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2012年10月30日 (火)

「アウトレイジ ビヨンド」

Outragebeyond2012年・日本/オフィス北野
配給:ワーナー・ブラザース、オフィス北野
プロデューサー:森 昌行、吉田多喜男
監督:北野 武
脚本:北野 武
撮影:柳島克己
衣装:黒澤和子
編集:北野 武、太田義則
音楽:鈴木慶一

北野武脚本・監督・主演で悪人同士の壮絶な権力争いを描いたバイオレンス映画「アウトレイジ」の続編。出演者も前作で生き残った三浦友和、加瀬亮、中野英雄、小日向文世らが続投する他、関西組織の幹部役で西田敏行、塩見三省、神山繁らが新たに参加している。

関東最大の暴力団組織・山王会の抗争から5年。山王会のトップに座った加藤(三浦友和)は着々と勢力を拡大し、かつて大友(ビートたけし)の部下だった石原(加瀬亮)を配下に置いて政治の世界にも手を伸ばしていた。そんな山王会の壊滅を画策するマル暴刑事の片岡(小日向文世)は、関西に勢力を持つ花菱会に目をつけ、加藤を快く思っていない山王会古参幹部・富田(中尾彬)たちを焚き付けて花菱会会長・布施(神山繁)と手を結ばせ、両者を対立させようと陰謀を企てるが…。

北野武監督作品としては、多分初めての続編もの。
前作も面白かったが、前作は“ズルい奴がノシ上がって、成功する”所で終っていたので、面白いけれど映画的カタルシスにやや欠け、ちょっと物足りないかなあ、というのが実感。

似た気持ちの作品を探せば、黒澤明監督の「悪い奴ほどよく眠る」(1960)がある。あれも、スリリングでサスペンスとしては一級品なんだけれど、正義を実行しようとした主人公(三船敏郎)が殺され、悪い奴はヌクヌクと生き延びる、という救いのない物語で、後味はあまり良くない。そのせいか黒澤作品としても評判はいま一つ。

(以下ネタバレあり)
で、本作は前作の全くの続編で、前作で姦計を巡らせたズルい奴らの悪事は露見し、その他の悪党たち共々、ほぼ全員殺られてしまうという、物語としてもきちんと前作のオトシマエをつけた感じでうまく纏められている。

前作に欲求不満を感じた観客も、これでスッキリしたのではないだろうか。

もっとも、ワルとしては一枚うわ手の関西・花菱会がこれで関東も制圧し、より巨悪がはびこっただけ、とも言えなくもないが。

しかし見事なのは、前作と本作を通じて、多彩な登場人物たちのキャラクターが丁寧に描き分けられ、それぞれの思惑・欲望が複雑に絡み合いつつも巧みに捌かれ、ラストに向かって物語がきちんと収斂して行く脚本のうまさである。

初期の頃の北野監督作品は、多少感覚的、いわゆるフィーリングで行き当たりばったり的に描かれた作品が少なくなかったし、個人的には傑作だと思っている3作目「あの夏、いちばん静かな海。」は、当初脚本と言える物はペラ2枚の箇条書きのものしかなく、それを知った大御所脚本家の笠原和夫氏が、「これはシナリオではなく、絵葉書の連続スライドだ」激怒したという。

確かに、膨大な資料を読み漁り、時間をかけて緻密に構築された脚本を作り上げる笠原氏にすれば、これは我慢ならない事であるとは理解出来るし、私もこの笠原氏の言い分もごもっともだと思う。
―ただ、映画というものは、そうした緻密な脚本を元に作られる場合もあれば、フランス・ヌーベルバーグ(ゴダール監督「勝手にしやがれ」等)が一例であるように、ちゃんとした脚本もなく即興で作られても傑作となる場合もあり、北野流映画作りが邪道だとは一概に言えないと思う。

 
「アウトレイジ」
2部作はその点、北野武が相当時間をかけ、綿密に脚本を練り上げた跡が窺える。

特に本作では、さまざまな登場人物があれこれ策略を練り、裏工作、駆け引きを行い、裏切り、裏切られ、滅んで行くという、まさにかの笠原和夫氏が脚本を書いた傑作「仁義なき戦い」をも彷彿とさせる仕上がりになっている。

おそらく北野武自身には、あの笠原批判がどこか心の隅にあったのかも知れない。
よく見れば、随所に「仁義なき戦い」へのオマージュも散見される。

ヤクザ同士が会議や話し合いの席で、互いに大声で怒鳴りあうのは、「仁義なき戦い・代理戦争」などでも登場したシーンだし、ラストの、葬儀にやって来た主人公が拳銃をぶっ放すのは、「仁義-」1作目のラストシーンが思い浮かぶ。

たけし扮するヤクザの名前、大友は、「仁義なき戦い・広島死闘編」で千葉真一が扮した手のつけられない暴れ者の武闘派、大友勝利からいただいた可能性もある。

関西の大組織の進出と対立という展開も、「代理戦争」「頂上作戦」と続く「仁義なき戦い」の構図と似ている。

「仁義なき戦い」と言えば深作欣二監督の代表作だが、その名前から思い浮かぶのは、本来は深作欣二が監督するはずだったが諸事情で降板し、結果として北野武の記念すべき監督第1作となった「その男、凶暴につき」(1989)という作品である。

で、「その男-」を思い返すと、最後に“暴力団とつるむ悪徳刑事”が登場したり、悪が最後に笑うオチといい、「アウトレイジ」との共通点も多い。

さらには「その男、凶暴につき」で強烈な悪を快演した白竜が、本作にも出演している所から見ても、本作は、「仁義なき戦い」のみならず、「その男、凶暴につき」に対してもオマージュを捧げているフシが窺える。

 
ここ数作は、「TAKESHIS’」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」と、やや作品作りに迷いが見えていた北野武監督だが、こうして見ると「アウトレイジ」シリーズは前記からも分かる通り、北野武自身が、監督デビュー作「その男、凶暴につき」初心に回帰した作品であると言えるのかも知れない。

やはり北野武には、バイオレンスとフィルム・ノワールが一番似合うのかも知れない。この路線をさらに突き進め、深作欣二亡き後、後継者不在の、バイオレンス・アクション道の極北を目指していただく事を、切に希望したい。次回作がますます楽しみである。   (採点=★★★★

 
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