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2012年9月22日 (土)

日活映画ベスト20

朝日新聞土曜日の「beランキング」で、日活映画の投票によるベスト20を掲載していたので、紹介しておきます。
そういえば、今年は日活映画創立100周年になるのですね。

これは、読者によるウェブサイトへのアンケートで、編集部でリストアップした120本の中から、好きな作品を10本まで挙げてもらった回答を集計した結果だそうだ。参加者は1791人。
120本じゃ少な過ぎると思うのだが。それに、どうも大事な作品が漏れている気がする。

結果は以下の通り。

1位「キューポラのある街」 (浦山桐郎監督)1962年
2位「ビルマの竪琴」 (市川崑監督)1956年
3位「青い山脈」 (西河克巳監督)1963年
4位「戦争と人間・3部作」 (山本薩夫監督)1970~73年
5位「愛と死をみつめて」 (斎藤武市監督)1964年
6位「伊豆の踊子」 (西河克巳監督)1963年
7位「陽のあたる坂道」 (田坂具隆監督)1958年
8位「太陽の季節」 (古川卓巳監督)1956年
9位「嵐を呼ぶ男」 (井上梅次監督)1957年
10位「にあんちゃん」 (今村昌平監督)1959年
11位「路傍の石」 (田坂具隆監督)1938年?
12位「狂った果実」 (中平康監督)1956年
13位「野球狂の詩」 (加藤彰監督)1977年
14位「あゝひめゆりの塔」 (舛田利雄監督)1968年
15位「あしたのジョー」 (長谷部安春監督)1970年
16位「潮騒」 (森永健次郎監督)1964年
17位「ギターを持った渡り鳥」 (斎藤武市監督)1959年
18位「宮本武蔵・3部作」 (稲垣浩監督)1940年?
18位「幕末太陽傳」 (川島雄三監督)1957年
20位「八月の濡れた砂」 (藤田敏八監督)1971年

・・・なんだ、このベストは?!?

いったいどんな120本なんだよ。「野球狂の詩」や「あしたのジョー」が120本の中に入るほどの作品かよ。抽出した人のセンスを疑う。
赤木圭一郎、渡哲也主演作が1本もないのも気に入らない。

まあ、思い入れのある作品は人それぞれだから、それに紹介された方の年齢層(50歳以上が多い)からみても、私のような根っからの映画ファンではなく、誰もが映画を観ていた昭和30年代に青春を送った一般大衆の方が主に参加しているのだろうから、映画史的に重要な作品が入っていなくても仕方はないのかも知れない。

上記のうち、1,3,5、6、14、16位が吉永小百合主演作品。この結果から見ても、当時“サユリスト”と呼ばれた団塊世代の参加が多いのだろう。まあ分からんでもないが。

しかし、18位の「宮本武蔵・3部作」、こりゃなんだ。日活作品で「宮本武蔵」と言えば、1940年の稲垣浩監督作(片岡千恵蔵主演)くらいしかない。こんなのを137人(投票者)もの人が観ているはずがない。ひょっとしたら、三船敏郎主演の東宝作品(54~56年)か中村錦之助主演の東映作品((61~65年)と感違いしてる人もいるかも知れない。
11位の「路傍の石」も不思議。こっちはもっと古く1938年作品だ。私ですらこれは見ていない。これも戦後の東宝、東映作品と混同している人が多いかも知れない。こんなのを120本に入れてるからには、山中貞雄の傑作「丹下左膳餘話・百萬両の壷」も入れてるんだろうな。入れてたら20位から漏れるはずがない。…て言うより、戦前作品はそもそも外すべきだろう(まさかリストアップした人も三船敏郎主演作を日活作品と勘違いしてる事はないでしょうな)。

そんなこんなで、日活ファンであった私には非常に疑問の多いベスト20であった。

てことで、参考までに私が選んだ日活映画ベスト20を以下に列挙。あくまで私の基準です。なお、戦前作品と、1971年の日活ロマンポルノ製作開始以降の作品は外してあります。

 
1位「けんかえれじい」 (鈴木清順監督)
2位「紅の流れ星」 (舛田利雄監督)
3位「八月の濡れた砂」
4位「幕末太陽傳」
5位「キューポラのある街」
6位「狂った果実」
7位「私が棄てた女」 (浦山桐郎監督)
8位「神々の深き欲望」 (今村昌平監督)
9位「ビルマの竪琴」
10位「東京流れ者」 (鈴木清順監督)
11位「反逆のメロディー」 (澤田幸弘監督)
12位「日本列島」 (熊井啓監督)
13位「刺青一代」 (鈴木清順監督)
14位「野良猫ロック・セックスハンター」 (長谷部安春監督)
15位「赤い殺意」 (今村昌平監督)
16位「無頼・人斬り五郎」 (小沢啓一監督)
17位「赤い波止場」 (舛田利雄監督)
18位「赤い夕陽の渡り鳥」 (斎藤武市監督)
19位「紅の拳銃」 (牛原陽一監督)
20位「嵐を呼ぶ男」

