« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »

2009年12月31日 (木)

私が選ぶ '00年代ベストテン

今年もあと少しで終わりですね。

恒例の、2009年度マイ・ベストテンを発表しようと思ったのですが、
いつも覗いてる Studio Yunfatさんの所で、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」をブロガーに呼びかけて募集しているのを見つけて、
そういえば、今年はゼロ年代の最後の年でもありましたね。たしか「映画秘宝」でもゼロ年代ベストテンを発表しておりました。

そんなわけで、ゼロ年代最後の年にふさわしく、私が選んだ、00年代ベストテンを発表いたします。
かなり悩みましたが…

[日本映画・00年代ベストテン]
おくりびと
たそがれ清兵衛
愛のむきだし
フラガール

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦
ALWAYS 三丁目の夕日
パッチギ!
ゆれる
GO
次点 千と千尋の神隠し

[外国映画・00年代ベストテン]
グラン・トリノ
ミリオンダラー・ベイビー
硫黄島からの手紙
父親たちの星条旗
スペース・カウボーイ
母なる証明
殺人の追憶
グエムル -漢口の怪物‐
善き人のためのソナタ
チェンジリング
次点 少林サッカー

日本映画は順当な所でしょうが、
外国映画に関しては、なんじゃこりゃ…と思った方もいるやも知れませんが、
00年代とは、まさにクリント・イーストウッドの10年、であったというのが私の結論であります。

とにかく、キネ旬ベストテンを眺めても、
2000年ベストワン「スペース・カウボーイ」
2004年ベストワン「ミスティック・リバー」
2005年ベストワン「ミリオンダラー・ベイビー」
2006年ベストワン「父親たちの星条旗」
同年ベスト2位「硫黄島からの手紙」

とまあベストワンになること4回!これに恐らく100%間違いなく、2009年度ベストワンは「グラン・トリノ」が獲得するでしょうから、
この10年のベストワンの、なんと半分をイーストウッド一人で独占する事になるわけです。驚異的な記録です(しかも70才を超えたジイサマですよ!カールじいさん以上のスーパーパワーです(笑))。

これらの他にも、「ブラッド・ワーク」(2002)もあるし、公開は来年になりましたが、2009年度製作の「インビクタス/負けざる者たち」も含めれば、10年間に9本も映画を監督して、凡打が1本もない、打率9割、長打率30割(ベストワンをホームランとみなして)に匹敵する、まさに夢のようなスーパーマンぶりを発揮していると言えます。
00年代=イーストウッドの10年、という形容も誇張ではない事がお分かりいただけると思います。

マイ・ベストテンの残りの4本のうち、3本をポン・ジュノ監督作品が占めてしまいましたが、彼もイーストウッドに負けず劣らず凄い。

2004年ベスト2位「殺人の追憶」
2006年ベスト3位「グエムル -漢口の怪物‐」

そして恐らく「母なる証明」は予想では2009年度キネ旬ベスト2位あたりに来るでしょう。

つまり、どれもイーストウッド作品がなかったら、すべてベストワンに選ばれていた(2009年は予想)わけです。

なんとも不運な人ですねぇ(笑)。こんなに運の悪い監督も珍しい。

 
そんなわけで、総括するなら、00年代の外国映画は、まさしくC・イーストウッドと、ポン・ジュノが席捲した時代であった、という事になるでしょう。

こういうスーパーマン的監督が、来る2010年代には日本にも登場して欲しいものです。

 
では、1年間ありがとうございました。来年もよいお年を。 m(_ _)m

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | コメント (5) | トラックバック (1)

「アバター」

Avatar2 
(2009年・20世紀FOX/監督:ジェームズ・キャメロン)

「タイタニック」以来、12年ぶりのジェームズ・キャメロン監督によるSF超大作。

いやー、待たせてくれましたね。キャメロン監督。しかし待っただけの甲斐はある。

時は22世紀。舞台は地球から5光年の彼方にある緑の衛星パンドラ。この星の地下に眠る、莫大な価値のある鉱石“アンオブタニウム”を手に入れるため、地球人たちは鉱山の上に集落を作っている青い肌をした原住民“ナヴィ”の一族を立ち退かせようしていた。
そんな時、戦闘で下半身不随となった元海兵隊員ジェイク(サム・ワーシントン)は、死んだ双子の兄に代わり、人間とナヴィのDNAを掛け合わせて作られた“アバター”の体を遠隔操作し、ナヴィの部族に溶け込み、アンオブタニウムに関する情報を入手する使命を与えられる…

(以下ややネタバレあり)
お話の概略は、「ダンス・ウイズ・ウルブス」とよく似ている。ナヴィ一族は外見も部族習慣もネイティブ・アメリカン(インディアン)を思わせるし、白人のジェイクが、最初は地球人の使命を帯びて部族に潜入するが、次第にナヴィの暮らしに溶け込んで行き、族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)とも親しくなって行くプロセスは型通りであって特に新味はない。

やがて地球人部隊の侵攻、圧倒的な武力に敗退、そしてジェイクの協力と援軍を得て反撃に転じ、最後は大逆転勝利…と、ストーリーはこの手の娯楽アクションの王道であり、ハラハラしながらも安心して観ていられる。

ただ、アバターが、ジェイクも、以前からすんなり溶け込んでいるような科学者のグレース・オーガスティン博士(シガニー・ウィーバー)も、それぞれナヴィの半裸に近い外装と違って、ジャケットを着ているのがやや不自然。アバターのグレースは地球人と知られてて同化してるのだろうか。その辺がちょっと曖昧。

まあ、難点はそれくらい。それよりもこの映画の見どころは、何と言っても膨大な製作費をかけたビジュアルの素晴らしさである。

パンドラの地上に群生する植物、サイや始祖鳥のような不思議な生き物、それぞれがどれも地球上に存在しない独自の造形で、しかもちゃんとクライマックスで大活躍するよう、周到な布石が打たれている。

クラゲのような生き物が空中に浮遊している幻想的なシーンは特に美しい。それらがジェイクの体にまとわりつき、交信する様子は宗教的な神々しさに満ちていて感動的である。

Avatar3_2 そして圧倒的なのが、アンオブタニウムの力であろうか、巨大な岩の塊が空中に浮かんでいる、ルネ・マルグリッドの絵を思わせる、シュールで幻想的なビジュアルである。DVDを入手したら、ここの画は静止画像でじっくり眺めていたいほどである。

私は3Dで観賞したが、これらが奥行きのある立体映像で遠近感豊かに目前に展開するのだからもう興奮。この圧倒的な映像が観られるだけでも料金以上の価値はある。

「アビス」以来、「ターミネーター2」「タイタニック」と、ジェームズ・キャメロン作品は常にCG映像テクニックの先端を走っている感があるが、本作もまた時代の先端を行く見事なCG効果を発揮している。構想に14年もかけただけの成果は十二分に出ている。
(ちなみに、VFXはいつものILM、デジタル・ドメインに、さらに「ロード・オブ・ザ・リング」「キング・コング」のニュージーランドのWETAワークショップが参加している)

 
お話はパターン通りだと先述したが、その中にも、巧みにアメリカ式大国主義への痛烈な批判が組み込まれている点も見逃せない。

圧倒的な軍事力で、パンドラの地表を焼き払い、先住民族を蹴散らすシークェンスは、明らかにベトナム戦争のメタファーだろう。
あまりに酷い破壊ぶりに、部隊の中の何人かが反旗を翻す辺りも、ベトナム戦線での離脱兵の発生を思い起こさせる。
資源争奪の為の侵攻は、イラク戦争への批判も込められていると思われる。

また、開発という名の自然破壊に対する痛烈な風刺も垣間見えるし、自然と共生し、太古の楠のような巨木を崇拝するナヴィの思想には、宮崎駿作品によく見られるアニミズムからの影響も感じられる(宮崎作品の影響については後述)。

とにかく本作は、その圧倒的なCGビジュアルの美しさを何より堪能すべきである。出来れば、3D立体映像で、さらに可能ならIMAXの巨大映像で観賞するのが望ましい。立体効果により、まるでその場に居合わせているかのような錯覚さえ感じられる。まさに、観るより、体感する映画である。

本作は3D上映でも、吹替版と字幕版の2通りがあるが、私の体験からは吹替版を推奨したい。字幕は見易い事は見易いが、文字を追う為、映像を隅々まで観切れないのが困るし、また字幕の位置よりも手前に立体像が来る場合、字幕がその中にめり込んでいるように見えて違和感ありまくりである。素晴らしいビジュアルを目に焼き付ける為にも、字幕のない映像を観賞する事をお奨めする。

 
映像技術の発展は、例えば70mm大画面は「アラビアのロレンス」(デヴィッド・リーン監督)が、シネラマは「2001年宇宙の旅」(スタンリー・キューブリック監督)が、それぞれ、見世物から真の映画芸術への発展への第1歩となったとされているが、本作はその意味でも、3D映画における真の映画の第1歩と言えるのではないか。映画ファンなら、何を置いても体感せよ。    (採点=★★★★★

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

 
(で、お楽しみはココからだ)

キャメロン監督は自ら、宮崎駿の信奉者と公言しているようだが、なるほど、本作にも宮崎アニメからの影響がいくつか見受けられる。

空中に浮かぶ巨大岩石の映像は「天空の城ラピュタ」を思わせるし、宙空に浮かぶ動力となるアンオブタニウムは、「ラピュタ」の飛行石だろう。

原住民ナヴィが太古の森の中の植物と交流し、崇拝する辺りは「風の谷のナウシカ」または「もののけ姫」だろう。巨大なホームツリーは、「となりのトトロ」に登場するトトロの住み家、楠の巨木を思わせる。浮遊する白い胞子のような生き物は、「もののけ姫」のコダマとススワタリの合体のようである。

