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2009年11月11日 (水)

「ロボゲイシャ」

Robogeisha1  

(2009年・角川映画/監督:井口 昇)

海外で製作したスプラッター・アクション「片腕マシンガール」が逆輸入され、予想外のヒットとなった井口昇監督が、今度は日本国内で監督した、これまたギャグと脱力パロディ満載のSFアクション。

芸者の姉、菊奴(長谷川瞳)に蔑まれ、付き人として惨めな人生を送っていたヨシエ(木口亜矢)が、その潜在能力を謎の製鉄会社の御曹司ヒカル(斎藤工)に見込まれ、姉と共に芸者姿の暗殺マシンとして育成されるが、日本征服を企むヒカルたち悪の組織の正体を知ったヨシエは彼らに敢然と戦いを挑む…。

前作は、海外のオタク向けに、シ、テンプラ、ヤクザ、ニンジャ、等のレトロ的日本趣味を網羅していたが、本作も出てくる出てくる、ゲイシャ、フジヤマ、サムライ、ハラキリ、天狗、セーラー服、チャンバラ、巨大ロボット…と、こちらもガイジン好みの日本的要素をゴッタ煮でぶち込んだ、楽しい快作に仕上げている。公式HPに解説文を寄せている江戸木純氏に言わせると、「戦略的国辱映画にして究極のジャパン・エクスプロテイション・ムービー」という事なのである。

Robogeisha2 前作同様、SFXはチープだし、冒頭の掴みエピソードは本筋と全然リンクしてないし、アクションもゆるいし、“ロボゲイシャ”といいながら、ヨシエの体は単に部分改造を施したサイボーグに過ぎないのだが(サイボーグとタイトルにありながら実態はロボットだった「僕の彼女はサイボーグ」とは正反対(笑))、シーンによってはターミネーターを思わせる赤いセンサー主観映像があったり、ロボコップよろしくチーチーと機械音を出したりで、いつから全身がロボットになったのだ?…といった具合に、ツッ込みどころは満載である。

だが、そんなチープさも、辻褄の合わなさも、B級らしさを醸し出す為に井口監督はわざとやってるのだろう。まさに確信犯である。

むしろ、ここには、井口監督が子供の頃から見てきたであろう、ゲテモノSF、怪獣映画、戦隊もの、忍者もの、ロボット・アクション、等を含めたB級、C級アクションへの思い入れをぎっしり詰め込んで、観客と共に楽しもう、という1本芯の通ったスタンスがある。

それは、井口監督が敬愛してやまない鈴木則文監督が、'70年代に東映で量産して来た、エロ、グロ、下ネタ、パロディ、ギャグを満載したサービス精神溢れるB級アクション作品群に共通するファクターでもある(そう言えば鈴木則文さんのフィルモグラフィには「温泉スッポン芸者」などの“芸者もの”があったなあと思い出す。案外ヒントはこの辺か(笑))。

ヒカルの父親で、悪の組織のボスを怪演してるのが、懐かしや志垣太郎(「狼の紋章」他)、その一味に娘たちを拉致された家族会のリーダーの老女がこれまた懐かしい生田悦子(かつては「命果てる日まで」(66)などの松竹女性映画の可憐なヒロイン)、その家族会の一員に竹中直人!と役者が結構豪華だったりする。

美女をはべらせたり、核兵器を弄んだり、拉致家族の会が出て来たりと、明らかにこの親子、某北の独裁国家を思わせたりもするのも笑える。

ヨシエの改造された下半身が戦車となってハイウェイを疾走し、ビルの壁を垂直に走ったり、敵の城!が巨大なロボットにトランスフォームしたり(「大魔神」を思わせる)、ビキニに丸髷の美女たちが尻から刀を出したり、とまあやりたい放題。

そのB級C級活劇へのオマージュといい、下品さといかがわしさに満ちたコテコテのサービス精神といい、井口監督は日本のクエンティン・タランティーノを目指している、と言っていいかも知れない。

 
しかし、本作は単なるバカ映画に終わってはいない。全編を通して、姉と妹の憎悪と確執の愛憎劇が作品のコアとなっており、最後は果てしなき戦いの末の和解へと収斂して行く、姉妹の愛と哀しみのドラマにもなっている。

その物語は、あたかも、鈴木則文監督の直弟子である関本郁夫監督による、やはり姉妹の愛憎劇の傑作「天使の欲望」(79)を彷彿とさせたりもするのである…と書けばちょいとほめ過ぎか(笑)。

 
とにかく、これは楽しんだもの勝ちである。人によってはバカバカしさについて行けない方もいるかも知れないが、こういうのはタラちゃんのグラインドハウスものと同様、ガハハハと笑いながら突っ込んで、お祭り騒ぎで楽しめばいいのである。そうした楽しみ方の出来る映画ファンにはお奨めの快(怪?)作である。

ただ、海外製ゆえタブーを思いっきり無視した前作に比べると、本作は日本の製作委員会(なんと角川映画がメイン)が作ってる為か、血まみれスプラッターも、首チョンパの切り株シーンもない、比較的女性や子供でも見られる作りになっている(キャッチコピーは「ギリギリ、デートに使える映画」だそうだ(笑))。その辺りが前作のファンには、やや物足りないかも知れない。    (採点=★★★★) 

 
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(付記)
関西では、天六のホクテンザ2のみでの上映。ここは今年は「鎧 サムライゾンビ」を上映したりと、本作の雰囲気にピッタリの劇場。また公式ブログ等では、同劇場の絵看板が写真入りで紹介されたりと、結構人気のある劇場である。まだ行った事のない方は、話のネタに一度見に行ってあげてください。客が少ないのによく頑張ってます。

(追記)
その後ホクテンザは2010年に閉館され、同館が入ってた天六ユウラク座ビルも2012年閉館され、公式ブログも削除されました。
なお上記記事にある劇場絵看板の映像は、当ブログの天六ユウラク座閉館記事の最後の方で見る事が出来ますので、興味ある方は覗いてください。

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コメント

兄と妹が、再会して殺しあい、「せっかく会えたのに」と言うところは、爆笑しました。

投稿: N | 2016年7月26日 (火) 09:07

◆Nさん
“兄”ではなく“姉”じゃなかったですかね。まあ7年前に見た映画なのでほとんど忘れてて記憶はあいまいですが。

投稿: Kei(管理人) | 2016年7月31日 (日) 22:57

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