感じられる役者だったら満点だっただろう。惜しい。ともあれ、最近のミステリー映画の中では上出来の快作である。     (採点=★★★★

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

 
(で、お楽しみはココからである)

原作者の海堂さんによると、1作目「チーム・バチスタ-」を書いた時は、最初主役は田口だけだったのだが、途中でどうしても話が前に進まなくなって途方に暮れたそうである。その時、変人にして怪人・白鳥という人物を新たに創造した事でどんどん筆が進み出したのだそうだ。

このエピソードは、黒澤明監督の「七人の侍」において、脚本チームが途中で、百姓と侍をどう融和させるかという部分で詰まってしまい、まったく筆が進まなくなったが、三船敏郎扮する“菊千代”というジョーカーを創造した事によって一気に話が進み出した…という逸話を思い出させる。
なるほど、白鳥は菊千代か―と得心が行ったのだが、よく考えれば、白鳥を演じた阿部寛は、黒澤リメイク「隠し砦の三悪人」で、オリジナルで三船敏郎が演じた真壁六郎太役を演じている…というのも、奇しき因縁ではある。 

|

« 「パッセンジャーズ」 | トップページ | テレビ「相棒 -シーズン7-」最終回 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/174742/44414242

この記事へのトラックバック一覧です: 「ジェネラル・ルージュの凱旋」:

» 「ジェネラル・ルージュの凱旋」 エンターテイメントを通じての問題提起 [はらやんの映画徒然草]
「チーム・バチスタの栄光」の続編「ジェネラル・ルージュの凱旋」、前作と同じく中村 [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 08:56

» [映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』]
☆今、映画に限らず、書かなくてはならないことが多過ぎるので、足早に記させて頂く。  短く記すわけだが、いや、この作品は面白いよ、私は大好きだ。  シリーズ前作の『チーム・バチスタの栄光』(クリック!)も、私はとても面白かったのだが、ネット映評では評判が悪かったのが不思議でしょうがなかった。  原作を読んだ人には、何か足りない要素があったのだろう。  私にとっては、シリーズ2作目なのに、なんとも、もう見続けてきた長大なシリーズの如く、田口(竹内結子)や白鳥(阿部寛)が出てくると、「待ってました... [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 09:36

» 『ジェネラル・ルージュの凱旋』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「ジェネラル・ルージュの凱旋」□監督・脚本 中村義洋□脚本 斉藤ひろし □原作 海堂尊 □キャスト 竹内結子、阿部 寛、堺 雅人、羽田美智子、山本太郎、高嶋政伸、貫地谷しほり、尾美としのり、野際陽子、平泉成、國村 隼、林 泰文、佐野史郎、玉山鉄二、中林大樹■鑑賞日 3月8日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> 『チーム・バチスタの栄光』から約1年。 バチスタ事件を解決した田口先生(竹内結子)と、厚生労働省の役人・白鳥(阿部 寛... [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 09:57

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [Akira's VOICE]
田口も働こうよ・・・。   [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 10:34

» 『ジェネラル・ルージュの凱旋』 [ラムの大通り]
----大ヒットした 『チーム・バチスタの栄光』 の続編。 田口公子(竹内結子) と白鳥圭輔(阿部寛)コンビの復活か。 ニャんだか、それだけで観たくなるね。 「フォーンがそう言うくらいだから、 この映画のヒットも間違いないんだろうな」 ----こんどもニャにか事件が起こるの? 「うん。舞台は同じ。 東城大学医学部付属病院。『救命救急の速水センター長は 医療メーカーと癒着している』という 差出人不明の二種類の内部告発文書が届くんだ。 一通は田口、一通は白鳥。 ところが、その二通。 片方はワープロで、片... [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 11:36

» ジェネラル・ルージュの凱旋(映画館) [ひるめし。]
シロか、クロか。 [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 12:17

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [必見!ミスターシネマの最新映画ネタバレ・批評レビュー!]
[ジェネラル・ルージュの凱旋] ブログ村キーワード 評価:8.0/10点満点 2009年23本目(21作品)です。 チーム・バチスタの事件から1年後の設定です。 不祥事から立ち直りつつある東城大学付属病院で、「ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)」の異名をとる救命救急セン..... [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 14:33

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [映画通信シネマッシモ☆プロの映画ライターが贈る映画評]
切実な医療問題を分かりやすいエンタメとして提供するミステリー・シリーズ第2弾。おっとり型の窓際医師・田口公子と、口が悪い厚生労働省の役人・白鳥圭輔のにわか探偵コンビが、医療メーカーと病院の癒着にからむ事件の謎を追う。激務の救命救急センター長を演じる堺雅人....... [続きを読む]

受信: 2009年3月21日 (土) 23:46

» 「ジェネラル・ルージュの凱旋」 [俺の明日はどっちだ]
ミステリーとしてみると、先の展開が早いうちから読めてしまいシリーズ前作である「チームバチスタの栄光」に比べドラマとしての面白味には欠けていたけれど、医療現場の現実という社会性をもったテーマをエンタテイメントと両立させて描いていたという点では評価されるべき一作。 今回の舞台となるのは救急救命の現場。 人の命を救うという医療の最前線であるにも係わらず病院経営という視点から苛酷な環境におかれている現実。 心臓マッサージを1時間必死に続けることに対する対価やガーゼひとつの経費の扱われ方、あるいは各科による... [続きを読む]

