天六ユウラク座の閉館に思う
大阪の映画ファンに馴染みの深かった、北区天神橋6丁目の名物映画館「天六ユウラク座」(と地下のコクサイ劇場、有楽地下劇場も)が、本年3月30日に閉館になっていました。
→ 「十三のいま昔を歩こう」ブログより
平成22年7月には、同じビルの5階にあった「ホクテンザ1・2」も閉館しており、その時にも、このままだとユウラク座も長くないのかなあ、とは薄々感じてはいたのですが、やはり来るべき時が来た、という所ですね。これでビル内にあった5つの映画館はすべて無くなってしまいました。寂しい事です。
ここの映画館には、学生時代から本当にお世話になっていました。
場所的には、梅田などの中心部から外れていたので、それほど頻繁には通っていませんでしたが、梅田、難波のロードショー 館では上映してくれないB級映画の珍品を、関西で初公開してくれたりしたので、ありがたい存在でした。
最近数年間で、ここで観たものを、思いつくまま並べてみます(ホクテンザ分も含む)。
「ワイルド・バレット」 「1408号室」 「さそりinUSA」 「鎧 サムライ・ゾンビ」 「ロボゲイシャ」 「アウェイク」 「ザ・ウォード 監禁病棟」…
いやはや、見事なB級ムービーばかりですね。館内のレトロな雰囲気も含めて、日本版グラインドハウスとも言えます(笑)。
料金も一般より安いうえに、以前は同系列館共通の優待券がスタンプ屋で売られていて、1枚700円程度で購入出来たので、これを買って行ったものです。映画関係の友人からも、優待券をよくいただきました。
ただですら客がほとんど入っていないのに、これでよく現在まで上映を続けて来たものです。支配人さんは相当苦労してたでしょうね。
もっと売上げに協力してあげれば良かったと、今にして思います。
そうそうもう一つ、最近まで、ここは全国でも珍しい、手書きの絵看板(後述)が掲げられていた劇場でもありました。一時はブログなどでも取り上げられ、名物となっていました。数年前に廃止されてしまいましたが。
実は同じ本年3月末に、やはり大阪市内の名画館、東住吉区の「タナベキネマ」も閉館になりました。
→ ニュース記事より
記事によると、タナベキネマ閉館の理由は、赤字というよりは、映画配給のデジタル化が大きな要因なのだそうです。
デジタル化に対応するには、上映機材が1台1000万円ぐらいかかるという事で、これが小さな映画館ではとても捻出できないという事です。
かといってほうっておけば、配給可能なフィルムがどんどん減って行って、プリント入手も困難になる時代がいずれやってきます。由々しき事態です。
ホクテン座閉館の理由も、同じ要因なのかも知れません。
大阪だけに留まらず、これは今のフィルム映写機を持つ、全国の映画館、上映施設(ホール等)にとっても重大な問題でしょう。
いずれは、フィルム上映がなくなる時代が来るでしょう。その時には、全国の小さな2番館、名画座もすべて壊滅してしまうかも知れません。
時代の流れ、では片付けられません。私個人の意見ですが、名画座は単なる上映施設だけでなく、映画文化、映画ファンの育成の場でもあると思うのです。
大げさかも知れませんが、名画座の消滅は、歴史的・伝統的な文化が滅びる事を意味するとさえ言えるでしょう。
もっと業界全体、あるいは文部科学省などが音頭を取って、フィルムの保存、零細映画館への財政補助も考えて行くべきではないでしょうか。
(おマケ)
ユーチューブに、天六ユウラク座の、ありし日の絵看板が動画でアップされていますので、紹介しておきます。
天六ユウラク座・懐かしの映画看板集
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