大きな、バンシーと呼ばれる鳥にまたがり、空中を飛翔するシーンは、メーヴェを操り空中を飛ぶナウシカを思わせる。異形の生き物と心を通わせる展開も「ナウシカ」である。

実はキャメロン監督作品には、これ以前の作品にも、宮崎アニメを参考にしたシーンがいくつか見られる。どうやらかなり昔からの宮崎ファンであると思しい。

例えば、「トゥルー・ライズ」における、シュワルツェネッガーがヘリコプターからぶら下がり、暴走する車から間一髪愛妻をキャッチして助けるというくだりが、「天空の城ラピュタ」の、パズーがフラップターにぶら下がり、シータをキャッチして助けるシーンによく似ている。

「タイタニック」では、手錠につながれてあわやおぼれそうになるジャックを、ローズが斧を振るって救出するシーンが、「未来少年コナン」における、手錠が引っかかっておぼれそうになったコナンをラナが必死で救出しようとするシーンをいやでも思い起こさせる。

その他、「アビス」に登場するラスト間際の大津波(当初劇場版にはないが、後の完全版に登場)は、「未来少年コナン」の大津波を思わせる。

「ターミネーター」の、“核戦争で荒廃した地球”という設定も、宮崎作品では「コナン」、「ナウシカ」とお馴染みのシチュエーションではなかったか。
…うーむ、ほとんどのキャメロン作品に、何がしかの影響は与えているのかも知れない。

| | コメント (4) | トラックバック (31)

2009年12月30日 (水)

タイトル・インデックス(ア~ナ行)

*50音順タイトル・インデックスを作りました。

ア行  カ行  サ行  タ行  ナ行  ハ行  マ行  ヤ行  ラ・ワ行

 

  ア 行 

アース
アーティスト
愛、アムール
アイ・アム・レジェンド
アイアン・フィスト
あいときぼうのまち
愛と誠         (2012)
愛のむきだし 
相棒-劇場版-絶体絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン
相棒シリーズ X DAY
アウトレイジ
アウトレイジ ビヨンド
青いソラ白い雲
青い芽 (1956)
アキレスと亀
アクト・オブ・キリング
悪党に粛清を
悪人
悪の階段  (1965)
悪魔は誰だ
アクロス・ザ・ユニバース
アゲイン 28年目の甲子園
アジアの純真
明日の記憶
明日への遺言 
アジャストメント
アジョシ 
アズミ・ハルコは行方不明
あぜ道のダンディ
アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー
新しい人生のはじめかた
新しき世界
あなたへ
アバター 
アマルフィ 女神の報酬 
アメリカン・スナイパー
ありがとう、トニ・エルドマン         New
アリス・イン・ワンダーランド
アリス・クリードの失踪
歩いても 歩いても
あるいは裏切りという名の犬
アルゴ
あん
アンコール!!
アンジェラ
アンノウン

イーグル・アイ
硫黄島からの手紙 
怒り
息もできない
板尾創路の脱獄王
ICHI
一命  (2D) 
犬神家の一族  (2006)
祖谷物語 -おくのひと-
インサイド・マン
 
イン・ザ・ヒーロー
インターステラー
インディージョーンズ クリスタル・スカルの王国 
インビクタス/負けざる者たち 
インベージョン
 
 

ウエスト・サイド物語 (午前十時の映画祭)
WALL・E/ウォーリー
ウォーリアー  (2011) (DVD)
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!

太秦ライムライト
うた魂♪
 
宇宙人ポール
「UDON」
海辺のリア              New
ウルトラミラクルラブストーリー
運命じゃない人 (ビデオ)
 
映画クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ、アッパレ!戦国大合戦
映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃
映画 ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム
映画「立候補」
英国王のスピーチ
エール!
エクスクロス 魔境伝説

M:I:III
L.A.ギャング ストーリー
L change the WorLd 
 
黄金のアデーレ 名画の帰還
おおかみこどもの雨と雪

大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇
オーケストラ!
大鹿村騒動記
オース!バタヤン
丘を越えて
オカンの嫁入り 
沖縄 うりずんの雨
おくりびと
オズ はじまりの戦い
おとうと    (2010)
おみおくりの作法
思い出のマーニー
オリヲン座からの招待状 
ALWAYS 続・三丁目の夕日

ALWAYS 三丁目の夕日'64
俺は、君のためにこそ死ににいく

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

  カ 行

                       

母べえ 
カーズ 
カーズ2
カーズ/クロスロード           New
カールじいさんの空飛ぶ家
海炭市叙景
カウボーイ&エイリアン
隠し砦の三悪人 The Last Princess (2008)
崖の上のポニョ
風立ちぬ   (2013)
家族はつらいよ
家族はつらいよ2              New
片腕マシンガール
ガチ☆ボーイ
葛城事件
河童のクゥと夏休み
カティンの森
哀しき獣
悲しき天使 
KANO 1931海の向こうの甲子園
彼女が消えた浜辺
神々のたそがれ
神様のカルテ
カメレオン
カラフル  (2010)
借りぐらしのアリエッティ
華麗なるアリバイ

歓喜の歌  
鑑識・米沢守の事件簿
感染列島

鑑定士と顔のない依頼人
監督・ばんざい!

 

危険な英雄 (1957)
キック・アス
キック・アス ジャスティス・フォーエバー
キサラギ
岸辺の旅
奇跡    (2011)
キセキ あの日のソビト
キツツキと雨
君の名は。 (2016)
きみはいい子
キャタピラー
彼奴を逃すな (1956)
ギャラクシー街道
凶悪
嫌われ松子の一生
キリングゲーム
キングコング:髑髏島の巨神
 
喰女 クイメ
空気人形
苦役列車
グエムル 漢江の怪物
グォさんの仮装大賞
愚行録
くちづけ (1955・鈴木英夫監督)
グッドナイト&グッドラック

クヒオ大佐
暗いところで待ち合わせ

クラウド アトラス
グラン・トリノ
クリムゾン・ピーク
グレートウォール
クローバーフィールド HAKAISHA
クロワッサンで朝食を
群盗
 
K-20 怪人二十面相・伝
激戦 ハート・オブ・ファイト
結婚しようよ
結婚哲学
    (1924)
ゲド戦記 
ケンとカズ
ゴースト・イン・ザ・シェル
ゴーストライダー
コーマン帝国
ゴーン・ガール
恋の罪
恋人たち  (2015)
荒野はつらいよ ~アリゾナより愛をこめて~
極道大戦争
告発のとき
極楽特急
  (1932)
孤高のメス
GODZILLA ゴジラ  (2014)
この愛のために撃て
この国の空
この世界の片隅に
この空の花 長岡花火物語
今度は愛妻家

  サ 行

                                               

最後の忠臣蔵
THE 有頂天ホテル
サウンド・オブ・サンダー

ザ・ギフト
桜田門外ノ変

柘榴坂の仇討
THE CODE/暗号
ザ・コーヴ

ザ・コンサルタント
殺人容疑者  (1952)
座頭市 THE LAST
THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦
ザ・マジックアワー
さまよう刃
さよなら。いつかわかること

さよなら渓谷 
サラエボの花
猿の惑星:創世記(ジェネシス)
ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
3時10分、決断のとき
サンブンノイチ

ジーサンズ はじめての強盗         New
自虐の詩 
死刑台のエレベーター        (2010・日本)
地獄でなぜ悪い
沈まぬ太陽
シネマの天使
シャークトパスVSプテラクーダ
ジャージー・ボーイズ
ジャッジ!        (2014)
ジャンゴ 繫がれざる者
自由学校(松竹)          (1951)
16ブロック

十三人の刺客           (2010)
重力ピエロ
ジュラシック・ワールド (IMAX・3D)
蠢動 -しゅんどう-
ジェーン
J・エドガー 
ジェネラル・ルージュの凱旋
少林少女 
ショーン・オブ・ザ・デッド (ビデオ)
書道ガールズ わたしたちの甲子園
白雪姫と鏡の女王
次郎長三国志   (2008) 
しわ
シング・ストリート 未来へのうた
進撃の巨人 ATTACK ON TITAN
進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド
シン・ゴジラ
人生に乾杯!
人生の特等席
人生フルーツ
しんぼる 
ズートピア
スーパー!
Sweet Rain 死神の精度
スカイ・クロラ
スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ
スタンドアップ

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店
ストレイト・アウタ・コンプトン
スネーク・フライト
 
スノープリンス 禁じられた恋のメロディ 
SPACE BATTLESHIP ヤマト
スラムドッグ$ミリオネア
ゼア・ウイル・ビー・ブラッド
ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲
ゼロ・グラビティ          (3D) 
007/カジノ・ロワイヤル
 (2006)
007/慰めの報酬 
戦火の馬

草原の河                New
ソーシャル・ネットワーク
そこのみにて光輝く
そして父になる 
そして友よ、静かに死ね
その木戸を通って
園子温という生きもの
その土曜日、7時58分 
その場所に女ありて   (1962)
その夜の侍
それでもボクはやってない
 
