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2009年8月18日 (火)

「扉をたたく人」

Visitor (2007年・米/監督:トム・マッカーシー)

妻を亡くして以来、心を閉ざして生きてきた老大学教授が、たまたま知り合った移民青年と知り合い、その交流を通して、新しい生き方を模索して行く感動の人間ドラマ。
主人公の大学教授を演じたリチャード・ジェンキンスはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
なお当初は、アメリカでたった4館でしか公開されなかったが、クチコミで評判となり、公開6週目には全米興行収入トップ10にランクイン。最終的には270もの劇場で上映され、6か月間のロングランヒットとなったという。

監督のトム・マッカーシーも、主演のリチャード・ジェンキンスも私はほとんど知らなかったし、あまり話題にもならず、細々と公開されていたが、上記のようなニュースを聞いていたので気になって観に行ったのだが…。

素晴らしかった。観ている時よりも、観終わってしばらくしてから感動が広がって来る秀作である。本年度のベスト上位に入れたい。

大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、妻にに先立たれてからは無気力になり、講義計画書も前年のものを、年度だけ書き換えて使うありさま。そんな彼が、出張先のニューヨークに借りていた別宅を訪れると、見知らぬ移民のカップルがいた。シリアから移住してきたジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と、彼の恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)の二人。騙されて二重契約であった事が分かり、二人は出て行こうとするが、気の毒に思ったウォルターは、新しい住居が見つかるまで住まわせる事にする。奇妙な3人の同居生活が始まり、ウォルターは次第に彼らに心を開いて行くが、ある日、タレクは不法滞在が判明して強制収容所に留置されてしまう…。

タレクは、ジャンベ(民族打楽器)の叩き方をウォルターに教え、生きる気力を失っていた彼に、生きる活力を取り戻させて行く。

だが、9.11以降、不法滞在者に厳しい目を向けるようになったニューヨークの街は、そんな若者をも法律で縛り、この街から追い出そうとする。不法滞在と言っても、彼の母親(ヒアム・アッバス)がちょっと手続きを怠っただけなのに…。

ウォルターは、杓子定規な移民局の仕打ちに激しく怒る。無気力に生きて来た彼が、初めてアクティブな意志を示した瞬間である。

ウォルターは、心配になってニューヨークにやって来たタレクの母にも力を貸し、やがて二人の間に心の交流が育まれて行く。が、法律は非情に母と子を引き裂いて行く…。

この映画には、悪人は登場しない。役人たちは職務に忠実で、主人公たちは誰もが心優しく、それぞれに精一杯に生きている。…それにもかかわらず、悲劇は起きてしまう。

生きることはせつない。ウォルターのように、生活には困らないのに、伴侶を失ったりで、生きる意欲を失ってしまった人もいれば、差別、貧困、国籍等の壁にぶち当り、生きる事に絶望する人もいる。

それでも、人は生きて行かなければならない。

Visitor2 結末は悲劇だが、ウォルターは、タレクと出会う事によって、閉ざしていた心を開き、残された人生をどう生きて行くべきかを見つける事が出来た。ラスト、駅のホームで、タレクに教わったジャンベを叩くウォルターの姿に、観客は暗い物語にわずかな光明を見る事が出来る。

 
現代が抱える、様々な社会問題をバックに、人との触れ合い、生きるとは何か、という普遍的なテーマを問い詰めた、これは感動の力作である。

邦題がとてもいい。原題は"The Visitor"=訪問者 とシンプルなのだが、“扉をたたく”という事は、自分から行動するニュアンスも含まれる。ウォルターの、閉ざしていた心の扉が、タレクや、彼の母親などによって開かれた事をも暗示する。また、ジャンベという叩く楽器に引っかけていると見る事も出来る。うまい。優秀邦題賞があれば進呈したいくらいだ。

