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2009年6月 4日 (木)

「ラスト・ブラッド」

Lastblood1 (2009年・仏=香港/監督:クリス・ナオン)

2000年に発表された、日本製フルデジタル・アニメ「BLOOD The Last Vampire」の実写版リメイク(本作の原題も「BLOOD The Last Vampire」)
「グリーン・ディスティニー」「HERO」等の世界的ヒット作で知られる香港の名プロデューサー、ビル・コンが製作に当り、「キス・オブ・ザ・ドラゴン」のクリス・ナオンが監督した。

オリジナル版のアニメ製作は、「攻殻機動隊 Ghost in the Shell」などで知られるプロダクションI.Gが当り、同作の監督・押井守が企画協力として参加。監督は「老人Z」など、パワフルなアニメで評価の高い北久保弘之が担当。

わずか48分の中篇ながら、密度の濃い、ハイテンションのアクション描写が日本より海外で絶賛され、ジェームズ・キャメロン、Q・タランティーノ、ウォシャウスキー兄弟などが熱い賛辞を寄せ、タランティーノはこれを見て、「キル・ビル」のアニメ・パートを、プロダクションI.Gに依頼したくらいである(日本刀を持った少女がバッサバッサ斬りまくる…というコンセプト自体、「キル・ビル」に多大な影響を与えているのではないか)。

なお同作は、いわゆるB級ホラー・アクションでありながら、2000年度の文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第55回毎日映画コンクール大藤信郎賞など、多くの権威ある賞を受賞している。いかに作品のクオリティが高かったかが分かる。(当時私が書いた批評はこちらを参照)

評判の高さから、後にはこの劇場版を元に、「BLOOD+」のタイトルでテレビ・アニメとしても製作され、こちらも評判となった。

 
さて、こうした人気の高さから、実写版の製作も以前から待ち望まれていたので、本作の公開は私も楽しみにしていた。が…

Blood2 前半、地下鉄内のヴァンパイア狩りから、アメリカ軍基地内での大バトルまでは、アニメ版と衣装はおろか、カメラアングル、カット割りまでほとんどそっくり。この前半パートはアクションに次ぐアクションで、主人公のサヤ(チョン・ジヒョン)は屋根の上を走るわ、壁はぶち破るわ(笑)の人間離れした大活躍を見せ、ツッ込みどころはあるものの、まずまず楽しめる。アクション演出を担当したのが、「キス・オブ・ザ・ドラゴン」「レッドクリフ」のコーリー・ユンだと聞いて納得。

アニメでは横田基地(本作では関東基地)での翼を持ったヴァンパイアを倒す所で終わっていたので、以降はアニメにはないオリジナル・ストーリー。

が、この追加部分があんまり面白くない。前半の悪ノリ気味の大バトルが、オリジナルよりもマンガチックで、そのムチャクチャぶりが楽しめたのに、後半になると、ぐっとテンションが下がってしまうのだ。

無論、久しぶりの倉田保昭扮するカトウとヴァンパイアとの対決など、それなりの見せ場はあるのだが、前半に比べて、アクションの質がガラリと変わってしまう。言うなれば、前半が火傷しそうなほどホットで破天荒なのに、後半はぐっとクールでスタイリッシュなのだ。
まるで、別の作品を観ているようである。

そして、ラストの最大の敵、オニゲン(小雪)との対決シーンは、なんともしまらない。小雪がアクションが出来ないのが致命的。このラスト対決にこそ、前半をさらに上回るぶっ飛んだ、パワフルなアクションを見せるべきであったのだ。サヤを演じるのが韓国のジヒョンだから、相手役に知名度のある日本人スターをと思ったのかも知れないが、アクションの出来る日本人女優がほとんどいないだけに、ここは香港俳優でもいいからアクションの出来る俳優を使うべきだった(対抗出来るのは、「SAYURI」にも出てたミシェル・ヨーくらいか。個人的には、志穂美悦子の復活を希望したいのだが…)。