ソロモンの偽証 前編・事件
ソロモンの偽証 後編・裁判
ゾンビランド

  タ 行

                                             
ダークナイト
ターミネーター:新起動/ジェニシス 
第9地区 
大日本人
 
ダイ・ハード 4.0

ダイ・ハード ラスト・デイ
タイピスト!
タイヨウのうた
 
誰がため 
滝を見にいく
TAJOMARU
脱獄囚 (1957)
TATSUMI マンガに革命を起こした男
ダ・ヴィンチ・コード

ダブル・ミッション
誰も守ってくれない
団塊ボーイズ
単騎、千里を走る。

ダンシング・チャップリン
団地
探偵はBARにいる
 
チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話
小さいおうち
小さき勇者たち~GAMERA
父親たちの星条旗
ちはやふる -上の句-
ちはやふる -下の句-
茶々 天涯の貴妃
チェイサー 
チェンジリング
超高速!参勤交代
超高速!参勤交代 リターンズ
チョコレート・ファイター
月に囚われた男
椿三十郎 (2007) 
椿山課長の七日間
 
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
冷たい熱帯魚
劔岳 点の記
ディア・ドクター
帝一の國              New
ディスタービア
ティンカーベル 
手紙
手紙は憶えている
デジャブ
 
デスノート the Last name

デス・プルーフ in グラインドハウス

TED テッド
天空の蜂
天国は待ってくれる
 (2007・日本)
天然コケッコー
 
とある飛空士への追憶
トイ・ストーリー3
東京家族
TOKYO TRIBE
東京難民
燈台 (1959)
塔の上のラプンツェル (3D)
トゥモロー・ワールド

トゥルー・グリット 
時をかける少女
  (2006・アニメ)
図書館戦争 革命のつばさ
扉をたたく人
飛べ!ダコタ
トラッシュ! この街が輝く日まで
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
ドリームガールズ

ドロップ
どろろ
 
トンマッコルへようこそ
 

  ナ 行

ナイト&デイ
ナイトクローラー
ナイロビの蜂

永い言い訳
ナニー・マクフィーの魔法のステッキ
 
252 ‐生存者あり‐ 
虹の女神 Rainbow Song
日輪の遺産
日本沈没
      (2006)
日本で一番悪い奴ら
日本のいちばん長い日
 (2015)
ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳
 
ニュースの真相
 
寝ずの番
ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
   

ノア 約束の舟
ノーウェア・ボーイ ひとりぼっちのあいつ
ノー・エスケープ 自由への国境       New
ノーカントリー
 
野のなななのか
野火     (2015)
のぼうの城
の・ようなもの のようなもの
ノン子36歳(家事手伝い)

 ※ ハ~ワ行はこちら

|

2009年12月29日 (火)

タイトル・インデックス(ハ~ワ行)

 ※ ア~ナ行はこちら

  ハ 行

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦   New
ハート・ロッカー 
パーフェクト・ストレンジャー
パーマネント野ばら
博士の愛した数式
ハクソー・リッジ               New
バクマン。
パシフィック・リム (3D)
はじまりのみち
初恋
  (2006)
パッション        (2012)
パッセンジャー   (2016)
パッセンジャーズ
パッチギ! LOVE&PEACE

ハッピーアワー 
ハッピー・フライト
ハドソン川の奇跡
花とアリス殺人事件
花のあと 
花よりもなほ

母なる証明
ハプニング
バブルへGO!!! 
タイムマシンはドラム式 
バベル
 
ハミングバード
BALLAD 名もなき恋のうた
春との旅
パレード 
ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
バンクーバーの朝日
パンズ・ラビリンス
バンテージ・ポイント 
 
ヒア アフター
ひそひそ星
陽だまりハウスでマラソンを
ビッグ・アイズ
ヒックとドラゴン
必死剣 鳥刺し
ヒッチコック
人の望みの喜びよ 
ヒトラーの忘れもの
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
ヒミズ
百円の恋
百年の時計
ひゃくはち

ヒューゴの不思議な発明 (3D)
ピラニア 3D
ビル・カニンガム&ニューヨーク
ヴィンセントが教えてくれたこと
 
ファイアーウォール
ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ    New
42 世界を変えた男
V フォー・ヴェンデッタ
ヴィクトリア
FAKE
複製された男
武士の一分 
武士の家計簿
舟を編む
不滅の熱球 (1955)
フューリー  (2014)
冬の小鳥
フライトプラン

フラガール

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
ブラック・スワン
ブラックブック
 
ブラッド・ファーザー               New         
プラネット・テラー in グラインドハウス

フランケンウィニー
プリンセスと魔法のキス
BRAVE HEARTS 海猿
プレーンズ
プレステージ 
プロデューサーズ

 
ヘアスプレー
ヘイトフル・エイト
塀の中のジュリアス・シーザー
ペコロスの母に会いに行く
ベトナムの風に吹かれて
ペルセポリス 
ベンジャミン・バトン -数奇な人生-
ボーイズ・オン・ザ・ラン
ボーン・レガシー
HOME 愛しの座敷わらし
ぼくたちと駐在さんの700日戦争

僕たちは世界を変えることができない。
僕の彼女はサイボーグ
僕らのミライヘ逆回転
僕らのワンダフルデイズ
ホステル
 
ポセイドン

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!
ボビー
 
ホリデイ
 
ボルベール<帰郷>
 
ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~     New

  マ 行

マイ・インターン
舞妓haaaan!!!

マイ・バック・ページ
マイマイ新子と千年の魔法
曲がれ!スプーン
マグニフィセント・セブン
マジカル・ガール
魔法にかけられて
迷い婚 ~すべての迷える女性たちへ~
 
マリアンヌ
マレフィセント
漫才ギャング 
マンマ・ミーア!
 
Mr.ビーン カンヌで大迷惑?! 
ミスト

ミッション:8ミニッツ
ミッドナイト イーグル
ミッドナイト・イン・パリ
ミニスキュル ~森の小さな仲間たち~
ミュンヘン

ミラクル7号
ミルカ
 
ムーン・ウォーカーズ
無限の住人              New
 
女神は二度微笑む
メッセージ               New
地下鉄(メトロ)に乗って
メン・イン・ブラック3
 
ももへの手紙 
モンスターズ/地球外生命体
モンスターVSエイリアン

  ヤ 行

                       
ヤクザと憲法
山形スクリーム
山桜
山のあなた 徳市の恋 
闇の子供たち 
誘拐ラプソディー
勇者たちの戦場
遊星からの物体X ファースト・コンタクト
夕凪の街 桜の国
湯を沸かすほどの熱い愛
夢駆ける馬ドリーマー
ユメ十夜
 
許されざる者  (2013)
ゆれる
 
八日目の蝉
容疑者Xの献身
善き人のためのソナタ
欲望のバージニア
夜に生きる                New
46億年の恋
 
       

  ラ・ワ 行

LIFE!
ラサへの歩き方~祈りの2400km
ラストスタンド

ラスト・ブラッド
ラ.ラ.ランド
ランウェイ☆ビート 
ラン・オールナイト
ランゴ
ランボー 最後の戦場
 
リアル・スティール
力道山
リップヴァンウィンクルの花嫁
LIMIT OF LOVE 海猿
 
龍三と七人の子分たち
臨場 劇場版
LOOPER/ルーパー
ルック・オブ・サイレンス
るろうに剣心
るろうに剣心 京都大火編
るろうに剣心 伝説の最期編
 
0.5ミリ
レスラー
RED
レディ・イン・ザ・ウォーター
レヴェナント 蘇えりし者
レ・ミゼラブル
RENT/レント
 
 
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
ローサは密告された        New
60歳のラブレター

64(ロクヨン)前編
64(ロクヨン)後編
ロスト・バケーション
ロッキー・ザ・ファイナル 
ロボゲイシャ
ロボジー

 
ワイルド・バレット
私の少女
私は貝になりたい (2008)
わたしを離さないで 
嗤う分身

 ランキングに投票ください →      にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

|

2009年12月27日 (日)

「スノープリンス 禁じられた恋のメロディ」

Snowprince(2009年:松竹/監督:松岡 錠司)

予告や宣伝文句を見る限りでは全然触手が湧かなかったのだが、監督が「バタアシ金魚」「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」の松岡錠司、脚本が「おくりびと」の小山薫堂、という豪華スタッフ陣につられて観に行ったのだが…

ガッカリどころの話ではない。脚本が酷い!これがあの「おくりびと」で多くの人を感動させた小山薫堂の脚本とは信じられない。別人が書いとしか思えないくらい、ズサンで穴だらけで気合の入っていないシロモノである。

日本版「フランダースの犬」とコピーにあるのだが、これではラストがどうなるか観る前から分かってしまい興醒めである。

では、どういう経緯を経て、雪の日の夜、少年が犬と死んでゆくのか…、そこを無理なく観客に納得させ、素直な涙を流させるよう持って行かないといけないのだが、その辺りにまったく説得力がない。少年の心の変遷も画面からは見えて来ない。ツッ込みどころだらけである。

(以下ネタバレあり。ご注意ください)
難点はいくつもあるが、まず各人物のキャラクターがどれも中途半端。

主人公の貧乏な草太(森本慎太郎)と、会社経営・有馬政光(香川照之)の娘、早代(桑島真里乃)との淡い恋が物語の中心なのだが、“禁じられた恋”と刺激的なタイトルなのに、どう見ても単なる幼な馴染みで、付き合いが子供っぽ過ぎて相思相愛には見えない。

二人で炭焼小屋で隠れて会ってるのに、草太は絵描きに夢中で早代をほったらかし。早代も足を投げ出して寝そべってるだけ。互いの感情が全然読み取れない。

二人が仲良くしてるシーンは、多くの人の目に触れてるはずだが、そもそも男女同権の現代ならともかく、舞台となる昭和11年頃は、「男女七歳にして席を同じうせず」ということわざがあったように、小さな子供でも男女が仲良くするのは厳禁の風潮があったはず。
ましてや、片や貧乏少年と片や金持ちの娘。身分差別も厳しい時代である。

