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2009年4月19日 (日)

「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」

Kanshikiyonezawa (2009年・東映/監督:長谷部 安春)

昨年大ヒットした「相棒 -劇場版-」のスピンオフ企画。シリーズのサブキャラクター・鑑識課の米沢守(六角精児)を主人公にして2匹目のドジョウを狙う。

 
テレビで長期人気ヒット・シリーズとなった「相棒」にあやかりたいのは分かるが、まとめると、2つの点で問題がある。

まず、スピンオフはいいとしても、鑑識の米沢は、スピンオフ・キャラクターとしては弱いのではないか。―サブキャラの中で人気が高いのは分かるが、それと主人公の資質とは別問題である。

スピンオフものがよく作られているが、そもそもスピンオフの基本原則は、“元の作品の中で、主人公に匹敵するか、あるいは主人公を食ってしまうくらいの強烈な個性を持っているキャラクターであること”ではないかと私は思う。

最近の例を挙げると、洋画では、「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」からスピンオフしたザ・ロック主演の「スコーピオン・キング」や、「バットマン」シリーズからのスピンオフ「キャット・ウーマン」が有名だし、日本では「デス・ノート」の副主人公・(エル)を主人公とした「L Change the WorLd」がある。

いずれも、副主人公ながら個性豊かで、Lなんか完全に主役の夜神月を食っていた。スピンオフ作品が登場したのも当然のような気がする(この点は「デス・ノート」公開時に作品評で指摘済)。

他にも、「踊る大捜査線」から「交渉人 真下正義」「容疑者 室井慎次」の2本のスピンオフが作られたが、主人公を食うほどのキャラではない。まあギリギリセーフといった所か。

そうした過去のスピンオフ・キャラクターに比べて、米沢守はいかにも線が細い(体は太いが(笑))。本編では毎回ほんの数カット登場するだけで、特に目立っているわけでもない。副主人公ですらなく、単なる脇役
こういうキャラクターを主人公にするのは、ちょっと無理があるのではないか。―これが第1の難点。

 
2番目に、映画にするなら、テレビとは違ったスケール感や、構成や骨組みのしっかりした作り、あるいは、豪華スターのゲスト共演等(テレビでも、往年の大女優・岸恵子がゲスト出演した回はさすがに風格があって堪能できた)…要するに1,800円の金を払っても損しなかったと感じる、中味の充実感が必要である。これが、タダで見るテレビと、足を運んで金を払う映画との違いである。

昨年の「相棒 -劇場版-」は、3万人が走る東京ビッグシティマラソンをクライマックスにしたり、派手な爆破シーンがある等、内容はともかく、映画らしいスケール感は出ていた。

本作は、そうした映画らしいスケール、緻密なストーリー展開もない。ゲスト俳優も市川染五郎程度では豪華とは言えない。

これでは、テレビの2時間スペシャル版並みだ。いや、テレビ・スペシャル版だってもっとマシな作品は多い。今年の元旦の、豪華客船を舞台としたスペシャル版の方が、本作よりずっとスケール感があって楽しめた。

お話の展開も、元妻が殺されたらしいとは言え、相原刑事(萩原聖人)の暴走にはイライラさせられるし、れっきとした犯罪である家宅侵入までやらかすのは行き過ぎ。それを止めずに、一緒に加担する米沢の行動も疑問。

で、ラストの解決も、偶然に頼り過ぎ(フェイントに引っかからなかったらアウトでしょう)。「相棒」シリーズのポイントである、杉下右京お得意の鋭い観察眼や見事な推理展開もなく、行き当たりばったり感が強いのはなんともガッカリである。せめて、米沢お得意の鑑識技術で動かぬ証拠を突きつけ、右京ばりに鮮やかに事件を解明したなら納得なのだが…。

「相棒」シリーズらしいのは、警察の天下り組織の税金無駄遣いぶりへの批判と、意外な犯人像くらいである。

まあ見どころを挙げるなら、米沢の知られざる私生活がいろいろ登場した点は楽しい。街頭ライブが趣味とは思わなかった。特にレパートリーに、高田渡の曲があったのにはニンマリ。自宅室内のおタクぶりも笑えた(これでは嫁さんに逃げられるなぁ(笑))。

そんなわけで、「相棒」シリーズ・ファンで、米沢守ファンならそこそこ楽しめるが、映画ファンには物足りない出来。DVDかテレビ放映待ちで充分である。

次回映画にするなら、杉下右京主演の本編で、かつじっくり脚本を練って、往年の映画スターもゲストに呼んで、映画らしい華やかさと豪華さと、犯人の巧妙で緻密な完全犯罪と、それを鮮やかな推理で解明する右京の活躍ぶり…を見たいものである。    (採点=★★

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コメント

ハイ、高田渡さんの歌のくだりは、とてもいい味出ていました

投稿: omiko | 2009年4月20日 (月) 15:42

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