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2010年12月31日 (金)

2010年を振り返る/映画界総括

21世紀も、10年が過ぎてしまった。早いものである。今年の最後に、2010年の映画界を総括して見ようと思う。

2010年は、「アバター」の大ヒットもあって、“3D元年”と呼ばれ、多くの3D映画が公開された。
私が本年に入って劇場で観た3D映画は以下の通り。
「コララインとボタンの魔女」(アニメ)、「アリス・イン・ワンダーランド」「タイタンの戦い」「トイ・ストーリー3」(アニメ)、「ヒックとドラゴン」(アニメ)、「THE LAST MESSAGE 海猿」「怪盗グルーの月泥棒」(アニメ)、「トロン・レガシー」

3Dの特性を生かした作品もあれば、別に3Dでなくても、と思えるような作品もある。
「ヒックとドラゴン」や、「トロン・レガシー」などは、さすがに立体性を生かした躍動感があって楽しめたが、「コララインとボタンの魔女」「THE LAST MESSAGE 海猿」などは、どこが3Dだったのかほとんど印象にない。2Dで十分だろう。

また「バトルロワイヤル・3D」のように、2Dで作られた過去の旧作をCG処理で3Dに加工する作品まで現れた。また、これまでは、3D版とあわせて2D版も並行して公開していたが、作品によっては、3D版だけしか公開しないというものも出てきた。
さらに、2011年には、時代劇「切腹」を、3Dでリメイクする、というニュースまで飛び込んで来ている。
ここまで来ると、さすがにどうかと思う。「切腹」は橋本忍脚本、小林正樹監督による格調高い名作で、これを、見世物の延長(と私は思っている)とも言うべき3Dで映画化する意味が分からない。上記作品群を見ても、ほとんどがファンタジー、SF、アニメであり、3Dは、せめてそうしたジャンルに留めるべきではないか。2011年は、3Dの意義について、もう一度考え直す年にすべきだと思う。

 
2010年の特徴としては、日本映画において、時代劇が数多く作られた点でも記憶に残る。

かつては、製作費がかかり過ぎる、という点で、時代劇製作が激減した時期があった。ここに来て時代劇が増えて来ているのは、時代劇ファンとしては喜ばしい事である。
さらに、昨年作られた時代劇は「GOEMON」「TAJOMARU」「カムイ外伝」と、ことごとくトホホなものばかりでガッカリしたものだが、本年は後半に「必死剣鳥刺し」「十三人の刺客」「武士の家計簿」「最後の忠臣蔵」と傑作、力作が目白押しで、時代劇復調を印象付けた。おそらくこれらは、各種ベストテンでも上位を賑わすものと思われる(「十三人の刺客」はヨコハマ映画祭ではベストワンに輝いた)。その他「花のあと」「桜田門外ノ変」も悪くなかった。

来年も時代劇はいくつか作られそうだが、企画を厳選して、質の高い作品を作っていただきたいと切に願う。前述の「切腹」がどんな出来になるか、「十三人-」の三池崇史監督だけに期待したいが、3Dは正直言って観る気は起きない。もっとも主演があの海老蔵だけに、違う話題を巻き起こしそうだが(笑)。

 
リメイク作品も邦洋問わず、相変わらず目立った。ざっと挙げただけでも、日本映画:「時をかける少女」「座頭市 THE LAST」「鉄男 THE BULLET MAN」「カラフル」「十三人の刺客」「死刑台のエレベーター」「ゴースト もういちど抱きしめたい」「SPACE BATTLESHIP ヤマト」
外国映画:「タイタンの戦い」「エルム街の悪夢」「イエロー・ハンカチーフ」「ベスト・キッド」「ロビン・フッド」
変わった所で、にっかつロマン・ポルノ「団地妻 昼下がりの情事」のリメイク、というのもあった。

「時をかける少女」、「座頭市」、「鉄男」はリメイクというより、コンセプトのみいただいてお話はオリジナル。そういうものなら洋画にも「シャーロック・ホームズ」があった。

結局は、オリジナル・アイデアが枯渇しつつあるという事なのだろう。また特徴としては、「死刑台のエレベーター」、「ゴースト」、「イエロー・ハンカチーフ」(オリジナルは「幸福の黄色いハンカチ」)と、邦洋のクロスバーターが目立った年でもあった。しかしどれも成功しているとは言いがたい。「死刑台のエレベーター」などは批評にも書いたが、携帯もハイテクもなかった時代でこそ成り立った話を無理に現代に持って来た為に破綻が生じてしまっている。
やはり映画は、その時代の空気を敏感に反映してこそ傑作が生れるのではないかと、強く思う。小説の世界では、オリジナルの傑作がどんどん作られているのだから、小説やアニメを原作に作品が作れる映画は、よりオリジナルを目指して欲しいと思う。

 
時代の空気と言えば、「告白」「悪人」の2本の映画が話題を振りまいた。この2本は、最近のヒット作品のパターンである、テレビ局の息が全くかかっていないにもかかわらず、大ヒットとなった。質的にも、多くの映画賞のトップを争っている。そして何よりこの2本をプロデュースしたのが、東宝の31歳の若手プロデューサー、川村元気氏であるという点が最大のポイントである。

題材としてはやや暗いうえに、アイドルスターが出演しているわけでもなく、企画としてはかなり冒険である。下手をすれば、ミニシアター系で細々と公開されても不思議はない。さらにテレビ局の支援や大量宣伝もない。
この状況で、若手監督を積極起用して、クオリティの高い作品に仕上げ、その質の高さを前面に出して、興行的にも大成功を収めた。これは、素晴らしい快挙である。

昔から、ベストテン上位作品は興行的に低調、興行上位作品は質的に低レベル、という状況が当り前であった。――なにしろ映画全盛時代ですら、大手映画会社の社長が「評論家が誉める映画は当ったためしがない」と嘯いていたくらいなのだから。

この2本は、そういった状況に風穴を開けた、と言えるのではないか。個人的には映画界十大ニュースのトップに挙げたいくらいである。川村プロデューサーの頑張り、それをバックアップした東宝上層部にも、故大沢親分ではないが、アッパレを差し上げたい。

 
一時は作品的にも興行的にも低迷し、興行収入において洋画に大きく水を開けられていた日本映画も、テレビ局バブルを通過して、ようやく本格的に復活した、と言えるのではないか。喜ばしい事である。

来年も、この調子を持続し、質の高い作品を作り、それを積極的にPRして興行的成功に結びつけ、“いい作品を作れば報われる”という風潮を定着させて欲しいと思う。

 
というところで、来年もよろしくお願いいたします。よいお年を。

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コメント

高峰秀子さんが、お亡くなりになられたのに、どうして取り上げないのでしょうか?

投稿: harappa5 | 2011年1月 3日 (月) 01:07

◆harappa5さん

高峰秀子さんについては、前日の追悼編に書かせていただいてます。

投稿: Kei(管理人) | 2011年1月 3日 (月) 02:09

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