前述の炭焼小屋に、突然政光がやって来るのも唐突。二人が小屋にいるのをどうして知ったのかも疑問だが、この時に、政光の口調が柔らかく諭すようで、あまり激怒しているようにも見えないのも不自然。本来なら草太を殴り飛ばし、折檻してもおかしくはない。

この政光は、時には草太の身元引受人みたいな事までやってるし、クリスマスの日には、草太に早代と会ってもいいような口ぶりも見せる。なんとも掴みどころのない人物だ。キャラクターが中途半端である。

早代の母親・きよ(壇れい)のキャラもヘン。何故か草太を道で待ち構えていて、豪華なご馳走の重箱を渡したり、早代が草太に会いに行こうとすると、「草太にあげなさい」と手織りのマフラーを託けたりするのである。

あまりに物分りが良過ぎるし、手回しも良過ぎる。そこまで草太に構う理由が分からない(ひょっとして、草太の実の母親はこの人なんじゃ?とさえ思ってしまう(笑))。ご馳走を用意するのはいいが、そこを草太たちが通りかかるとなんで知ったのか?マフラーの件も含め、まるでエスパーだ(笑)。

早代の同級の子供たちが、最初は草太を馬鹿にして苛めてたのに、途中から俄然仲良くなり、草太の為にわざわざ山を越えて一緒に絵の具の材料の土を探しに行くのだが、これもどうして彼らの心境が変わったのか、まったく描かれていない。

あの時代、貧乏人に対する差別意識は相当高く、そういう大人の意識が子供たちにも伝播していたはずである(私の子供時代ですら、貧乏な子供はほぼ全児童から苛められていた)。「スタンド・バイ・ミー」を拝借したかったのだろうが、全体の流れや時代の空気とマッチしていない。

草太の実の父・萩尾(浅野忠信)が、サーカスのピエロという事が中盤で分かるが、このキャラクターがまた中途半端。父である事を隠したまま、一緒に“夜空色”の絵の具の元を探しに行ったりするのだが、何で名乗らないのか、何故一緒に暮らそうとしないのかが分からない(サーカスで転々としてるからと見る事も出来るが、貧乏で小学校すら通えない我が子を、通常ほっとけるだろうか)。

そもそも、草太の祖父(中村嘉葎雄)は悪い咳をしてるし、先行きが長くないのは誰が見ても分かる。なら、祖父は草太を誰かに面倒を見てもらう事を考えてないといけないし、父も草太たちを観察してたわけだから祖父の様子は気づくはず。なのにサーカスが去って行く時、父は別れの挨拶すらしていない。祖父が死んだ後の事を、誰も考えてないのだろうか。不自然極まりない。

草太の、雪中での死も不自然。何で祖父の家に帰らない?稼ぎネタの炭も豊富のはずだから、暖を取る事だって出来る。家が焼けて無くなった、とするなら分かるが。

戦前だって児童相談所のようなものはあるだろうし、身寄りが無くなればどこかが引き取るべきである。「困った事があれば相談しなさい」と言う炭屋のおじさんだっているし。政光も、草太の学校設備損壊代金を弁償したり、身元引受までするくらいなら、彼を引き取ればいいだろうに。…とにかく、この状況で草太が死ぬに至る要素は見当たらない。

あれは草太の自殺だ、という解釈もあるようだが、それにしたって、その心境に至る伏線や草太の心の変遷が全然描かれていないのは脚本の不備である。…無理矢理「フランダースの犬」の話に持って行こうとして、前後の辻褄が合わなくなっている。

元々「フランダースの犬」は、“死ねば神に召される”というキリスト教思想が根底にあるから、少年が天国へ行く事を望んでいる、という展開も合理的に納得出来るのである。だが本作では、宗教的な側面はまったく描かれていないから不可解なのである。

 
だが、この映画で一番問題なのはそんな細かい事よりも、“なぜ現代から過去を回想する必要があるのか”、及び“昭和11~12年を舞台とする意味はどこにあるのか”という2点に尽きる。これが脚本を見る限り、全く配慮されていない。

冒頭で、現代の早代は謎の老紳士から分厚い原稿を渡され、それには草太と早代の物語が書かれている。そこから映画は回想に入るのだが…

普通なら、“そこには、早代が知らない謎が隠されており、ラストで早代は真相を知って号泣する”とかいう風に持って行くのが常道だろう。だけどそこに書かれていたのは、全部早代が知ってる事ばかりで、しかも途中で途切れている。それどころか、謎の男性は「この続きを教えてください」と早代に頼むのには口アングリ。あの原稿は何の価値もなかったわけだ。肩すかしである。

実はこれを書いたのは[ピエロだった草太の父]なんだそうだが、なんで二人の事をこんなに細かく知ってるのだろうか?二人との接点はほとんどないはずである。神でもない限り、知る由もない。

お話はいかにも古くさく、現代とのつながりはほとんど感じられない。何故現代パートを入れたのか、意味が分からない。

早代の孫娘の教訓にしたい、という意図でもあるのかと思ったが、現代の早代の家はわりと裕福そうだし、娘だって生活に困ってなさそうで、仕事が面白くないと不満を言ってるだけである。このキャラクター設定も中途半端。草太の不幸な運命を知った所で、生き方を変えるようにも思えない。そもそも、草太の最期を知っているのはこの祖母の早代だけなのだから、早代がいつでも孫に話せばいいだけであって、結局の所、老紳士(山本學)の登場は何の意味も持たない。

さらに、昭和11~12年という時代背景が、全然描かれていない。昭和11年と言えば2・26事件があった年だし、翌年夏には後の日中全面戦争につながる盧溝橋事件が起きている。若い男性はどんどん徴兵されて中国に送られるなど、日本中が騒然としていた時代である。―なにしろ、昭和12年夏には芸術家たる小津安二郎や山中貞雄にまでも赤紙が届き、中国戦線に出兵させられたくらいである。山中はそのせいで中国で戦病死した。

いくら東北の田舎町だろうと、徴兵はあるはず。無論サーカス団だろうと、住民登録があれば住居地に赤紙は届く。
むしろ、草太の父が、息子を引き取ろうと考えた矢先に赤紙が届き、中国戦線に送られて子供と会えなくなった…とする方が自然だし、戦争が草太を不幸な運命に追いやった、という展開の方が泣けるのではないか。

 
まあとにかくこの映画は、“貧乏と子供と動物”という3大要素を盛り込めば客が来るだろう、という安易な助平根性が露骨に垣間見える駄作である。まだ昔の低予算プログラム・ピクチャーの方が、監督や脚本家にも職人が揃っていて、観客は素直に感情移入出来た。厳しい言い方だが、本作はそのレベルにも到達していない。

これが、新人監督や、テレビ局のディレクターやテレビドラマ作家が作ったのなら、その程度だと思って怒る気にはならない。

だが、監督はこれまでも秀作を作ってきた松岡錠司であり、脚本は数々の映画賞総ナメの小山薫堂である。レベルの高い仕事ぶりが求められて当然である。

さらに、プロデューサーとして椎井友紀子の名前がある。これまでも阪本順治監督と組んで、「顔」「KT」「闇の子供たち」その他の優れた作品を世に送り出して来た名プロデューサーである。

こういうスタッフが揃って、この気の抜けた仕事ぶりはなんだ!。映画には泣けなかったが、その事が情けなくて泣きたくなった。

最近の日本映画の悪い風潮として、脚本家の質がひどく落ちているのだが、そんな中で期待を一身に集めているはずの小山薫堂ですらこの有様では、暗澹とした気持にならざるを得ない。採点は、期待を大きく裏切ったペナルティである。大いに反省して欲しい。    (採点=×

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | コメント (1) | トラックバック (4)

2009年12月22日 (火)

「マイマイ新子と千年の魔法」

Maimaishinko1 (2009年:マッドハウス=松竹/監督:片渕 須直)

高樹のぶ子の自伝的小説「マイマイ新子」を、「アリーテ姫」片渕須直が監督(脚本も担当)した、本年屈指の秀作アニメ。

昭和30年の山口県防府市。空想好きな小学三年生の少女・新子(声:福田麻由子)は、父の転勤で東京から転校して来た貴伊子(声:水沢奈子)と仲良くなる。辺鄙な田舎の空気に馴染めなかった貴伊子だが、新子の明るさに元気を取り戻して行く。やがて新子は、仲間の男の子たちと共に空き地で遊びながら、千年前の人々に思いをはせるが、ある日、仲間の絆を揺るがす事件が起きて…

「千年の魔法」と題名にあるが、別に千年前にタイムスリップするわけでもなく、魔法のファンタジー映画でもない。戦後10年を経た、ひなびた田舎町で、子供たちが空き地に自分たちだけの遊び場をこしらえ、空想の世界に浸りながら遊ぶ日常を淡々と描いているだけである。

なのに、観ていて何故か胸が切なくなり、涙が溢れて来るのである。

その理由は、どうやら同じ昭和30年代を舞台とした2つの映画―「となりのトトロ」「ALWAYS 三丁目の夕日」を観た時に感じたものと共通しているようである。

本作もこれらの作品と似た空気を保有している。
テレビも携帯も、テレビゲームもないが、子供たちは自由な発想と、自分たちの創意工夫で遊び場を作り、空想の世界をどんどん広げ、自由奔放に遊び、楽しんでいる。