 
この、“妻を失った偏屈な老人が、外国から来た移民の若者と交流する事によって、自分の生き方を見直し、やがて若者を守る為に行動する”という展開は、先頃公開されたクリント・イーストウッドの傑作「グラン・トリノ」とよく似ている。ただし、映画が製作されたのは、本作の方が早い(2007年製作)。似ているのは単に偶然だろう。

しかし、これらといい、ジャック・ニコルソン主演の「最高の人生の見つけ方」といい、老人の生き方を見つめ直すというテーマの作品が、最近(特にアメリカ映画に)増えて来たように思えるが、これはアメリカ映画の一つの成熟なのかも知れない。興味深い傾向である。     (採点=★★★★☆

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予告編には大勢で楽しそうにパーカッションを演奏しているシーンがあって、音楽によって人々の心を繋いでいくヒューマンドラマという印象を受けたのですが、もちろんその奥にはもっと深いドラマが待っているのではないかと何気に楽しみにしてまぢた。鑑賞前に気になってちょ....... [続きを読む]

受信: 2009年8月18日 (火) 07:45

» 扉をたたく人 / THE VISITOR [我想一個人映画美的女人blog]
{/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/} ←please click 2007年の作品だけど 2009年アカデミー賞主演男優賞ノミネート、 2009年インディペンデント・スピリット・アワードで最優秀監督賞受賞の作品、日本上陸。 27日公開☆試写で観てきました〜。 今年に入って「ブロークン」「バーンアフター・リーディング」「俺たちステップブラザーズ-義兄弟-」など出演作が立て続けに公開... [続きを読む]

受信: 2009年8月18日 (火) 10:25

» 『扉をたたく人』 [ラムの大通り]
(原題:The Visitor) ----これも2009年アカデミー賞絡みの映画。 リチャード・ジェンキンスが主演男優賞にノミネートなんでしょ。 この人、顔はよく見るけど、 あまり知らなかったニャあ。 「うん。でもだからこそ、 監督は彼を選んだらしいよ。 いかにもスター然としていないところがいいんだろうね。 日本で言ったら誰だろう? 有名になる前の笹野高史あたりかなあ。 しかし、これはほんとうに彼の演技で観る映画だね。 結論から言っちゃうけど、 静かに静かに感情を秘め、 それが爆発するクライマッ... [続きを読む]

受信: 2009年8月18日 (火) 10:28

» 扉をたたく人◇◆the Visitor [銅版画制作の日々]
8月22日から、京都シネマにて公開されました! 最近こういうかたちでのヒットが多いですね。本国アメリカでの封切時の上映館はわずか4館だったそうです。鑑賞した人たちの感動が口コミで広がり、何と最終的に270館に拡大したという本作。観ないわけにはいきませんよね。ということで、早速観てきました。 主役を演じるのはこれまで脇役として多くの作品に出演してきたリチャード・ジェンキンス。そう言えば、最近観たコーエン兄弟監督作品「バーンアフターリーディング」ではリンダの上司テッド役で登場していた方。思いだしまし... [続きを読む]

受信: 2009年8月26日 (水) 09:25

» 『扉をたたく人』 The Visitor [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY]
ジャンベのリズムが生きる鼓動となるのだ。 妻と死に別れて以来無気力に暮らしていたコネチカットに住む大学教授のウォルターは、出張でニューヨークを訪れた際、マンハッタンにある自分のアパートで見知らぬ若いカップルに遭遇する。『The Visitor』というタイトルからして惹かれるものがあった。以前から恵比寿ガーデンシネマのロビーに貼ってあったその海外版のポスターがとてもいい感じだったので心待ちにしていた一作。もともと、異なる人種・異なる境遇を生きる人と人がひょうんなことで出逢い、交流するドラマという... [続きを読む]

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あらすじ愛する妻に先立たれ、全てに心を閉ざし、無気力な毎日を送っている大学教授のウォルター(R・ジェンキンス)。ある日、ニューヨークで移民青年タレクと予期せぬ出会いを果たす... [続きを読む]

受信: 2010年5月28日 (金) 22:57

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