追悼 大原麗子さん
私は、あんまり熱烈なファンではありませんでしたが、私の好きな2本の作品で印象的な好演をしておられましたので、追悼記事を書かせていただきます。
その2本とは、降旗康男監督「居酒屋兆治」と、山田洋次監督「男はつらいよ・寅次郎真実一路」。
寅さんシリーズには、他に「噂の寅次郎」にも出ていますが、「真実一路」の方が出来はいいですね。
で、共通するのは、“儚げでどこか不幸を背負った、清楚な人妻”というイメージです。
「寅次郎真実一路」では、夫に蒸発され、どうしていいか途方に暮れる人妻を演じています。
夫を探して、旅館に二人で泊まった時、泣き崩れる人妻に、寅さんは危うく手を出しそうになり、悶々とします。普通なら不倫のケースです(笑)。
大原さんは、この難しい役柄にピッタリでした。
「居酒屋兆治」では、兆治(高倉健)の初恋の相手で、結婚しても兆治の事が忘れられず、嫁ぎ先の農場が火事になって情緒不安定になり、ストーカーのように兆治に恨み言をぶつけます。「栄治さん(兆治の本名)、あなたが悪いのよ」というセリフはCMでもよく流れました。
こちらも難しい役柄です。間違えればすごくイヤな女になってしまう所ですが、儚げで不幸を背負っている大原さんのイメージの御蔭で、彼女の悲しみがこちらにも伝わって来ました。
映画ではこれら以外には、市川崑監督の「獄門島」を除いては、あまり印象に残った作品はありません。テレビには多く出ているようですが、私はあまりテレビドラマを見ないのでほとんど分かりません。
しかし、テレビで言えば、やはりサントリー・レッドのCM、これが鮮明に記憶に残っています。
これを演出したのが、故・市川崑監督でした。
古い日本家屋をうまく使った、崑さん独特のスタイリッシュな演出で強い印象を残しました。
昨年、市川崑監督が亡くなられた時も、このCMの映像が何度か流れましたが、今回もまたよく流れています。
まさか2年連続して追悼記事で使われるとは、思いもよりませんでしたね。
(参考で、大原麗子サントリーCM集を ↓)
http://www.youtube.com/watch?v=f2MsT_KHJ0M&feature=related
赤いたすきが黒いバックにシュッと飛ぶシーンは、まさに崑タッチですね。
年をとって、円熟味を増しかけた頃に、ギラン・バレー症候群という難病で、1992年以降は一線を退いてしまい、そして誰にも看取られない孤独な死…。
まさに、儚げで、不幸な運命に弄ばれる…という彼女のスクリーン・イメージそのままの悲しい最期でした。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
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コメント
書き込み有難う御座いました。(レスは当該記事のコメント欄に付けさせて貰いました。)
大原麗子さん、あれだけの女優が人知れず亡くなっていた、それも2週間近くも見付からずに・・・というのが、何とも言えない哀しみと寂しさを感じました。行政解剖が行われ、その結果「亡くなられたのは8月3日で、発見される迄3日経っていた。」事が判明したとか。2週間よりは短かったのが救いでは在りましたが、それにしても哀しい話です。
あのCMのフレーズ、非常にインパクトが在りましたね。最近では奇を衒ったフレーズのCMが少なくない中、シンプルなんだけど強烈なインパクトを与えてくれる秀逸なフレーズ。綺麗な映像も相まって、素晴らしいCMの一つと言って良いでしょう。
合掌。
投稿: giants-55 | 2009年8月 9日 (日) 03:43