子供たちの間には、イジメも仲間外れもなく、ポツンと離れている子供ですら仲間に引き入れ、みんなで遊び場を共有し、本当に楽しそうに遊んでいる。

その温かさと、懐かしさと、心の豊かさに比して、現代に生きる我々は、物は豊富になったけれど、それと引き換えに、確実に何かを失ってしまっている。

前掲2作に我々が涙したのは、まさにその点であった。…そんな古き良き時代を体験している大人であれば尚の事、深く心に染み入ったはずである。

だが本作は、単にノスタルジックな世界に浸っただけの前掲2作よりも更に物語は奥行きが深い。

Maimaishinko2 そんな子供たちの世界にも、大人の現実は押し寄せて来る。新子に、自分が住むこの町の、千年前の姿(=平安時代の地方の国の都・国衙)を教え、想像の世界に浸る喜びを与えてくれた祖父の死はショックだろうし、仲間の父を襲った悲劇も、子供たちには残酷な現実である。彼女たちが慕い、金魚にその名前をつけたりするほどの、子供たちの心の支えであった女性教師も、大人の恋に破れ去って行く。…現実世界は空想の世界ほど甘くはないのである。

それでも子供たちは、夢を追い求め、小さな冒険を重ね、悲しみを乗り越え、二度と帰らない少年時代を精一杯生き抜くのである。

千年前の、牛車が闊歩し、身分制度は多少窮屈だけれど、空は開放感に満ちていた時代と、昭和30年という、戦後の高度成長が始まりかけ、まだ未来に夢と希望が持てた時代を自由に往還しつつ、そこから、豊かにはなったけれど閉塞感が充満し、ほとんど先が見えない今の時代を生きる我々に、この映画は、“時代の進歩とは何なのか”、“未来に夢を持つ子供たちに、大人は何を残してやれるのか”というテーマを問いかけているのである。

 
子供たちには是非観せてやりたいし、大人も是非観るべき、これは素敵な秀作である。「トトロ」や、「三丁目の夕日」や、「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」に感動し涙した大人であれば、絶対観ることをお奨めする。

…が、残念なことに、配給会社が作品の良さを理解出来てないのか、公開規模は極めて小さく、私がやっと観る事が出来たのは、尼崎のシネコンで、しかも朝10時からの1回きり上映であった。
これでは、本来観るべきである中高年世代の人はほとんど観る事は出来ない。私の周辺でも、観ている人は皆無に近い。

幸いな事に、口コミで観た観客の間で評判が高まり、ブログ等でも熱烈な書き込みが散見される。↓
  http://d.hatena.ne.jp/makaronisan/20091201/1259612324

  http://d.hatena.ne.jp/tanipro/20091128

Wikipediaでも高い評価である。

東京ではラピュタ阿佐ヶ谷で12月19日からレイトショー上映も始まったようだ。

是非いろんな映画賞を獲り、全国的な上映運動が広まって行く事を期待したい。次のコーナーでも述べるが、片渕須直監督の今後のさらなる活躍も期待したい(それにしても監督の知名度が少ないとは言え、“「時をかける少女」「サマーウォーズ」のマッドハウスが送る”という宣伝文句は片渕監督が無視されているようで、いささか悔しい)。     (採点=★★★★★

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

 
(お楽しみはココからだ)

この映画の監督、片渕須直と言えば、恐らく宮崎駿作品のファンであれば知っている人も多いだろう。

片渕監督は、学生時代から宮崎駿がテレビ・アニメを作っていたテレコムにもぐり込んで、宮崎に脚本を書けとすすめられ、TVシリーズ「名探偵ホームズ」の初期のエピソード「青い紅玉」「海底の財宝」「ミセス・ハドソン人質事件」「ドーバー海峡の大空中戦」の4本の脚本を書いている。これらはすべて宮崎駿が絵コンテ・演出を担当し、いずれもシリーズ中屈指の傑作となった(前の2本は「ナウシカ」、後の2本は「ラピュタ」のそれぞれ劇場公開時に併映されたので、覚えている方もいるだろう)。

その後宮崎作品「魔女の宅急便」(89)では監督補を担当。言ってみれば宮崎の秘蔵っ子とでも言える俊才である。「となりのトトロ」と雰囲気が似ているのも当然のような気がする。

劇場アニメ監督デビューは2000年の「アリーテ姫」。これも公開規模が極端に少なく、またアクションも、ギャグも、笑いも少ない、淡々とした作りであったが故にほとんど評判にならなかったが、これも捨て難い味わいの佳作であった。

スタジオ・ジブリの次回作には、是非片渕監督を、と推薦したい。
 

片渕監督「アリーテ姫」
劇場版 「名探偵ホームズ」

「風の谷のナウシカ」(84)に併映された、片渕須直脚本、宮崎駿演出の、シリーズ最高傑作。
タイトルは、
「青い紅玉」
「海底の財宝」の2本。
原作本

(12/23付記) ・・・上映存続署名に協力を

本作の上映存続・拡大を望む声が広がりを見せ、署名運動が行われている。

主旨に賛同した方は、是非署名参加をお願いいたします。

署名サイトはこちら ↓
http://www.shomei.tv/project-1385.html

携帯からでも出来ます。→http://www.shomei.tv/m/

(一覧の5番目辺りにあり)

 

| | コメント (9) | トラックバック (11)

2009年12月19日 (土)

キネ旬発表「オールタイム・ベスト200」について思うこと

Best200_2  キネマ旬報が、創刊90周年を記念して、「日本映画・外国映画オールタイム・ベスト200」を発表しました。

詳細は下記参照。
http://www.kinejun.jp/special/90alltimebest/index.html

 
ベストテンは以下の通り。

<日本映画>

(1)東京物語
(2)七人の侍
(3)浮雲
(4)幕末太陽傳
(5)仁義なき戦い
(6)二十四の瞳
(7)羅生門、丹下左膳餘話・百萬兩の壺、太陽を盗んだ男、家族ゲーム
(10)野良犬、台風クラブ
 
 
<外国映画>

(1)ゴッドファーザー
(2)タクシー・ドライバー、ウエスト・サイド物語
(4)第三の男
(5)勝手にしやがれ、ワイルドバンチ
(7)2001年宇宙の旅
(8)ローマの休日、ブレードランナー
(10)駅馬車、天井棧敷の人々、道、めまい、アラビアのロレンス、暗殺の森、地獄の黙示録、エル・スール、グラン・トリノ

 

まあ、日本映画はこんなものでしょう。「雨月物語」「人情紙風船」「生きる」がテンから洩れているのがやや残念ではありますが。

ちなみに「生きる」は13位、「雨月物語」、「人情紙風船」は23位となっております。

 
外国映画はというと、これがちょっと気に入らない。なんで「ゴッドファーザー」が1位、「タクシー・ドライバー」が2位なんでしょうか。

「市民ケーン」は?、「禁じられた遊び」は?、「風と共に去りぬ」は?、「カサブランカ」は? 「ブレード・ランナー」や「エル・スール」がテンに入って、これらが落選するなんて…納得が行きません。ちなみに「市民ケーン」は19位、「禁じられた遊び」「風と共に去りぬ」は59位、「カサブランカ」はなんと99位です。

日本映画は、過去の直近2回のオールタイム・ベストテン('95年、'99年)と今回も含めて、計3回のベスト3はいずれも「七人の侍」「東京物語」「浮雲」と固定されてますが、外国映画のベスト3は、'95年が「市民ケーン」「2001年宇宙の旅」「天井桟敷の人々」(この年は邦洋混成でしたので、邦画を除いて)、'99年は「第三の男」「2001年宇宙の旅」「ローマの休日」といった具合に、毎回大きく異なります。今回のベスト3はすべて、前2回のベスト3には全く入っていなかった作品ばかりです。違和感があるのも当然です。

選考委員は、映画評論家に、漫画家等の文化人、現役の映画監督、脚本家なども含めた、バラエティ豊かな方々で、これは問題ありませんが、選考方法が、各人が選んだ10本それぞれに、各1点を与えて集計している点が問題ありかと思います。

選考委員の数は114人で、それぞれが個人的に思い入れのある作品まで含めているものですから、広範囲に分散してしまっているのです。
例えば、200本の中には、日本映画では「ゆけゆけ二度目の処女」「現代性犯罪絶叫篇 理由なき暴行」「襲られた女」等のピンク映画とか、外国映画では「ゲアトルーズ」(64)、「そして光ありき」(89)、「血」(89)など、まったく聞いた事のない作品(いずれも日本未公開)があったりします。こういった、映画ファンですら知らないような作品群まで、「映画遺産200」などとして格付けするのはどうかと思いますね。

も一つ不満なのは、ベスト200の集計表が誌面のどこにも掲載されていない点です。いつもこうしたベストテン発表では、必ず集計結果一覧表が発表されていたはずなのに、何で掲載されていないのでしょうか(なお読者選出分はきちんと採点結果が掲載されております)。HPの方には、順位だけが掲載されていますが。

で、気になったので、実際に各委員のベストテンを集計してみました(日本映画のみ)。ちょっと時間がかかりましたが。

まずベスト3
(1)東京物語=28点 (2)七人の侍=25点 (3)浮雲=16点

意外と少ないですね。つまり、「東京物語」、「七人の侍」といったマスターピースですら、114人中、4分の1程度の人しかテンに入れていないのです。

7位以降は、7位で10点、10位で9点、…と、以下順位が下がる毎に1点づつ減って行き、108位(全部で90作品)はなんと2点

で、ベスト200と謳いながら、実際は日本映画は計197本。200本に満たないのです。198位以下はすべて1点ですから、入れようがないわけですね。…洋画は計算しておりませんが、99位の127本も多分獲得点数は2点どまりじゃないでしょうか。

