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2010年5月 5日 (水)

「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」

Zebraman2 2010年・日本:東映
監督:三池 崇史
脚本:宮藤 官九郎

6年前に、同じスタッフ・主演で製作された「ゼブラーマン」の続編。

舞台は前作から15年後の2025年、東京は新都知事、相原(ガダルカナタカ)が君臨し、ゼブラシティと名前を変え、朝夕5分の「ゼブラタイム」には殺人・犯罪がOKとなる魔都に変貌していた。そのゼブラシティの片隅で、かつて世界を救った男、ゼブラーマンこと市川新市(哀川翔)は記憶を失った状態で目を覚ましたが、丁度その時ゼブラタイムが始まった。新市はゼブラポリスに追いかけられ、銃弾を浴びてしまう…。

前作は、ヒーローにあこがれる冴えない中年男が、子供の為にヒーローになろうと努力を重ね、最後に本物のヒーローになるという、感動の物語なのだが(作品評はこちら)、本作はある意味、かなりおフザケ度合いが高い。前作に素直に感動した人は、少しガッカリするかも知れない。
その分、いつもの三池節は炸裂している。全身黒づくめでエロっぽいゼブラクィーン(仲里依紗)がフェロモンを撒き散らすし、くだらないギャグは随所に登場するし、そしてラストのオチには唖然となる。「DEAD OR ALIVE 犯罪者」「FULL METAL 極道」「極道恐怖劇場・牛頭」等のマカ不思議な三池ワールドにハマっているファンなら狂喜するだろう。そんな人にはおススメである。
反対に、前作に感動し、「これは是非子供と一緒に観なければ」と思ったお父さんは要注意。子供に見せられないシーンがあります(笑)。

(以下ネタバレあり)
冒頭のクレジットからしてフザけている。三池の肩書きはなんと「現場監督」(笑)。クレジットの間、ゼブラクィーンが歌うPVが流れるのだが、これがなかなかカッコよくて一気にノセられる。

それにしても、ついこの間の「時をかける少女」では、清楚で可憐なヒロインを演じていた仲里依紗が、本作では妖艶でパンクなゼブラクィーンを怪演している。とても同じ俳優とは思えない。今年の演技賞を賑わす事は間違いない。

 
前作では、単にシマウマをアレンジしたヒーローだから「白黒つけるぜ」とミエを切っていただけなのだが、本作ではまさに白と黒を、“善悪の象徴”とした発想が秀逸である。

新市は遠心分離機にかけられ(この発想も凄い)、悪の心を持った黒ゼブラと、善の心の白ゼブラに分離してしまう。つまりはゼブラクィーンは、新市の分身であるわけなのだ。この辺りは、黒いスパイダーマンが登場する「スパイダーマン3」や、やはり人間の善悪2面性をテーマとした「ダークナイト」とも共通する、奥深いテーマになりうるファクターなのだが、さすが三池監督、高尚な作品に仕上げる意思は毛頭ない。とことんくだらなく、バカバカしい作品にする事だけに集中している。

クライマックスは、やはり前作に登場した巨大エイリアンとの対決となるのだが、この辺りからお話はかなりいい加減となる。相原の計画は行き当たりばったりだし、ゼブラクィーンはとことん白ゼブラとガチンコ対決するのかと思いきや、共同戦線を張ってエイリアンと対決する方向に向かうのもちょっと拍子抜け。
新市はゼブラクィーンに、「エイリアンを退治するには合体するしかない」と提案する。ここで三池ファンなら即座に「DEAD  OR ALIVE FINAL」のラストの、竹内力と哀川翔の“合体”を想起してしまう所なのだが、新市が取り出したのがなんとまあ[センベイ布団に2つのマクラ]であったのには大爆笑(そんなのドコにあったのだ(笑))。絶妙のタイミングで挿入される“STOP THE AIDS”のテロップも笑える。

ラストのオチも、実にくだらない。「白黒つかないんで、[丸く収めたぜ]」のセリフにも大爆笑。それじゃ落語のオチだよ(笑)。

このラストには異論もあるかも知れないが、三池映画ならアリだろう。そもそも三池監督には、“高く評価されたら、その評価をどん底に突き落としてやろう”というアマノジャク精神がある。

「DEAD OR ALIVE 犯罪者」が、バカバカしいラストにもかかわらず、意外と高評価を受けると、シリーズ最終作「DEAD  OR ALIVE FINAL」では実にくだらない唖然とするエンディングを持って来たりする。前作「ゼブラーマン」が本来は“コスプレおたくの中年オヤジが、熱中し過ぎたあげくに本物の仮面ヒーローになる”というバカバカしいお話であったのに、感動したという賛辞が増えると、こんなバカバカしい続編を作ったりする。本格フィルム・ノワールの佳作「極道黒社会 RAINY DOG」(これも哀川翔主演)の直後に、バカバカしい「FULL METAL 極道」を作り上げてしまう…。それが三池崇史という作家なのである。

まあこの映画は、バカバカしさを楽しむ作品と割り切るべきだろう。仲里依紗のエロいゼブラクィーンぶりを堪能できるだけでも、お金を払った値打ちはある。エイリアンの触手が失神したゼブラクィーンの肌を舐めるシーンは、一昔前のアダルトOAVへのオマージュのようでもある。

前作に登場した名セリフもうまく使われているが、前作の一番感動するセリフ「信じれば、夢はかなえられる」が、うまく使いこなされていなかったのがやや残念。

それはともかく、“くだらないお話を、全精魂込めて一生懸命作る”という事も、私は立派な仕事だと思う。

石井輝男という職人監督がいたが、ポルノだろうとグロだろうとコメディだろうと、とにかく何でも手を抜かずに作っていた。カンフー・ブームの最中に、石井監督の元にカラテ映画を作れというオファーが来た。
とりあえず「直撃!地獄拳」という千葉真一主演のカラテ映画を仕上げたが、あまり面白くなく、自分でも満足出来なかった。だが会社は引き続き続編を作れと言って来た。
そこで石井監督が取った作戦は、これを徹底してフザけたコメディに換骨奪胎する事であった。かくして「直撃!地獄拳・大逆転」という、コメディ映画史上に残るカルト傑作が誕生した。この映画のバカバカしくかつシュールなギャグは今や語り草である。

三池監督は、石井輝男監督の精神を、いい意味で受け継いでいるのではないかと思う。バカバカしさも、突き抜ければカルトに至る事もある。…本作も、そんな作品に位置付けられる可能性を秘めていると言えるだろう。     (採点=★★★★

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