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※DVD 朝日beランキングのベスト3

キューポラのある街
ビルマの竪琴
青い山脈

 
こちらは私のベスト4 (「紅の流れ星」はDVD未発売。発売強く希望)

けんかえれじい
八月の濡れた砂
幕末太陽傳

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コメント

確かに朝日のベスト20はひどかったですね。
映画を分からない人がベストを組んでしまうとなってしまう壊滅的ベストでした。
Kei様のまともなベスト20を拝見して心が洗われました。

投稿: きさ | 2012年9月23日 (日) 08:09

◆きささん
ご賛同いただき、ありがとうございます。

付記しますと、半数以上は私がリアルタイムで観て、心から感動した作品が中心です。
4、5、6、9位作品も素晴らしい作品と思いますが、いずれもリアルタイムでなく、後に名画座等で観た作品ですので順位が低くなってしまった次第です(それでも感動しましたが)。
17~20位も同様、名画座にて鑑賞。

やはり映画は、同時代にリアルタイムで観て、当時の自分の心情、時代の空気感も含めてトータルに心に染み入って来なければ、正しく評価出来ないと思っておりますので。

そんなわけで、戦前作品は、「丹下左膳餘話・百萬両の壷」(山中貞雄)、「鴛鴦歌合戦」(マキノ雅弘)、「赤西蠣太」(伊丹万作)なども愛着ある作品で(いずれも名画鑑賞会等でスクリーンで観てます)、ベストに入れたかったのですが、あえて外したわけです。朝日ランキングで戦前作品(ですよね?)が入ってる事に違和感があったのは、そんな理由もあっての事です。以上補足まで。

投稿: Kei(管理人) | 2012年9月23日 (日) 13:34

こんにちは。日活映画ですが、「キューポラ・・」は小百合が朝鮮に帰還する友達と別れルシーンが悲しい。友達の行く末を考えると特に。「けんかえれじい」は高橋英樹が浅野を思って自慰するところが健気で笑える。「刺青一代」は色彩美の極地。和泉雅子が洗濯しながら唄を歌うところが好きだ。「八月・・」は石川セリの歌が流れたら涙が出た。「反逆のメロデー」原田のサングラが格好いい。「斬込み」は日活版仁義なき・・だ。「日本列島」は芦川いずみが宇野重吉に流す涙が素敵だ。「野良猫・・」は芦川の旦那・藤の日活での代表作。「紅の拳銃」はプロットはチャップリンの「街の灯」のパクリだが、列車ですれ違う笹森が赤木をわからないのには泣けた。小沢の中国人が笑える。「無頼・・」は渡・小澤啓一の日活での代表作。「悪太郎」は清順ブレイク前の作品で和泉・山内主演作。山内賢がいい。峰重義のモノクロのカメラ撮影が素晴らしい。「ネオン警察シリーズ」も好き、小林旭主演、日活最後の作品。以降ポルノへ。

投稿: 広い世界は | 2022年5月19日 (木) 10:30

◆広い世界は さん
広い世界はさんも古い日活映画がお好きなようですね。挙げられた中で「斬り込み」(澤田幸弘)、「悪太郎」も大好きな作品なのですがどうしても20本からははみ出してしまいました。こういうベストをあれこれ挙げ出すとキリがありませんね(笑)。
「ネオン警察・ジャックの刺青」は脚本が鈴木清順門下の大和屋竺、曽根中生、監督がこれも清順の助監督だった武田一成という事もあって、至る所に清順を思わせる遊び、キザなセリフ満載の楽しい映画でした。「カゼ引くな」「腹こわすな」の掛け合いは名セリフですね。この作品についてはHPの方の上映会紹介でも近々掲載の予定です。

投稿: Kei(管理人 ) | 2022年5月21日 (土) 10:07

「悪太郎」は後の鈴木清順作品とは違い、まともな映画です。主人公の今野東吾(山内賢)も反権力の真っ当な男です。恵美子(和泉雅子)は東吾を慕っており、二人のシーンは見ていて切なくなるほどの悲しさがある。恋なのだから少しは甘いところがあってもいいのに。東吾がどんなに頑張っても二人は幸せにはなれないのです。悲恋です。これを演じられるのは吉永、笹森、芦川、松原ではなくて和泉だと判断したのはだれなのか。和泉が泣くときは子供のように泣く。そこが大人の泣き方をする他の女優とは違うと思う。和泉が泣くと、僕はとても悲しいのだ。「悪太郎」は和泉雅子が相手役で良かった。和泉の泣き方は彼女の武器だと思います。

投稿: 広い世界は | 2022年5月22日 (日) 00:52

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