つまりは、たった2人が選んだ作品でも、“映画遺産200”として記録に残ってしまうわけです。どうりで聞いた事のない作品や、ピンク映画までランクインしてしまったわけです。

以前は、1位10点、2位9点…とキネ旬年間ベストテンと同じ方式で採点していた時もありましたが、少なくともその方式なら、選者の思い入れの深い作品ほど上位になるので、幾分かは妥当な結果になったでしょう。
例えば選者によっては、1位の作品は、10位作品より何十倍も愛着があり、上位にしたい作品かも知れないのに、どの作品も一人1点ではその辺の思いがまったく考慮されないことになります。

まあ、どの方式も一長一短で、前記の方法がベストとも言い切れませんが、結果としてなんともしっくり来ないベスト200になった事は否定できないでしょう。

細かい事を言えば、神代辰巳監督作品では、「少女娼婦 けものみち」が入って、「一条さゆり/濡れた欲情」「四畳半襖の裏張り」がなんで入っていない?、とか、山田洋次作品では、「学校Ⅲ」が入ってる一方で、「家族」「幸福の黄色いハンカチ」が何故入っていない?(この人たちのベストと言えば、まずこれらが挙げられると思う)…と疑問が湧いて来てしまいます。

 
それともう一つ問題が。
実は、集計内容にかなりのミスがあるのです。

例えば、上記に紹介した、日本映画ベストテンは、刊行されたキネ旬ムック「映画遺産200・日本映画編」(以下ムック)に掲載されたものを転載したものですが、よく見ていただきたい。7位が4本。―だったらこれで10本のはずですが、10位としてさらに2本挙げてあります。この2本は、正確には11位のはずです。

そこで、上にリンクを貼った、キネ旬のHPを参照すると、7位が「羅生門」、「丹下左膳餘話・百萬兩の壺」、「太陽を盗んだ男」の3本、10位が「家族ゲーム」、「野良犬」、「台風クラブ」の3本となっており、上掲のムックに掲載したものと異なっております。

私の計算では、ムックに掲載の通り、7位は4本が正しい。これはおそらく、最初の集計で間違えて、「家族ゲーム」を10位にしてしまったのでしょう。これをHPに掲載した後でミスに気付いたので、HPはそのままにしたが、ムックを編集する段で「家族ゲーム」を7位に差し替えたものと思われます。よって、何ともヘンテコなベスト12が出来上がってしまったわけです。

これだけではありません。実は11位はもう1本「洲崎パラダイス 赤信号」があります。これも集計ミスで1点少なく集計してしまったのでしょう。

その他、私が集計した限りにおいて、以下の間違いがありました。

①「男はつらいよ」シリーズ 正:37位  誤:59位
②「姿三四郎」        正:60位  誤:106位
③「男はつらいよ・寅次郎忘れな草」  正:圏外(1点) 誤:106位

「男はつらいよ」の1作目を除く単独作品は、「純情編」、「寅次郎忘れな草」、「寅次郎紅の花」が各1点でした。③はどうやら「紅の花」を間違えて「忘れな草」と合算してしまったミスと思われます。

細かい事ですが、「男はつらいよ」1作目が単独で2点獲得し、106位に入っておりますが、「男はつらいよ」シリーズ、としても4点獲得し、37位に挙がっているのもヘンな感じです。こんな場合は合算しても良かったのでは(合算すれば23位)と個人的には思ってしまいます。

重箱の隅をつつくようで申し訳ないのですが、こうしたランキングが、何十年も後まで記録として残る以上は(実際、過去のオールタイム・ベストをHP上に掲載しているサイトがいくつか存在します)、慎重の上にも慎重を期していただきたいものです。

ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2009年12月12日 (土)

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」

Blackcompany (2009年:アスミック・エース/監督:佐藤 祐市)

インターネットの掲示板・2ちゃんねるの書き込みから生まれた、黒井勇人の実体験スレッド文学を基に映画化。

2ちゃんねる…と聞いて、ちょっと引いた。原作本も掲示板のスタイルそのままの横書きスレッドタイプ。小説を読み慣れた人にはちょっと読みにくい。

というわけで、あまり気乗りはしなかったのだが、
監督が、私のお気に入り「シムソンズ」、そして話題になった秀作「キサラギ」の監督、佐藤祐市だったので、この監督名につられて観る気になった。

で、結果、予想外に面白かった。傑作とまでは言えないが、気楽に楽しめる、良質のプログラム・ピクチャーといった所である。
ブラック会社、とまでは言わなくても、厳しい環境下で日夜仕事をされているサラリーマンの方には、疲れた時にご覧になる事をお奨めする。笑えて、少し元気になれる、爽やかなハートフル・コメディの佳作である。

 
学生時代に苛めに会った事が原因で高校を中退し、仕事もせずにニート生活を送ってきた26歳の真男(小池徹平)。が、母親を事故で亡くし、それを契機に一念発起してITエンジニアの資格を取得する。必死で就職活動をするものの、この歳で職歴なしの為、不採用の連続。やっと採用してくれたシステム開発会社は、実はとんでもないブラック会社だった…。

ブラック会社とは、サービス残業、徹夜は当たり前、経費は自腹、上司からはバカ呼ばわり…と、社員に劣悪な労働環境や条件を強いる、「ヤバい」会社のことだそうだ。

私もこの業界で働いていた経験があるので、こうした劣悪な労働環境が実在する事も知っている。映画では多少誇張されてはいるが、ある程度までは実態に近いと言えるかも知れない。まあ中小・零細企業というのは大なり小なりそういう要素は抱えているだろう。私などは身につまされ、ホロリとなってしまった(笑)。

お話の方は、真男(打ち込みミスがきっかけで、ずっとマ男と呼ばれる)が、最初は過酷な作業ノルマとリーダーの罵倒にくじけそうになりながらも、必死で頑張ってなんとか仕事をこなし、少しづつ成長して行く姿を描く。

会社の同僚たちのキャラクターがうまく配置されている。威張り、「バーカ」が口癖の嫌味なリーダー(品川祐)、仕事もせずにリーダーにゴマを擦る井出(池田鉄洋)、経費は一切払わないるお局様の経理係・瀬古(千葉雅子)、ノイローゼ気味の上原(中村靖日)、女性派遣社員の中西(マイコ)、そしてただ一人マトモで、真男を励ましてくれる藤田(田辺誠一)。

「キサラギ」でも、登場人物の個性を際立たせ、絶妙にストーリーを引っ張って行った佐藤監督、その手法が本作でも生きている。

 
(以下ネタバレあり。注意)

うまいのは、最初はトンデモない憎まれ役だと思っていたリーダーや井出が、ひたむきに頑張る真男の仕事ぶりに、少しづつ態度が変わって行く様子を、目立たない程度にさりげなく描いている点。
憎まれ口が、ひょっとしたら真男を鍛え、一人前に育てる為の愛の鞭ではないかと思えて来る。

それが本当かどうかは映画を観てのお楽しみだが、言える事は、“この程度のシゴキに耐えられないようなら、どこへ行っても一人前になれない”という事なのである。
特に、仕事が辛くて、辞めたい、とか思っている若い人は、この映画を観て、真男の頑張りを見習って欲しいと思う。厳しい環境は、自己を鍛える修練の場と考え、前向きの思考を持つ事である。

 
納期が迫るギリギリのスケジュールの中、さまざまなトラブルから、真男は遂に「こんな会社辞めてやる!」と会社を飛び出してしまう。

そこから以降は、明日朝までの納期に、果たして間に合うか、そして真男は会社を本当に辞めてしまうのか、それとも翻意するのか…というサスペンスを孕み、感動のフィナーレへとなだれ込む。

この終盤は、ややうまく行き過ぎ(と言うかリーダーの人格変わり過ぎ(笑))という気もするが、そこは娯楽映画と割り切るべきだろう。物語の展開としては、落ちこぼれ揃いでどうしようもなかったダメチームが、最初の頃は失敗を繰り返したり、さまざまなトラブルを重ねながらも、次第に結束を強め、やがて一つの目標に向かってチーム全員が一丸となって邁進し、最後に見事プロジェクトを成し遂げる…というエンタティンメントの王道をきっちり守っていて、感動的である。
例を挙げれば、アメリカ映画「メジャー・リーグ」とか、周防正行監督「シコふんじゃった。」などがそうしたパターンの作品である。…そう言えば、佐藤監督の出世作「シムソンズ」もまさにそのパターンを踏襲していた事を思い出す。

それはまた、仕事とは何か、チームとは何か、組織とはどうあるべきか、というテーマの追求にも他ならないのである。

映像的にも、CGを使った真男の脳内イメージが面白い。でかい文字がドドーンと飛び出して来たり、デスマと呼ばれる“死の行進”の表現として、戦場を行進する兵士が登場したり、「三国志」の名場面が登場したり等のお遊び映像も笑える。「キサラギ」でも卓抜なイメージ映像をモンタージュしていた佐藤監督らしいテクニックである。

 
やや残念なのは、入社したばかりで、まだ実戦経験皆無の真男が、あまり苦労もせずに2週間の納期内に受注システムを完成させてしまう点である。

現実はそんなに甘くない。ましてや仕様書も整備されておらず、先輩はロクに面倒見てくれないような状況ではまず無理。多分最後の3日間は完全徹夜、ヒゲはボウボウ、目は血走り、意識朦朧状態となる(私は実際に体験した(笑))。

