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2011年8月23日 (火)

「スーパー!」

Super2010年・米/ 配給: ファインフィルムズ
原題: Super
監督: ジェームズ・ガン
脚本: ジェームズ・ガン
製作: ミランダ・ベイリー、テッド・ホープ

B級ホラー・コメディ製作会社“トロマ”社の出身で「スクービー・ドゥー」「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本を手がけ、「スリザー」で監督デビューしたジェームズ・ガン監督によるアクション・コメディ。低予算のマイナー作品にもかかわらず、共演者がエレン・ペイジ、リブ・タイラー、ケヴィン・ベーコンと豪華なのも注目。

冴えない中年男、フランク(レイン・ウィルソン)は、美しい妻サラ(リヴ・タイラー)と暮らしていたが、サラがドラッグディーラー、ジョック(ケヴィン・ベーコン)に誘惑され、家を出てしまう。フランクはサラを取り戻すため、自ら手作りのコスチュームを身にまとった正義のヒーロー「クリムゾン・ボルト」に変身。勝手に売り込んで来た相棒ボルティー(エレン・ペイジ)と共に、ジョック一味に闘いを挑むのだが…。

 
超能力パワーも金もない冴えない男が、ヘタレなコスチュームを身に付け、町のチンピラをボコボコにやっつけ、正義のヒーローとして名乗りを上げる。そこにこれも自前コスチュームで身を固めた少女が助っ人に参加する…という展開。あれあれ、昨年暮公開され大人気となった「キック・アス」の二番煎じじゃないか、と思ってしまう…のだが、主人公がくたびれてお腹も出た中年男であり、何の取り柄もないが、妻を誰よりも愛している、というのが大きな相違点(なお、脚本が書かれたのは2002年頃で、「キック・アス」に触発された訳ではないようだ)。

お話の方も、次第に「キック・アス」とはちょっと違う方向に進んで行く。グロいシーンも多いし、ペイジ扮するボルティーはハイテンションではしゃぎまくり、フランクに無理矢理セックスを迫る過激っぷり。フランクが「クリムゾン・ボルト」に変身するきっかけも、脳内妄想で神の啓示を受けたから、というのもどっかヘンである。このシークェンスで頭蓋骨が開き、脳が露出するシーンも、グロいけどおかしい。さすがは「悪魔の毒々モンスター」等のぶっ飛びグロ・コメディを量産したトロマ社出身、ジェームズ・ガン監督ならではである。

ちなみに、フランクがミシンでコスチュームを縫っているシーンでは、我が三池崇史監督の、やはり中年男がスーパー・ヒーローになる「ゼブラーマン」(2004)を思い出した。海外でも人気が高い三池作品、案外本作にリスペクトされているのかも知れない。

 
だが、話のメインとなるのは、悪党に妻を奪われた男が、愛する妻を奪還する為に必死で闘う、という点で、主人公ディヴ(アーロン・ジョンソン)が、スーパー・ヒーローになりたい、という願望を実行してしまうオタクな「キック・アス」とはそこが違う。むしろ相棒のボルティーの方がディヴに近いオタクぶりだ。

そしてクライマックス、フランクとボルティーは様々な装備を携え、ジョックのアジトに殴り込みをかける。ここでも相当エグい殺戮シーンが続き、そしてボルティーは悲惨な事に。

このシークェンス、どうやらマーティン・スコセッシ監督「タクシー・ドライバー」へのオマージュが仕込まれている、と私は睨んだ。あの作品のクライマックスで主人公トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)は少女(ジョディ・フォスター)を救い出す為、やはりいろんな武器を携えて殴り込みをかける。このくだりで袖口に小型の銃を仕込み、手首を曲げると弾丸が発射されるシーンがあるのだが、本作でも袖口から金属片が飛び出す細工をして、ジョックに命中させるシーンがある。敵をぶち殺すクライマックスの凄惨ぶりも共通している。

ラストもシニカルでせつない。せっかく妻を助けたのに、ハッピー・エンドにはならず、フランクは一人ウサギを抱いて涙ぐむ。

クリムゾン・ボルトに扮したフランクは、街なかの不正に対し、レンチで相手をボコボコにしてしまうのだが、本人は正義を遂行しているつもりでも、傍目から見れば無茶苦茶な暴力でしかない。ボルティーはさらに輪をかけて残虐な暴力を繰り返す。

暴力は所詮暴力なのである。“正義”という大義を振りかざせど、やっている事は怒りにまかせた自分勝手な暴挙でしかない、という点をこれほど鋭く皮肉った作品は珍しい。“妻を救出する”という目的があったフランクはまだしも、目的もなく暴れる事しか考えてなかったボルティーが悲惨な最期を遂げるのも、当然の結果なのだろう。
あるいはこの物語は、アメリカがイラクやアフガニスタンで繰り広げた、正義という名の戦いへの痛烈なアイロニーなのかも知れない。

そう言えば、「タクシー・ドライバー」のトラヴィスはベトナム帰りだった。アメリカの、“正義の戦争”に疑問符が呈示された頃という、時代的にも両作品には共通項がある。「タクシー・ドライバー」を引用しているのは、そこら辺も意識しての事だとしたら、本作は意外と奥が深い。

笑いつつも、いろいろと考えさせられる、これはなかなかどうして、したたかな問題作なのである。      (採点=★★★★

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コメント

なるほど。「タクシー・ドライバー」ですか。
かなりシニカルというか、ある種オトナの映画だと思いました、
ですがなかなか面白かったです。
スーパーヒーローコメディという事で、どうしても『キック・アス』と比べてしまう訳ですが。
割とスプラッタ的描写が多いのは好みが分かれるかな。
レイン・ウィルソンは中年男の悲哀を感じさせました。
エレン・ペイジは良くこんな役を引き受けたなあと思いました。
ノリノリで演じていましたが。
ケヴィン・ベーコンも楽しそうにいやな役を演じてましたね。

投稿: きさ | 2011年8月24日 (水) 05:26

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