受信: 2009年3月22日 (日) 18:59

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [象のロケット]
東城大学付属病院の窓際医師・田口公子は、院内倫理委員会の委員長に任命されてしまった。 さっそく一通の告発文書が届く。 「救命救急センターの速水センター長は医療メーカーと癒着している。 看護師長は共犯だ。」 告発された医療メーカー支店長が院内で自殺。 高階院長から調査を命じられた田口。 ≪シロか、クロか…?≫ 人気医療ミステリー第2弾。... [続きを読む]

受信: 2009年3月22日 (日) 21:00

» ジェネラル・ルージュの凱旋 2009-13 [観たよ〜ん〜]
「ジェネラル・ルージュの凱旋」を観てきました〜♪ 東城大学付属病院の医師・田口(竹内結子)は、病院内の倫理委員会の委員長を務める。そんな田口のもとへ、「救命救急センターの速水(堺雅人)は、医療機器メーカーと癒着しており、花房看護師長(羽田美智子)も共犯である。」という告発文が届く。同時に厚生労働省の白鳥(阿部寛)の元にも同様の内容の告発文が送付されていた・・・ 人気Blogランキング      ↑ 押せば、ドクター・ヘリが飛ぶかも!? Blog人気ランキングに参加してます。... [続きを読む]

受信: 2009年3月22日 (日) 21:20

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [Thanksgiving Day]
映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」を観てきました!! 前作の「チーム・バチスタの栄光」がなかなか見ごたえのある、いい作品でしたからね。 海堂尊原作の“田口・白鳥シリーズ”映画化第2弾ということで、公開前からずっと楽しみにしてたんですよ。 「ジェネラル・ル...... [続きを読む]

受信: 2009年3月22日 (日) 21:57

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [だらだら無気力ブログ]
現役医師・海堂尊のベストセラー小説を竹内結子と阿部寛のコンビで 映画化した『チーム・バチスタの栄光』の続編。 ジェネラル・ルージュの異名でと呼ばれる救命救急センター長・速水に かけられた疑惑をめぐり、窓際医師・田口と厚生労働省の切れ者役人・ 白鳥のコンビが..... [続きを読む]

受信: 2009年3月23日 (月) 00:59

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
シロか、クロか?__バチスタの謎の先にある救命救急医療の深い闇。 物語:「チーム・バチスタ事件」を解決に導いた(と思われている)東城大学付属病院の窓際医師・不定愁訴外来の田口公子(竹内結子)は、院内における諸問題を扱う倫理委員会の委員長に図らずも任命さ...... [続きを読む]

受信: 2009年3月25日 (水) 00:07

» ジェネラル・ルージュの凱旋■主役は堺雅人! [映画と出会う・世界が変わる]
作品としてはもう少し短く、演出にもテキパキ感が欲しいところである。そのあたりは非常に不満なのであるが、今回は主役級の堺雅人が非常にいい。このところ映画では「アフタースクール」と「クライマーズハイ」でそれぞれ違ったキャラクターを演じているが、今回は物語の...... [続きを読む]

受信: 2009年3月27日 (金) 02:10

» ジェネラル・ルージュの凱旋 (堺雅人さん) [yanajunのイラスト・まんが道]
◆堺雅人さん(のつもり)堺雅人さんは、現在公開中の映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』に速水晃一 役で出演しています。先日、劇場に観に行きました。●導入部のあらすじと感想 [続きを読む]

受信: 2009年3月31日 (火) 14:38

» 映画版「白鳥・田口コンビ」の行方は?■田口公平 VS.田口公子 [映画と出会う・世界が変わる]
白鳥・田口コンビの田口の人物設定については、柊♪さんととあ丸さんからコメントをいただきましたが、原作は男性なわけです。映画化に当っては男性二人よりは男性と女性のコンビの方が絵になると考えたのか、または竹内結子ありきの企画であったのか不明であるが、結果と...... [続きを読む]

受信: 2009年4月 2日 (木) 23:00

» 映画:ジェネラルルージュの凱旋 [よしなしごと]
 今年20作品目は、ジェネラル・ルージュの凱旋を観てきました。 [続きを読む]

受信: 2009年4月 4日 (土) 09:43

» 白鳥・田口コンビ■このキャスティングではどうだ! [映画と出会う・世界が変わる]
「白鳥・田口コンビシリーズ」のキャスティングについては3名の方からコメントをいただきました。このコンビを勝手にキャスティングというのはなかなか面白いと思いますので、ちょっとやってみましょう。田口を女性にした場合、田口公子には藤山直美ではどうでしょうか?...... [続きを読む]

受信: 2009年4月 7日 (火) 10:21

» ジェネラル・ルージュの凱旋 [活動写真放浪家人生]
 <シネプレックス小倉>  まあ、悪くはなかったが、2時間ドラマをちょっと大げさにした程度の「チーム [続きを読む]

受信: 2009年5月12日 (火) 02:26

» 当館3周年&ジェネラル・ルージュ(152作目) [別館ヒガシ日記]
ジェネラル・ルージュの凱旋は映画専門Ch鑑賞し 結論は前作であるバチスタよりも凄く満 [続きを読む]

受信: 2010年4月 1日 (木) 11:07

» 【これは、小説の中だけの話だろうか】ジェネラル・ルージュの凱旋 [ぱふぅ家のサイバー小物]
俺を裁くことができるのは、俺の目の前に横たわる、患者という現実だけだ。 [続きを読む]

受信: 2010年10月21日 (木) 19:40

« 「パッセンジャーズ」 | トップページ | テレビ「相棒 -シーズン7-」最終回 »