例え首尾良く完成させ、誉められたとしても、入社たった2週間でプロジェクト・リーダーに任命されるなんて事はありえない。いくらバリバリ仕事が出来ても、統率力、マネジメント能力が兼ね備わらないとリーダーにはなれない。まあ最低2年はかかる。

それと、途中入社の早大出身、出世欲満々の木村(田中圭)の役柄というか存在感がもう一つ希薄。野心家で乗っ取りを企んでるようなのだが、あんな態度ではその前にはじき出されてしまうよ(それにしても田中圭、「TAJOMARU」とほとんど同じキャラだ(笑))。

…といった難点はあるものの、派遣切り、解雇等の不安定雇用状況が続く今の時代の1断面を切り取りながらも、緩急自在のテンポでこれをウエルメイドで、かつハートフルな人情コメディに仕上げた佐藤監督の手腕は見事である。

ラストがいい。映画の長いタイトルが表示され、“俺はもう限界かもしれない”の文字が別の言葉に置き換わる。

同じように過酷な環境で働き、実際に限界を感じ、くじけそうになっている方がこのラストシーンを見て、“俺ももう少し頑張ってみよう”と、ちょっぴり元気を取り戻したなら、それは素敵な事である。

そんな事も、ふと感じさせてくれる、これは素敵な作品である。観る前は期待していなかった分だけ、採点は少々甘めに。     (採点=★★★★

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

原作本
こちらはコミック版

| | コメント (2) | トラックバック (16)

2009年12月 9日 (水)

「カールじいさんの空飛ぶ家」

Up (2009年:米・PIXAR=ディズニー/監督:ピート・ドクター)

良質のCGアニメを発表して来たピクサー+ディズニー提供の新作。

今回の主人公は、78歳の老人。一応子供も楽しめるこの手のアニメで、老人が主役というのは記憶にない。

冒頭、1930年代のアメリカで、冒険にあこがれるカール少年が、同じく冒険を夢見る少女エリーと出会い、結婚し、やがて歳を取ってエリーと死別するまでを、わずか10分ほどの映像で、セリフなしで積み重ねるシークェンスがとてもいい。短編アニメを観ているような味わいがあり、ホロリとさせられる。

で、思い出したが、本年度の米アカデミー短編アニメ賞を受賞した、加藤久仁生監督の「つみきのいえ」も、やはり妻と死別した老人が過去の幸福だった日々を回想する話。似ているのはたまたまだろうが、アニメもこうした具合に、人の一生をじんわりと振り返る傾向が出て来たのは、進化と呼ぶべきだろう。

この老人が、妻を失った喪失感で、誰にも心を開かず(ドアの鍵を4つもつけている事で表現しているのもうまい)、さびしく暮らしている描写がせつない。いずれ人間は年老いれば誰しも経験する事だろうが、こうした深くて切実な大人のテーマを、常に斬新な作品世界でCGアニメ界をリードして来たピクサーが取り上げた事は賞賛に値する(そう言えば前作「WALL・E/ウォーリー」“文明が行き着いた先の孤独”がテーマだった)。

妻を失った偏屈な老人…という切り口は、本年度の傑作、クリント・イーストウッド監督の「グラン・トリノ」をも連想する。彼が心を開くのが、東洋系の少年、という所まで共通している。多少はオマージュが入っているのかも知れない。

それにしても今年は、老人版“俺たちに明日はない”「人生に乾杯!」もあったし(それと並べるなら、本作は老人版「インディー・ジョーンズ」だ。東洋系の少年を連れての大冒険は、2作目「魔宮の伝説」を髣髴とさせる)、今年は期せずして、“老人が大暴れする娯楽映画”が続出した年として記憶されるべきかも知れない。

オマージュついでに言うなら、無数の風船で空に舞い上がる…という映像は、明らかにアルベール・ラモリス監督の「赤い風船」(56)へのオマージュだろう。
これには根拠があって、同じA・ラモリス監督作品に、「素晴らしい風船旅行」(60)というのがあり、これは、科学者が、少年(演じるのは「赤い風船」の主役も演じたラモリス監督の息子)を連れて気球の旅に出る、というお話。きっと作者はラモリス監督のファンなのだろう。

…とまあ、のっけから“お楽しみはココからだ”コーナーをやってしまったが(笑)、このコーナーは後にも出て来るのでお楽しみに。

 
さて、映画はカールじいさんが、自分の家に2万個もの風船を取り付けて、妻との約束の地、南米奥地の秘境“パラダイス・フォール”に向かって空中旅行に旅立つ事となる。
なお、ボーイスカウトの少年ラッセルが便乗してしまったので状況が変わるが、もしラッセルが乗っていなかったら、カールは天国に向かう気だったのかも知れない(本作の原題は“UP”だが、これには“昇天”の意味も含んでいる気がする)。

風船の旅は、やがて目的地に到達し、そこで出会った行方不明の冒険家、マンツと対決し、巨大飛行船を舞台の大活劇を繰り広げる事となる。

老人が走ったり、ロープにぶら下がったり、飛行船をよじ登ったりなんか出来るのか…と突っ込むのはヤボ。そこはアニメと割り切って気楽に楽しむのがよい(ギックリ腰になりかけたりのギャグが笑える)。

子供が観ても楽しいし、大人の方は、老人になっても、夢を見続ける冒険心を失ってはならない、と勇気付けられる。大人も子供も、共に楽しめる素敵なファンタジーの傑作としてお奨めである。

私は3D版で観たが、これまでの3Dアニメとは違い、無闇に前方に飛び出して来るような驚かされる映像はほとんどない。どちらかと言えば、遥か彼方の地上や雲の風景がずっと奥の方に見えている、“落ち着きのある立体効果”が図られている。なので、派手な3D映像は期待してはいけない。これまでの派手派手飛び出し映像に飽きた人なら観る価値があるが、そうでなければ2D版で充分だろう。まあ好みの問題である。

 
なお、私は観ていて、もう一つのテーマにも心打たれた。それは“生きて行くとは、何を守り、何を捨てるべきなのか”という点である。

カール老人は、妻との思い出の品が捨てられない。家も捨てられない。

老人ホームに収容させられれば、すべてを捨てて行かなければならない。カールはそれが忍びなかった。従って、家ごと、すべての思い出の品と一緒に風船の旅に出る決心をするのである。

マンツによって、家が焼かれそうになった時、カールはラッセルの願いも無視して、ラッセルの友達(怪鳥のケヴィン)を守る事より、家を必死で守ろうとした。

その事にラッセルは大いに失望し、彼はたった一人でケヴィンを救出すべく敵陣に乗り込もうとする。

それを知った時、カールはやっと気がつく。“守るべきは、もうこの世にいない妻の思い出ではなく、これからの未来を生きて行く子供なのだ”という事を。

そしてカールは、妻との思い出が詰まった家財道具をすべて外に投げ捨て、家を軽くして飛行船を追うのである。

マンツとの戦いに勝利した時、かろうじて飛行船に乗っかっていた大切な思い出の家は、遂に地上に降下して行く。

だがカールにはもうあの家に未練はない。思い出の家に別れを告げ、カールは元の世界に戻って行き、そしてラッセルたちと新しい人生を歩み始める。

このラストには感動した。ここで前述のテーマが鮮明に浮かび上がるのである。

人はいつまでも過去を振り返ってはいられない。年寄りはやがてこの世を去るが、子供たちには遥かなる未来がある。
その未来を築き、子供たちを守るのは、大人たちの責任なのである。
人が生きるとは、そうやって何かを捨て、何かを守って行く事なのである。守る為には、大切なものも捨てなければならないのである(この事は「のんちゃんのり弁」を観て気付かされた)。

ラスト、あの家がどこに着地したのかを示すあたりも配慮が行き届いている。

やはりピクサー・アニメはあなどれない。今後の展開も楽しみである。     (採点=★★★★☆

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

(で、お楽しみはココからだ)
この映画にはまだお楽しみがある。
本作にもどうやら、宮崎駿作品へのオマージュが隠されているフシが覗える。なにしろピクサー・スタッフには宮崎アニメ・ファンが多いのは、前作「WALL・E/ウォーリー」でも証明済み(同批評のお楽しみコーナー参照)。

大空を飛翔する”という映像は、宮崎アニメの典型パターンであるが、それだけではない。本作には宮崎作品「天空の城ラピュタ」との共通点がいくつかある。

1930年代、探検家(マンツ)が秘境を発見し、怪鳥の骨を持って帰るが、それがニセモノと判断され、失意のうちに探検家は姿を隠すが、「ラピュタ」においても、探検家である少年パズーの父は、ラピュタを発見するも世間からは無視され、失意のうちに亡くなっている。

巨大飛行船は「ラピュタ」にも、政府軍の艦船ゴリアテとして登場している。

ついでに、空中に浮かぶパズーたちの気球とドーラの船とは、ずっとロープで繋がったまま移動する

そして、敵の巨大飛行物体に、主人公たちが別の飛行物体で近づき、飛び移って敵と一大バトルを繰り広げる、という展開は、「未来少年コナン」におけるファルコから空中要塞・ギガントに飛び移っての戦い、「ルパン三世・死の翼アルバトロス」におけるプロペラ機からアルバトロスに飛び移っての戦い、と、宮崎作品ではお馴染みのパターンである。
多分この空中での大アクション・シークェンスで、宮崎アニメを連想した人も多いのでは。

