「RED/レッド」
2010年・米/サミット・エンタティンメント
原題:RED
監督:ロベルト・シュベンケ
原作:ウォーレン・エリス、カリー・ハマー
脚本:ジョン・ホーバー、エリック・ホーバー
ウォーレン・エリス&カリー・ハマーによるDCコミックスの同名グラフィック・ノベルを、ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレンの豪華共演で映画化したスパイ・アクションの快作。監督は「フライトプラン」のロベルト・シュベンケ。
かつてCIAの工作員だったフランク(ブルース・ウィリス)は、今は引退し、のどかな余生を送っていたが、内部機密を知りすぎているという理由でCIAの暗殺対象者になってしまう。フランクはかつての仲間たちと再び手を組み、生き残りをかけて巨大な陰謀に立ち向かって行く…。
スパイ・アクション映画も飽きる程作られ、パターンもほぼ出尽くしたかと思っていたが、どっこい、“引退した元凄腕スパイの逆襲”という手がまだあった。先の「エクスペンダブルズ」といい、中高年世代のオヤジたちが暴れまくる映画が続いているのは、特に同世代のオヤジ観客にとっては溜飲が下がる思いだろう。最近、中高年のオヤジ・バンドがブームになっている事とも一脈通じる所があるのかも知れない。
題名の“RED”とは、RETIRED EXTREMELY DANGEROUS=“引退した超危険人物”を示す。まさにフランクなど、屈強のCIA襲撃部隊に襲われても、平然と全滅させてしまう。そして自分以外のかつての同僚にも敵の手が伸びていると悟ると、その仲間たち=ジョー(モーガン・フリーマン)、マービン(ジョン・マルコヴィッチ)、ビクトリア(ヘレン・ミレン)と連絡を取り、4人で手を組んでCIAに挑戦状を叩きつける。
4人のキャラクター設定が面白い。フランクは凄腕スパイである上に格闘技にも強い、まあジェイソン・ボーンの30年後の姿と言えば分かり易い。ジョーは末期ガンを抱え、老人ホームで余生を送っており、マービンは湿地帯で隠遁生活している変人、ビクトリアは一見優雅な貴婦人だが、銃火器のエキスパート。
チーム・プレイものは、それぞれのキャラが際立っているほど面白い。ジョーは暴れる方は不得手だがチームの知恵袋、マービンは対照的に頭はどっかぶっ壊れてるが暴れると手がつけられない。そしてビクトリアは、見かけによらずマシンガンをド派手にぶっ放して大暴れ。エリザベス女王も演じた事のある名優、ヘレン・ミレン(65歳)が男まさりにアクションをこなすミスマッチが却って痛快。
こういう連中が、それぞれのキャラを十分に生かして、年齢など関係ないとばかりに、派手に暴れてくれるだけでも痛快で堪能させられる。多少の辻褄の合わない点などどうでもよくなる。
何よりいいのは、リタイアして、くたびれかけた中高年オヤジが、“まだまだ若いモンには負けない”と頑張る姿である。
同世代の、例えば“団塊の世代”の人々にとっては、まさに応援歌と言ってもいい。定年になっても、まだまだ人生はこれからだ、と勇気を貰う映画である、とも言えよう。
また、嬉しいのは、CIA記録保管室のヘンリー役で、アーネスト・ボーグナインが出演している点である。「マーティ」(55)でアカデミー主演男優賞を獲ってからでも早や半世紀以上。「特攻大作戦」、「北国の帝王」、「ワイルドバンチ」、「ポセイドン・アドベンチャー」など、記憶に残るアクション映画で活躍した姿が今も目に浮かぶ。当年とって94歳!になるが、あのギョロ目もそのまま、元気な姿が見られただけでも涙腺が緩んで来る。
思えば、ボーグナインの代表作「ワイルドバンチ」もまた、4人組の老人たちが巨大な敵に戦いを挑むアクション映画の傑作だった。ボーグナインを起用したのは、そういうオマージュの意味も含まれているのかも知れない。
あと、「アメリカン・グラフィティ」や「ジョーズ」「未知との遭遇」などで活躍したリチャード・ドレイファス(63歳)とか、「ロング・キス・グッドナイト」などのブライアン・コックス(64歳)等の還暦超えオヤジたちが脇を固めているのもいい。
まさに老人パワー炸裂映画、と言えよう。
高齢化社会が進んで、どんどん老人が増えて行く時代、こうした中高年オヤジが活躍する映画はこれからも増えるだろう。我が国でも、そうしたアクションが作られる事を望みたい。…そう言えば「十三人の刺客」でも松方弘樹(68歳)が年齢を感じさせぬ豪快な殺陣を披露していた。この調子で、往年のアクション・スター…高倉健、菅原文太、梅宮辰夫、千葉真一、小林旭などがチームを組んだ、日本版「エクスペンダブルズ」を是非作っていただきたい、と最後にお願いしておこう(考えただけでもワクワクするなぁ(笑))。 (採点=★★★★)
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コメント
書き込み有り難う御座いました。(レスは当該記事のコメント欄に付けさせて貰いました。)
此の作品を含め、「映画館に観に行こう。」と思っていた物が幾つか在ります。スケジュールが合わず延び延びになっていた所に、今回の大地震。我が襤褸家の状態が心配だし、何よりも他の事に関心が向かわない状態で・・・落ち着いた頃にレンタルして見る事にしました。
投稿: giants-55 | 2011年3月14日 (月) 02:54
◆giants-55さん
丁寧なレスありがとうございます。
別稿で地震の事を書かせていただきました。
一日も早く、落ち着いて映画が見られますように、そして被災された方々が早く元の生活に戻られますよう、お祈り申し上げます。
投稿: Kei(管理人) | 2011年3月21日 (月) 04:10
楽しい映画でした。とにかく配役が豪華。
ジョン・マルコビッチの役のイカレっぷりが楽しいです。
往年の名脇役アーネスト・ボーグナインが出ていたのはオールドファン映画ファンには嬉しいかぎりです。
94歳!にしては若くてかなり元気そうで良かったです。
敬意の感じられる役なのがうれしかったです。
ベテラン俳優を受けて立つCIA役のカール・アーバンはどこかで見たなと思っていたのですが、「ロード・オブ・ザ・リング」のエオメル役だった人ですね。好演でした。
投稿: きさ | 2011年5月22日 (日) 15:22