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2010年11月14日 (日)

「ナイト&デイ」

Knightandday2010年・米/20世紀フォックス
原題:Knight and Day
監督:ジェームズ・マンゴールド
製作総指揮:ジョー・ロス、アーロン・ミルチャン、E・ベネット・ウォルシュ
脚本:パトリック・オニール

久しぶりで、少し間が開いてしまった。

なにかと公私共に忙しくて、書き込む時間が取れない。この作品も鑑賞してかなり時間が経っている。細部はもう忘れかけている。

そんなわけで、今回はぐっと簡単に。

「バニラ・スカイ」でコンビを組んだトム・クルーズとキャメロン・ディアスが再び共演するスパイ・アクション・コメディ。監督は昨年「3時10分、決断のとき」という傑作西部劇を発表し脂の乗ってるジェームズ・マンゴールド。

 
前作でも、いろんな秀作西部劇のエッセンスを巧みに網羅して映画ファンを喜ばせたマンゴールド監督、本作も、アメリカ映画の伝統的パターン、スクリューボール・コメディの要素が随所に組み込まれている。

スクリューボール・コメディとは、「常識外れで風変わりな男女が喧嘩をしながら恋に落ちるというストーリーの作品。スクリューボールとは野球における変化球の一種のひねり球で、転じて奇人・変人の意味を持つ」(wikipediaより)。

つまり、偶然出会った男と女が、最初は意見が合わず喧嘩ばかりしながらも、結局一緒に旅(あるいは冒険)を続ける事となり、最後は恋に落ちてハッピーエンド…となるパターンで、有名なのはフランク・キャプラ監督の「ある夜の出来事」(1934)である。

本作品はさらに、ヒッチコック作品でお馴染みの、“巻き込まれ型サスペンス”の要素もブレンドされている。
平凡な人間がある日突然、事件に巻き込まれてしまい、訳も分からず逃げているうちに、やがて反撃に回って真犯人を追っかける(時には異性と恋に落ちたりする場合も)パターンで、ヒッチコックの代表的作品にはこのパターンが多い。

その典型的傑作が「北北西に進路を取れ」(1959)である。実はこの作品には前述の、スクリューボール・コメディの要素も巧みに取り入れられており、そのおかげでヒッチ作品中でも、サスペンスでありながら、ロマンチックで楽しい作品に仕上がっている。

さて、そう考えながら観てみると、本作はこの「北北西に進路を取れ」がかなり下敷となっている事が見えて来る。

(以下はネタバレです。「北北西-」をご覧になっている方のみ反転してください)
“男女のうち、一方は平凡な人間(A)、他方はスパイ機関の人間(B)で、Aがひょんな事からスパイ事件に巻き込まれ、Bと行動を共にしながら逃げるが、やがてAは危地に陥ったBを助ける為に果敢な行動を開始する”…これが「北北西に進路を取れ」のストーリーである。よく似ているのが分かるだろう。但し男女の立場は逆転しているが。

「北北西-」では、男のケーリー・グラントが普通のサラリーマンで、女のエバ・マリー・セイント(ヒッチの大好きな金髪美女)が謎のスパイ、という展開で、やはり時代というか、最後には男がヒーローとなって女を救いに行く、男性優位のパターンであった。

本作では逆に、女の方が次第に逞しく成長して行き、トムを救う、という展開で、女性が強くなった時代を反映していると言えよう。

ちなみに、キャメロン・ディアスも金髪である。これも、ヒッチコックを下敷にしている、というサインなのかも知れない。

そんなわけで、これはロマンチックなスクリューボール・コメディの伝統を今に蘇えらせた作品、として楽しむのが妥当だろう。

なお、粋でダンディなスパイの男が、美女とチームを組んで組織と対決する、という展開では、007ジェームズ・ボンド・シリーズ(特に初期の「ロシアより愛をこめて」「ゴールドフィンガー」辺り)を思い出すと、余計楽しい。特に、二人でバイクに跨り、美女が向かいに座って拳銃を撃つ、というアクションはボンド・シリーズ「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」から拝借していると思えるだけに。

ちなみに、「ロシアより愛をこめて」のヒロイン(ボンドガールと呼ばれる)、ダニエラ・ビアンキ、「ゴールドフィンガー」のヒロイン、オナー・ブラックマンは、共に金髪であった事を知っておくと、また楽しい。  (採点=★★★★

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