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2011年3月27日 (日)

「漫才ギャング」

Manzaigyang2011年・日本/配給:角川映画
監督・原作・脚本:品川ヒロシ

初監督作品「ドロップ」で、興行面のみならず作品的にも大成功を収めたお笑い芸人の品川ヒロシが、再び自らの原作を脚色し、監督も務めた異色の青春コメディ。

結成10年目の売れないお笑いコンビ「ブラックストーン」のボケを担当する飛夫(佐藤隆太)は、ついに相方の保(綾部祐二)から解散を宣告されてしまう。ヤケ酒でトラブルを起こして警察に連行された飛夫は、留置場で出会った、日々ケンカに明け暮れるストリートギャングの鬼塚龍平(上地雄輔)にツッコミの才能を見出し、コンビを組もうと強引に誘い、漫才コンビ「ドラゴンフライ」を結成する。新たな目標を見つけてやる気を取り戻した飛夫は、元カノの由美子(石原さとみ)ともヨリを戻し、借金も返済して、ついに迎えた初舞台も見事成功させるのだが…。

デビュー作「ドロップ」は、青春映画の見事な秀作で、私は批評で、“第2回監督作品も是非発表して欲しい。そう思わせる、キラリと光るものが、本作には確かに感じられた”と褒めたのだが、本作の内容を聞いてちょっと不安になった。

というのは、同じお笑い芸人出身の映画監督、北野武や竹中直人らは、シリアスな題材の作品については見事な秀作をいくつも発表しているのだが、得意なはずのコメディ作品を撮ると、途端にグダグダの失敗作(北野=「みんな~やってるか」、竹中=「山形スクリーム」)を作ってしまうのである。

「山形スクリーム」のあまりの酷さに私は、“お笑い出身の監督は、コメディ映画を作るべきではない”とまで断言してしまったくらいである。

そんなジンクスがあるので、品川監督が第2作の題材に、得意分野の“お笑い”を選んだ事に、一抹の不安を抱いてしまったのである。

だが、私の心配は全くの杞憂であった。本作はまたしても、感動を呼ぶ佳作に仕上がっていた。

成功の最大要因は、お笑いを題材にしているとは言え、基本的には“夢を追い求める青春映画”に仕上げている点にある。

お笑い芸人としての成功を夢見る飛夫。だが相方のコンビ解消案に、その夢は潰え去ろうとしている。

片や龍平は、ただ喧嘩に明け暮れるだけで、明日の事も考えていなかった。

その二人が留置所で出会い、飛夫は失いかけた夢を再び取り戻そうとし、また龍平も、こんな自分でも何か夢を持つ事が出来るのではないかと思い始める。
出会いが、二人のそれぞれの人生をも変えようとしているのである。

その彼らを取り巻くさまざまな登場人物も、うまく的確に配置されていて、脇に至るまで無駄がない。
最初はエゲツナイ奴だと思っていた、借金取りの金井(宮川大輔)も、後半になるにつれ、意外にもいい奴である事が分かって来るなど、キャラクター設定がうまい。
ほんのチョイ役かと思っていた、ガンダムオタクの小淵川(秋山竜次)が、最後に意外な形で絡んで来る辺りも秀逸。

龍平が、飛夫の夢を壊さない為に、悪辣な城川(新井浩文)の苛めにもじっと耐える辺りも泣ける。そして終盤、飛夫までも巻き込もうとした城川の卑劣さに、遂に龍平の怒りが爆発し、後始末を金井らに託して城川たちに殴り込みを掛けるクライマックスに至るのだが、よく考えればこれ、昔懐かしい任侠映画の筋書きにそっくり。品川監督、かなりの映画通とみた。

飛夫の内心のモノローグを、モノクロのズームアップで処理したり、前作でもうまく取り入れていた、ハイスピードとコマ落しをミックスしたアクション・シーンなど、絶妙の編集テクニックにも唸らされる。

最後のオチも秀逸。単なるサクセス・ストーリーでなく、夢を追う事の厳しさ(それは自身の体験にも裏打ちされてるのだろう)を描きつつ、それでも夢を捨てない事の大切さもきっちりと訴えている(それにしても最後の相方は誰だ?)。
エンドロールの、ボケとツッコミのカーテンコールも楽しい。品川監督、映画のツボを実によく心得ている。

 
私は、最近のお笑いにあまり興味がないので、楽しめるか心配だったのだが、そんな私でも十分笑え、楽しめた。お笑いに興味がある人も、興味がない人でも、誰でも楽しめる、青春人情コメディの秀作としてお奨めしたい。

それにしても品川監督、北野武でも失敗したコメディ作品でも見事成功している点から見ても、将来は北野武をも上回る、日本映画を代表する一流監督になれる資格は十分である。
お笑い芸人にしておくのはもったいない。是非プロの映画監督の道を歩まれる事を、強く望みたい。   (採点=★★★★

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コメント

これは秀作ですね。☆4つなんてケチくさいことおっしゃらずに、あと0.5くらいは加算してください(笑)

それはさておき、山根貞男氏なんかもキネ旬の評の中で書いてますが、かつての日本映画の良さを感じさせますね。まだ二作目なのに職人的な巧さを感じます。

今の日本映画に、必要な魅力を備えた映画です。

これに、強い社会性でも加わるようになれば、一般的にも名作と呼ばれるものが誕生することでしょう。

投稿: タニプロ | 2011年5月 1日 (日) 00:59

◆タニプロさん
ブログの方、ボチボチでも続けられたら良いと思いますよ。書く事、発信する事も元気の元です。頑張ってください。

>。☆4つなんてケチくさいことおっしゃらずに、あと0.5くらいは加算してください(笑)
いや、そうしたいとは思ったのですが、甘やかしちゃいけないと思い、グッと抑えました(笑)。
品川氏は、もっと凄い秀作を作れる才能を持ってると思います。次回作に大いに期待しておりますよ。☆はその時に取っておきましょう。

投稿: Kei(管理人) | 2011年5月 1日 (日) 22:54

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