そして一番のポイント、―雲の中を進むうちに雲が晴れて来て、雲の切れ間からうっすらと、目的地の光景が見えて来るシークェンス。
―「ラピュタ」の、雲の切れ間からラピュタが姿を現す感動のシーンにそっくりなのである。

 

| | コメント (7) | トラックバック (31)

2009年12月 8日 (火)

津大門シネマが閉館していた

Daimoncinema3_3  以前(2年前)に、三重県に単身赴任していた時に、津大門シネマという単館系ミニシアターを見つけて、そこの支配人の谷口さんと、いろいろお話させていただき、ブログに掲載させていただいた事があった(→記事はこちら)。

たまたま、当ブログの過去ログをつらつら眺めていた時に、その記事をみつけて、ちょっと懐かしくなって、今どうしてるかな…と当時リンクした同館のHPを見ようとしたら、

大門シネマのHPが消えていた。

あれれ、っと、ググってみたら、

なんとなんと、今年の7月20日に閉館していた事が判った(→新聞記事)。

閉館理由は、支配人の谷口嘉吉さん(78)の健康上の問題と、昨年来の不景気や新型インフルエンザに伴い、観客数が激減したことが追い打ちをかけたのだそうだ。

Shihainin いつもニコニコと、観客に微笑みかけ、出て行く時には「ありがとうございました」と観客一人一人に声をかけてくださっていた姿を、今も鮮明に思い出す。今どき珍しい丁寧な映画館だった。

その谷口さんが、実はガンを患っていたと、新聞ではじめて知った。あのお歳で、細いお身体で、地方都市のミニシアターの灯を守って来られた、その情熱には頭が下がる。

いろいろ検索をかけると、閉館を惜しむ声が多数のブログに書き込まれていた。以下いくつか紹介。

http://ameblo.jp/kapuseruzamurai/entry-10305592338.html

http://furuyan.diarynote.jp/200907202256206360/

http://bcafe2.mie1.net/e150671.html

http://ameblo.jp/cheb-cheb/entry-10352371173.html

http://d.hatena.ne.jp/hyu-rock/20090724

丁寧な応対ぶりや、心から映画を愛しておられる様子は、これらからも感じられ、いかに谷口さんの人柄に、当地の多くの映画ファンが心服していたかがよく分かる。本当に残念な事である。

こんな記事もあった。 ↓
http://www.mie-cinemafesta.net/hp/wmbp/wingmulti.cgi?bbsname=bbs22&mode=res&no=5837&oyano=5837&line=0

ラストショーは、「大阪ハムレット」「ホウ・シャオシェンのレッドバルーン」だったそうである。後者は私の大好きなA・ラモリス監督の「赤い風船」にオマージュを捧げた作品。ラストショーにふさわしい。

最終上映終了後、場内から拍手が沸きあがったそうだ。素敵な事である。

シネコンに圧され、特に地方の映画館は大変だろうと思う。情熱があっても、ファンが後押ししても、それでも映画館を維持して行くのは困難な時代である。私も、お力になりたいとブログで紹介させていただいたが、微力で力及ばなかったのは心苦しい。

ともあれ、谷口支配人様には、お疲れ様でしたと声をかけてあげたい。またいつか、お会いできる日まで、お身体大切に、健康で過ごされる事をお祈り申し上げます。

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月 1日 (火)

「曲がれ!スプーン」

Magaresupoon(2009年:ROBOT=東宝/監督:本広 克行)

快作「サマータイムマシーン・ブルース」と同じ上田誠・作、劇団ヨーロッパ企画の舞台「冬のユリゲラー」を、前作と同じ本広克行監督により映画化。

前作の出来が良かっただけに、本作にも期待してしまう所だが、観終わってガッカリ。全然面白くない。前作に感動した人にはお奨めできない。

「サマータイムマシーン-」が面白かったのは、タイムマシンの特性をフルに活用した着想の秀逸さと、過去の世界に行って発生した些細な出来事が、現代のトラブルに複雑・縦横ににリンクする、周到に練られた脚本のうまさにある。
その観終わった時の爽快感は、例を挙げれば、内田けんじ監督の「運命じゃない人」「アフター・スクール」等の、伏線とトリックを巧みに網羅した秀作シチュエーション・コメディのそれにも近いと言えるだろう。

だが本作は、お話は平凡、脚本は単調で、捻りもどんでん返しもない。着想以外に見る所は乏しく、ただ出演者が勝手にドタバタしてるだけである。前作とは比ぶべくもない。

子供の頃に宇宙船を見た桜井米(長澤まさみ)は、今も人知では解明出来ない超常現象が存在すると信じている。大人になってテレビ局に勤務した米は、超常現象バラエティー番組のADとしてこき使われていたが、ある日ディレクターの命令で単身、本物のエスパーを探し出す旅に出る事に。視聴者からの投稿を頼りに日本全国を旅して回るが、現われるのはインチキ超能力者ばかり。そんな米がある投稿者と待ち合わせた喫茶店は、実は本物のエスパーたちの溜り場だった…。

 
着想は面白いと思った。自分たちがエスパーである事を隠しておきたいのに、事もあろうに超常現象を興味本位で取り上げるだけのテレビ局のADが取材にやって来たのだから。何も知らない、天然に近い米と、彼女をなんとか追い出そうとするエスパーたちとの駆け引きは、限定空間において、演技者同士が火花を散らす小演劇の舞台で観ればそれなりに楽しめるだろう。

だが映画は、時間と空間が無限に広がり、しかも画そのものは舞台と違ってずっとリアルになる。脚本が余程綿密に書き込まれ、練られていないと、舞台では面白くても、そのまま映画にしても面白くなるとは限らない。役者の口角泡飛ばす過剰な演技も、小劇場の舞台では何とか見られても、スクリーンでは違和感がある。

(以下ネタバレあり。一部隠します。読みたい場合は反転してください)
問題点をいくつか。まず、ヒロインがエスパーたちに出会うまでがダラダラ長くて退屈。次に、インチキな自称超能力者の超能力ぶりも、アホらしくて全然笑えない。
狭い所をくぐり抜けるという細男のネタがしつこく繰り返されるが、単に身体的特長であって超能力ではなく、退屈で面白くも何ともない。もっとインチキ超常現象らしくて笑えるネタを考案すべきである。

米のポケットの名刺入れに[クモ]がいる…という騒動も延々引っ張りすぎ。真相が判ってみれば、“そんなしょうもないネタでそこまで引っ張るのかよ!”と怒りたくなるくらいつまらない。[そもそも、米の名刺は事前にもらって見ているはずだから気が付くはず。ヒロインの“米(よね)”という、今どきの若い娘には考えられないダサい名前が、実はそんなくだらないギャグの為に用意されたのだとしたら、創作者としての神経を疑いたくなる

エスパーたちの超能力も、透視、エレキネシス、サイコキネシスまではいいとしても、[時間を止める、というのは禁じ手。それをやったらマンガになってしまう]。

 
だが、本作で一番問題なのは、サンタクロースと、UFOと、超能力者…という3つの異なる要素を、同列に捕らえている結末(発想)の杜撰さである。

サンタの実在を信じるのは、せいぜい小学校低学年まで。大人になったら誰でもそんなものはいない事くらい分かってる。信じてたらアホである。

UFOは、かのスピルバーグも信じているくらいで、地球外生命体が絶対存在しないとは言い切れない、むしろ科学的なジャンルである。

エスパーはオカルト・サイキックと呼ばれるジャンルであり、人間の潜在的な才能の開花の結果である(個人的には、眉に唾をつけたくなる怪しげな世界だが(笑))。

テレビ局は後者2つを十把一からげにしているが、微妙に異なるジャンルである。そのテレビ局ですら、まさかサイキック番組でサンタは実在するか…なんてテーマは取り上げない(笑)。

米が、夢を信じていたい、という思いを大切にしており、その思いをなんとかしてあげたい、とエスパーたちが考えるのは分かるが、かと言ってあれをラストの奇跡に持って来るのは、エスパーたちはヒロインを(子供扱いし)バカにしている事になりはしないか。
もっと他の、まさに観客も一緒になって夢を信じたくなるような奇跡…をこそ用意すべきであった。

ついでに言うなら、あの程度で、米は彼らがエスパーだと分かったのだろうか。人形を糸で釣ったって、あのくらいのトリックは出来るだろうに。彼女が確信に至る、なるほどと膝を打ちたくなるアイデアを創案すべきだった。

も一つついでに、せっかくエスパーが揃ってるのに、奇跡の演出に念力の河岡(諏訪雅)くらいしか活躍しなかったのもつまらない。全然役に立たなかったエレキネシスの井出(川島潤哉)にも、最後に何か見せ場を作ってあげるべきではないか。

ともかく捻りがなさ過ぎる脚本に問題あり。

「サマータイム-」や「UDON」等の本広作品のキャラがゲストも含めて出演(マツイコースケ等)しているというお遊びは楽しめるが、そんな事に力を入れる暇があったら、もっと脚本を練ったらどうだ、と言いたい。

突っ込みどころも一杯あるが、1つだけ挙げておく。
ラスト、香川県の上空に現れた[UFO]は、テレビ局のある東京上空では見えるはずがないと思うが。

そんなわけで失望した本作だが、個人的に嬉しくなった所が一箇所だけ。冒頭、少女時代の米がUFO?の墜落を見るシーンのロケ地の海岸が、私の地元(あの島は伊吹島という)だった事(って、他の人には全然関係ないネタなのですが(笑))。

監督の同郷人としては、厳しくカツを入れておきたい。     (採点=★★

 ランキングに投票ください → ブログランキング     にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| | コメント (0) | トラックバック (14)

« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »