「ファンボーイズ」 (DVD)
2008年・米/ワインスタイン・カンパニー
原題:FANBOYS
監督:カイル・ニューマン
原案:アーネスト・クライン、ダン・ピューリック
脚本:アーネスト・クライン、アダム・F・ゴールドバーグ
「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」公開半年前の1998年を舞台に、同作の公開を待ち切れない熱狂ファンの狂騒ぶりを、パロディ満載で描いた楽しい快作。
DVDスルーの予定だったが、ファンの熱狂的な要望で、東京限定ながら劇場公開に漕ぎ着けたという(なんか最近そんなのが多い(笑))。大阪では当然観れないので、仕方なくDVDで鑑賞。
いやあ、それにしても楽しい。「スター・ウォーズ」のコアなファンであれば絶対に見逃してはいけないのは無論だが、熱烈ファンでなくても、最低シリーズ最初の3作を観ている人なら十分楽しめる。
スター・ウォーズファンが15年間も心待ちにしていた待望の新作「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」公開を半年後に控えた1998年秋。いずれ劣らぬSWオタクのエリック(サム・ハティントン)と仲間たちは、末期ガンでEP1の公開まで生きられないライナス(クリス・マークエット)の「死ぬ前にEP1を観たい」という願いを叶えるため、スカイウォーカー・ランチに侵入しEP1のフィルムを盗み出す計画を立て、大陸横断の旅に出る…。
冒頭から、SWタイトルのパロディが飛び出して笑わせるが、とにかく全編、「スター・ウォーズ」へのオマージュやら小ネタが満載で、それだけでも十分楽しい。
SWファンである事を確認する為、超トリビアなクイズを出し合ったりするのだが、これも楽しい。
エピソード4でのルークのコールサインは?だとか、チューバッカの生まれた星は?なんかは、シリーズ作品を何度も観てる私でも答えられない(笑)。
(以下、少々ネタバレあり)
もっと嬉しいのが、豪華なカメオ出演で、レイア姫ことキャリー・フィッシャーとか、ランド・カ ルリシアン役のビリー・デイ・ウィリアムス等がチラリと出て来た時には、懐かしさでウルウルした。ダース・モールを演じたレイ・バークは警備員役で、棒のような物を振り回してるのがおかしい。ビリー・デイ・ウィリアムスは判事(ジャッジ)役で、名前が“ジャッジ・ラインホルド”なのには笑った。それにしても、「ビバリー・ヒルズ・コップ」以降はパッとしないラインホルド、最近はどうしてるのだろうか。
SW関連だけでなく、なんと「スター・トレック」のカーク船長ことウィリアム・シャトナーが本人役で出て来たのには仰天した。エリックたちに、スカイウォーカー・ランチの内部見取り図やパスワードまで教えてくれるのだ。何で知ってるのかと聞くと、「ウィリアム・シャトナーに不可能はない」(笑)。
首尾よく潜入したスカイウォーカー・ランチの、お宝ルームは、ルーカス映画ファンにはよだれ物。SW関連だけでなく、インディー・ジョーンズの帽子とか鞭とか、はては「ウィロー」の魔法の本まで置いてあるとはねぇ。もっとも、インディーはともかく、「ウィロー」を知ってる人はもう少ないかも知れない。
ライナスの願いがかなったかどうかは映画を観てのお楽しみ。
ラストは、当然ながら「ファントム・メナス」の初公開日の狂騒。多分あんな感じだったんだろうなと納得させられる。
ここで仲間の一人がふとつぶやくセリフにも大笑い。その気持、分かるよなぁ。
まあそんなわけで、「スター・ウォーズ」シリーズを楽しんだ人、愛着のある人なら絶対に楽しめる作品である。
また、単なるパロディ、おフザケ作品に留まってはおらず、仲間の友情にも焦点が絞られているし、“何かに熱狂し、夢中になれる”事の素晴らしさを謳い上げている点も重要である。観終わって、私は意外にもジーンと来てしまった。
本作は、「スター・ウォーズ」ファンだけでなく、若い頃に、特定のジャンルや作品に夢中になった経験がある、すべての映画ファンに捧げる、これは“映画への愛”の素晴らしさを描いた作品なのである。 (採点=★★★★)
(お楽しみはまだある)
この映画は、まだ他にもいろいろとネタがある。観直す度に新たな発見がある映画とも言える。
例えば、スカイウォーカー・ランチの警備員の服装が、ジョージ・ルーカスの出世作「THX-1138」の警官の格好と同じ、というのも、一度観ただけでは気が付かない。
またよく見ると、エリックたちグループの人物像には、ルーカスの最初のヒット作、「アメリカン・グラフィティ」の登場人物たちが微妙に投影されているフシが伺える。
例えば、仲間の一人、ウィンドウズ(ジェイ・バルシェル)は、メガネをかけた風貌からして「アメ・グラ」のチャーリー・マーティン・スミスを思い起こさせるし、末期ガンのライナス(クリス・マークエット)の顔はリチャード・ドレイファスにやや似ている気がする(右)。
彼らは高校時代の仲間たち、という設定だが、高校時代は「アメ・グラ」のような学生生活を楽しんでいたのかも知れない。
ハチャメチャ・コメディであるにも係らず、仲間の一人が死ぬ、という展開も、「アメ・グラ」のラストのテロップを思い起こせば納得出来る。
そう考えると、本作は「スター・ウォーズ」に留まらず、ルーカスのその他の監督作品、とりわけ「アメリカン・グラフィティ」へのオマージュも込められている、と言えるのではないか。
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コメント
なるほど。
『アメグラ』へのオマージュか…。
チャーリー・マーチン・スミス、リチャード・ドレイファス。
『ウィロー』の監督もあの映画では俳優。
そういえばポール・ル・マットもいたっけ…。
懐かしすぎます。
投稿: えい | 2010年7月13日 (火) 21:32
◆えいさん
>『ウィロー』の監督もあの映画では俳優。
そう、ロン・ハワードも出てましたね。
あ、そう言えば、「インディー・ジョーンズ」のハリソン・フォードも、「アメ・グラ」に出演してたのを思い出した!
ウーン、結構いろんな所で「アメ・グラ」と本作は、繋がってる気がしますね。
投稿: Kei(管理人) | 2010年7月15日 (木) 23:58