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2010年12月19日 (日)

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」

Sbyamato2010年・日本/セディック・ROBOT=東宝
監督・VFX:山崎貴
原作:西崎義展
脚本:佐藤嗣麻子

1974年にテレビ放映され、当初は低視聴率だったものの根強いファンの後押しでジワジワと人気が上昇し、社会現象にまでなったSFアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の実写映画化。監督は「ALWAYS 三丁目の夕日」で名を上げた山崎貴。

西暦2194年、謎の異性人ガミラスの攻撃によって地球は放射能で汚染され、生き残った人類は地下で生活していたが、地球は刻一刻と、滅亡の日を迎えつつあった。そんなある日、14万8千光年彼方の大マゼラン星雲にあるイスカンダル星から届いたメッセージを頼りに、人類最後の希望を託して、宇宙戦艦ヤマトがイスカンダル星を目指して旅立った…。

オリジナルは全26話からなる連続テレビ・アニメで、私はかろうじて再放送で何話かを見ている。
毎回、ガミラス軍と戦い、幾多の難関をくぐり抜けながら、イスカンダルへと向かう壮大な旅の物語であり、その旅を通して、若者たちが成長して行く物語でもあった。テーマ的には後の、「ロード・オブ・ザ・リング」とも通じるものがあったと、今にして思い当たる。

ヤマトが旅立ってから1年後が、地球滅亡のタイムリミットであり、毎回ラストで「地球滅亡まであと○○日」というテロップが出るのがお約束であった。

後に1977年に、テレビシリーズを2時間10分に編集した劇場版が公開され、これがアニメとしては空前の大ヒットとなってヤマトブームが巻き起こる。監督はテレビ版で構成・監修を担当した舛田利雄が当った。

で、本作は、その劇場版の1作目をほぼ踏襲した作りで、エンディング部分には劇場版第2作「さらば宇宙戦艦ヤマト」のラスト・シークェンスも盛り込まれており、オリジナルの名セリフや、泣かせる名シーンも随所に網羅されていて、オリジナルを知るファンにはなかなか楽しめる出来であると言える。

だが、この壮大な物語を、わずか2時間18分でまとめている為、展開がどうしても駆け足になってしまっている。なんだか、あっという間にイスカンダルに着いてしまったような感があり、古代進と森雪のラブシーンも、多くの観客は唐突感を抱いた事だろう。

脚本を書いた佐藤嗣麻子は、「K-20 怪人二十面相・伝」でも、いろんなパロディやオマージュをてんこ盛りにして楽しませてくれたが、本作もアニメ「宇宙戦艦ヤマト」へのオマージュは無論のこと、他にもいろんなSF映画へのオマージュを随所に散りばめ、それなりに楽しめる作品にはなっている。
が、その分、きめ細かい人間描写がおざなりになったのでは本末転倒である。古代の心の成長や、古代と森雪との愛の変遷を丁寧に描いた上で、なおかつ余裕があればオマージュも、という作りにすべきではなかったか。

本来はこの物語は、やはりテレビシリーズのように、ゆっくり時間をかけて描くべきものであろう(最初の劇場版第1作も、やはり駆け足感は否めなかった。テレビシリーズを見ていたファンは脳内補完出来るからまだ良かったが)。
当初は未熟な若者たちが、試練を乗り越えるごとに次第に人間的にも成長し、古代と雪との愛も、長い時間をかけて育まれて行ったのである。…それがテレビシリーズ1作目の魅力でもあった。

この作品を、オリジナルを知っているファンにも、初めて観る観客にも満足出来る作品にする為には、「ロード・オブ・ザ・リング」と同様に、3部作くらいの長時間サーガにすべきではなかったか。「20世紀少年」の例があるように、無理な話ではないと思う。そこが残念ではあった。

VFXは、白組が担当しているだけあって、さすがにレベルが高い。欲を言えば、ヤマトの航行シーンや、砲撃シーンにもう少し重量感があればなお良かった(例えば、ヤマトの全景をカメラが延々と甞めたり、砲撃の後、砲身が反動で引っ込むリアクションがあるだけでもかなり違う)。

デスラー総統をはじめとするガミラス星人を、アニメ版のような人間サイズではなく、精神生命体のような存在に変更したのは、ある意味では仕方がない。顔が真っ青なデスラーが実写で出てきたら、学芸会みたいで笑ってしまうだろう。
以前、アニメで有名な「ポパイ」を、ロビン・ウィリアムス主演で実写映画化した事があったが(監督がなんとロバート・アルトマン!)、腕を特殊メイクで超ぶっとくしてるのがもうバカバカしくて力が抜けてしまった。市川崑監督が手塚治虫の「火の鳥」を実写映画化した時も、鼻のバカでかい猿田彦を若山富三郎に特殊メイクで演じさせていたが、やはり吹き出しそうになって映画に没頭出来なかった。

やはり、アニメでは問題なくても、誇張したマンガチックな表現は、実写には向かない。どうしても違和感が出てしまう。

しかし、デスラー総統が実体として登場しないのはやはり物足りない。主人公たちの良きライバルとして、主役を食うくらいの強烈な存在感を示す悪役があってこそ、ヒーロー映画は引き立つのである。アニメ版のデスラーはその点、申し分のない見事な悪役(好敵手)であった。
顔を青く塗らなくても、あるいはダース・ベイダーのようにマスクをしてもいいから、実体としてのデスラーは登場させて欲しかった。

 
…とまあ、いろいろ難点や突っ込みどころはあるが、それでもオリジナルを知っているファンにとっては、懐かしく、ところどころウルッと来てしまったのは事実である。
採点としては、オリジナルに愛着があるファンには★★★★、が、オリジナルを知らない観客には★★☆、といった所ではないか。
  で、総合点としては (採点=★★★

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