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2013年7月13日 (土)

「欲望のバージニア」

Lawless2012年・アメリカ
配給:ギャガ
原題:Lawless
監督:ジョン・ヒルコート
原作:マット・ボンデュラント
脚本:ニック・ケイブ
音楽:ニック・ケイブ
製作:ダグラス・ウィック、ルーシー・フィッシャー、ミーガン・エリソン、マイケル・ベナローヤ

1930年代のアメリカ・禁酒法時代を背景に、密造酒ビジネスで名を馳せたボンデュラント3兄弟の実話に基づく復讐劇の映画化。原作を書いたのは兄弟の三男・ジャックの孫であるマット・ボンデュラント。脚本は作曲家であり、本作の音楽も担当しているニック・ケイブ。監督は「ザ・ロード」のジョン・ヒルコート。シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステイン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマン、ガイ・ピアースら豪華キャストが共演している。

1931年のバージニア州フランクリン。密造酒ビジネスに手を染めるボンディランド3兄弟の次男フォレスト(トム・ハーディ)は、シカゴから来た女性マギー(ジェシカ・チャステイン)を家に迎え入れ、三男ジャック(シャイア・ラブーフ)は牧師の娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)に恋をしていた。一方、新しく着任した特別補佐官レイクス(ガイ・ピアース)は密造酒グループに高額の賄賂を要求するが、兄弟はこれを拒否する。言う事を聞かないと見たレイクスは、悪辣な手を使って兄弟の愛する女性や仲間たちに危害を加えて行く…。

実話に基づく、とあるが、ジャックの孫であるマットが、祖父から聞いた武勇伝や噂話などを取りまとめたもので、多分誇張やホラ話なども混じっているのだろう、どことなく、ロジャー・コーマン製作のB級ギャング・アクションや、わが東映任侠映画に肌触りが類似している。そういう意味では、B級アクション映画ファンには楽しめる出来になっている。

ボンデュラント三兄弟のキャラクターがそれぞれに個性的で面白い。「絶対に死なない」という伝説を持っている(これが全編にうまく生かされている)というのもユニークだし、特に次男のフォレスト(ハーディ)が、腕っ節は強く、常に沈着冷静で頼りがいがあるカッコいい(そのクセ女にはオクテ)男を好演。演じるトム・ハーディは、悪役ペインを演じた「ダークナイト・ライジング」ではずっとマスクをしていて顔が分からなかったが、本作で見せた素顔はとても魅力的である。
三男ジャックは実質的な主役だが、腕力は大したことなく、やる事もどことなく危なっかしいという難しい役柄をうまくこなしている。
その2人に比べたら、長男ハワード(ジェイソン・クラーク)がいつも吠え立ててるだけであまり活躍しないのがやや物足りないが、次男を引き立てる為には仕方ない所か。

だが、物語が面白くなるのは、やはり強烈な悪役の存在である。ガイ・ピアース扮する特別補佐官レイクスは、眉を薄くし、真ん中で分け、ポマードで固めた上に短く剃り込んだ髪、というルックスが強い印象を残す。性格的にも惨忍で、賄賂を出さない密造仲間を凄惨なリンチで殺し、死体を羽毛まみれにして晒すという凶悪ぶりである。

そして終盤、身障者だが良質な密造酒製造機を開発する等、ジャックの良き片腕でもあったクリケット(デイン・デハーン)がレイクスによって惨殺された事を知ったジャックが、ついに怒りを爆発させ、単身敵陣に乗り込んで行き、さらに後を追って駆けつけて来たフォレストたちも加勢しての銃撃戦闘シークェンスは、まさに東映任侠映画を彷彿とさせる展開で、任侠映画ファンであった私などは、久しぶりにゾクゾクするような興奮を味わう事が出来た。これだけでも点数が甘くなる(笑)。

ジャックが腹に銃弾を受けながらも、逃げるレイクスに迫り、遂にレイクスを倒すまでの流れも、まさに健サンが手傷を負いながらもラスボスを最後にぶった斬る東映任侠映画そのまんまで、ヒルコート監督はひょっとしたら健サンのヤクザ映画ファンだったのではないかとさえ思えて来る(笑)。
そう言えば、ポマード固め刈上げのヘアスタイルは、東映ヤクザ映画で、悪役に扮する遠藤辰雄がよくやっていた髪型と似ているし、眉を剃った悪役というのも、例えば「仁義なき戦い」の何作目かで梅宮辰夫が眉を剃った役で出ていたり、ピラニアの志賀勝がよく眉なしで悪役を演じていたりと、東映ヤクザ映画ファンには馴染みがある。

…というわけで、傑作とまでは言えないが、かつてのB級アクション映画・任侠映画を愛したファンには、お奨めの佳作である。

ラストの、不死身と言われたフォレストの、何ともあっけない死は、禁酒法が撤廃され、伝説の時代も終わりを告げた事を示しているのかも知れない。

妖艶でエロいジェシカ・チャステイン、対照的に清楚な少女を演じるミア・ワシコウスカも、それぞれ魅力的で作品に花を添えており、また出番は少ないが、実在のギャング、フロイド・バナーを演じたゲイリー・オールドマンの渋いカッコ良さも見どころである。

ただ、「欲望のバージニア」という邦題はつまらない。アクション映画には不似合いで、映画の雰囲気が伝わって来ない。
「三兄弟」と付くタイトルが多かった東映任侠映画(注)にならうなら、「殴り込み三兄弟」、もっとB級っぽくするなら「不死身の三兄弟・決闘!バージニア街道」(うーん'50年代B級映画の香りが(笑))辺りが、よく似合うと思うのだが。DVD発売時には是非候補に入れていただきたい。  (採点=★★★★

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(注)

「三兄弟」とタイトルに付く作品を検索すれば分かるが、そのほとんどが東映のヤクザ映画である。
まず1966年の「兄弟仁義・関東三兄弟」(山下耕作監督)。本作のみならず、東映の三兄弟ものは、ほとんどが実際の兄弟ではなく、義兄弟の杯を交わした仲間たちである(北島三郎歌う主題歌にはこうある「親の血を引く兄弟よりも、固い契りの義兄弟」)。
以下、1969年「懲役三兄弟」(佐伯清監督)、1971年「現代やくざ・血桜三兄弟」(中島貞夫監督)、1972年「人斬り与太・狂犬三兄弟」(深作欣二監督)と続く。後の3本はいずれも菅原文太主演で、特に深作の「人斬り与太・狂犬三兄弟」は傑作である。

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コメント

おっしゃる通り、原作は末弟ジャックの孫が書いた小説で、かなり伝説やフィクションが入っているようですね。
ある種アメリカ的なほら話という感じもありました。
特に末弟ジャックの行動が色々と無茶で、お話の展開にはあまり納得できませんでした。
3兄弟を演じるラブーフ、トム・ハーディ、ジェイソン・クラークはじめ、配役は豪華です。
ギャング役のゲイリー・オールドマンは例によっていいのですが、もうちょっと出番が欲しかった。
最近悪役の多いガイ・ピアースがいかにも憎たらしい悪役を演じていました。
ジェシカ・チャステインが思い切り良く脱いでいるのにちょっとびっくり。
あまり実話という事にこだわらずに見た方がいいでしょうね。

投稿: きさ | 2013年7月14日 (日) 09:44

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