「北のカナリアたち」
阪本順治監督は、脚本が良ければ傑作を作るが、出来の悪い脚本だとやはり酷い作品になってしまう。「座頭市 The Last」しかり。やはり映画は脚本次第。
設定は悪くないのだが、一番いけないのは、各人物の掘り下げが足りないし、行動原理に説得力がまるでない点。まず主人公はる(吉永小百合)、死期の近い夫がいるのに、何で赤の他人に構うのか。夫につきっきりでいるべき。その相手仲村トオルも人物像が浅過ぎる。で、不倫を疑われて島を追われるという流れだが、てっきりそれは誤解だった、という結末かと思ったら、本当に不倫だったのには唖然。危険な崖の近くで子供たちとバーベキューやるし(もっと野原とかでやりなさい)、夫はバーベキュー途中で唐突にトオルに会って来いと言うし、生徒の引率責任がある小百合は危険な場所に生徒放ったらかしてまっ昼間にトオルとキスしてるし、およそ行動に無理あり過ぎ。
しかも殺人で逃亡してる生徒の逃亡幇助みたいな事やってるし。そりゃ犯罪でしょ。で、都合よく甘い刑事がいて手錠はずして全員で合唱…。刑事にダメと言われたらどうする気だったんでしょうね(その確率は遥かに高い)。
まあ突っ込みどころを挙げればキリがないが、とにかく主人公に全然共感出来ないのは一番問題。ついでに言うと、20年経過してるのに、小百合も父親役の里見浩太朗も全然老けてないのはメイク手抜き。苦労した60歳の女性はもっと目尻も弛んだりするよ。里見に至っては85歳くらいになってるはずだから、大滝秀治さんくらいに老けてないと(笑)。声だって張りがあり過ぎる。演技指導してるのだろうか。
それにしても脚本の那須真知子、「デビルマン」、「北の零年」というワースト作品を8年前に連発して信頼を失墜、それ以来の執筆だが、懲りてるはずなのに何で東映は又も起用したのだろう。案の定だ。もうこの人には書かせない方がいいと思いますよ。
(採点=★☆)
| 固定リンク
コメント