そもそも、敵はヴァンパイア=吸血鬼のはずなのに、なんで“オニ”と呼んでいるのか解せない。オニとヴァンパイアは違うでしょうが。さらにカトウとの対決シーンでは、オニたちがなんと忍者装束である。カトウ対オニ軍団との決戦シーンは、ほとんどショー・コスギ主演の“忍者アクション”である。…冒頭では新宿から“富士山”が見えていたし、「007は二度死ぬ」しかり、「ラスト・サムライ」しかり(こちらも小雪が出演)、外国人監督が作る、日本が舞台のアクションは、“忍者”を出すのがお約束みたいになってしまっているのはなんとも困ったものである。オリジナルのアニメ版が持っていた、ヴァンパイアどもをバッサバッサ斬りまくる痛快ハイテンション・アクション・エンタティンメントの輝きは薄れてしまっている。何故アニメ版が舞台を米軍基地にしたのかが、この映画を作った人たちは解っていないようである。

倉田保昭のアクション・シーンは、そこだけ見れば見応えがあり、かつてのカンフー映画ブームの'70年代、香港と日本を又にかけて活躍していた頃の倉田を知っている世代にとっては懐かしさもひとしおなのだが、それはまた別の作品で見たかった所である。

イチャモンついでに、チョン・ジヒョンのアクション・シーンで、セーラー服のスカートがめくれた時に、黒いショートパンツらしきものが見えるのにはゲッソリ。いや、パンツが見たいわけじゃありません(笑)。「愛のむきだし」の満島ひかりの見事なパンチラ・アクションに感動した後だけに、どうせ見せるならあそこくらいまでやって欲しいし、見せないなら、見えそうで見えない撮り方にすべきだった。

というわけで、前半は良かっただけに、後半の尻すぼみが残念な出来と言えよう。アニメ版に感動した人には、あまりお奨めはいたしません。     (採点=★★☆

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(さて、お楽しみはココからだ)

昨年の「片腕マシンガール」、今年の「愛のむきだし」に本作と、このところ“セーラー服姿のヒロインが大暴れするアクション映画”が続いている。

その源流をたどれば、'80年代にテレビ・映画で大ヒットした、「スケバン刑事」―という事になるだろう。

セーラー服姿の女子高校生が、特命刑事となって大活躍する…という、まあ荒唐無稽なお話なのだが、これがヒットして、主演の斉藤由貴、南野陽子をスターダムにのし上げ、勢いを駆ってパート3まで作られたのだが、浅香唯が主演するパート3のサブタイトルはなんと「少女忍法帖伝奇」!。セーラー服姿のスケバン刑事は、なんとまあ忍者の末裔だというわけで、敵もまた忍者!さらに後半に至っては、魔界を舞台に!ダースベイダーそっくりの悪役(これが実は唯の父親だったりする)に、シスの暗黒卿そっくりのラスボスまで登場するという、完全な「スター・ウォーズ」のパロディになっていた(笑)。

刑事の話はどこへ行った(笑)…とツッ込みたいところだが、とにかく勢いがあって、めったにドラマは見ない私もこれは楽しませてもらった。

で、“セーラー服の美少女対、忍者軍団との激闘”というコンセプトが本作と共通する所があり、伝奇的要素も含めて、案外本作の作者はこれを参考にしたのではないか…と勝手に想像したりする。

ちなみに同時期、同じフジテレビで放映していた人気アニメ「うる星やつら」の主人公・ラムちゃんもやはりセーラー服姿で、こちらは普段はトラ皮のビキニを着てツノを生やしている、いわゆるオニ娘である。

つまりは、どちらも“セーラー服の美少女が活躍するアクション”で、しかも片や忍者に、片やオニである。…本作「ラスト・ブラッド」の後半、オリジナルで追加されたエピソード部分に、両方の要素が含まれているのは、偶然にしても興味深い。

…と言うよりは、アニメの「BLOOD The Last Vampire」自身が、これらセーラー服アクションにインスパイアされて作られた、と見る方がむしろ正しいのかも知れない。

なにしろ、「BLOOD-」の企画協力者・押井守は、くだんの「うる星やつら」のチーフ・ディレクターだった人である(押井が監督した劇場版「うる星やつら/オンリー・ユー」にも「スター・ウォーズ」のパロディがてんこ盛りである)。参考にした事は大いに考えられる。

ちなみに、テレビの「スケバン刑事」と「うる星やつら」を企画したプロデューサーは、実はどちらも、岡正という同一人物である。これもまた興味深い事実である。 

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