「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」
2013年・英/ユニヴァーサル・ピクチャーズ
配給:東宝東和
原題:Kick-Ass 2
監督:ジェフ・ワドロウ
原作:マーク・ミラー、ジョン・S・ロミタ・Jr.
脚本:ジェフ・ワドロウ
製作:マシュー・ボーン、ブラッド・ピット、アダム・ボーリング、タルキン・パック、デビッド・リード
小規模公開でスタートするも、口コミで評判が広まり、全米大ヒットを記録した「キック・アス」のシリーズ第2作。キック・アス=アーロン・ジョンソン、ヒット・ガール=クロエ・グレース・モレッツ、レッド・ミスト=クリストファー・ミンツ=プラッセが前作に引き続き主演し、ストライプス大佐役でジム・キャリーが新たに参加。前作を監督したマシュー・ボーンは製作にまわり、「ネバー・バックダウン」(2008・日本未公開)で監督デビューした新鋭ジェフ・ワドロウ監督がメガホンをとった。
かつてキック・アスとして活躍したデイヴ(アーロン・テイラー=ジョンソン)は、ヒーローの姿を捨て、平凡な学園生活を送っていた。一方、ミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)も、父の親友マーカスに引き取られ、ヒット・ガールを封印し、普通の女の子として生きるよう勧められていた。しかし、卒業を間近に控え、ヒーローの夢を捨てきれないディヴは、元ギャングで運動家のスターズ・アンド・ストライプス大佐(ジム・キャリー)と出会い、彼に触発された事もあって、やがて志を同じくする仲間たちとヒーロー軍団“ジャスティス・フォーエバー”を結成する。そんな頃、キック・アスに父親を殺されたレッド・ミストは、マザー・ファッカー(クリストファー・ミンツ=プラッセ)と名を改め、悪党軍団を引き連れてディヴへの復讐を開始しようとしていた…。
前作「キック・アス」はマイナー会社の配給により、ミニシアターでひっそり公開されたが、コアな映画ファンから圧倒的な支持を受け、「映画秘宝」誌ではなんとベストワンに選ばれた。勿論本国でも大ヒットとなり、そのおかげで続編となる本作は、めでたくメジャーのユニヴァーサルにより配給され、全国のシネコンで拡大公開される大出世となった。
しかし、うーんなんと言うか、こういうB級テイスト芬々のカルト的作品は、マイナーな立ち位置でこそふさわしいのであって、メジャーになってしまうとかえってつまらなくなってしまうケースが多い。
また、前作はあまり期待していなかったからこそ、拾い物感もあって楽しめたわけで、期待が高まり過ぎてしまうと、その分ハードルが高くなって、気軽に楽しめなくなってしまう事もある。
そんな、期待と不安、相半ばする中で観に行ったのだが…。
まあ、一言で言えば、前作ほどのインパクトはないけれど、期待しなければまあまあ面白く観れる、という所ではないだろうか。
(以下ネタバレあり)
前作はとにかく、“スーパーヒーローでも何でもない普通の高校生がヒーローになりたいと奮闘する”というアイデアが秀逸だった。これはコロンブスの卵である。それプラス、小学生(11歳)の少女が大の男たちをボコボコにする、という発想もユニークで痛快だった。
これだけの事を見せられてしまうと、続編はどう頑張っても意外性や新鮮味は薄れてしまうのは仕方のない所である。
そこで本作では、①あれから3年経ってすっかり成長したミンディの学生生活 ②キック・アスが仲間を増やしてヒーロー軍団を結成し、集団で悪と対決する-という2つの要素を新たに盛り込んだ。
前作ではまだおチビちゃんだったクロエ・グレース・モレッツが、3年の間にすっかり大きくなってしまったので、ちょっと青春学園もののタッチも取り入れてみました、という所である。
養父の刑事であるマーカスから、ヒット・ガールを封印する事を誓わされ、普通の女の子として暮らすべきか悩むシーンもあるのだが、その分テンポが緩くなってしまってるのはマイナス・ポイント。
前作の面白さは、ひとえにチビガキが無茶苦茶に暴れるデタラメさ、荒唐無稽さにあったわけで、まあ流れとして分からなくもないが、余計だった気がする。
仲間が増え、ヒーロー軍団を結成するというのも、うまく描けば面白くなると思うのだが、あまり生かされているとは思えない。
結局最後は、キック・アスとヒット・ガールがそれぞれ強敵と1対1の死闘を繰り広げるのがクライマックスとなるわけだから、他のヒーローたちは居なくてもあまり影響はない。
ジム・キャリーが演じたスターズ・アンド・ストライプ大佐も、大して活躍しないうちに早々と引っ込んでしまったのは拍子抜け。最後まで戦わせて欲しかった。もったいない。
…とまあ、いろいろ難点を挙げたが、それはあくまで前作と比較しての事、バカバカしい笑いは健在で、アクションはパワーアップしている事もあり、前作を忘れてこれはこれで楽しめばいいのである。以下、本作の見どころをいくつか。
まず笑ったのが、敵の助っ人悪役、その名もマザー・ロシア(笑)。
「ロッキー4/炎の友情」におけるロシア人ボクサー、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)といい、「007/ロシアより愛をこめて」における殺し屋グラント(ロバート・ショー)といい、ロシア人の悪役はいつもムキムキで図体のデカい、金髪のマッチョと相場が決まっている。よって本作のマザー・ロシアもそのパターン通りである。一度、“ロシア人悪役の系譜”を調べてみるのも面白いかも知れない。
それにしても、パトカー数台壊すシーンは強すぎる。おまえはターミネーターかと突っ込みたくなる(笑)。
父親を殺されたレッド・ミストが悪のヒーローとなって復讐に燃えたり、ディヴの父親が殺されたり、という辺りは「スパイダーマン」(アメイジングじゃなくてトビー・マクガイア主演の方)を思わせたりもする。
その父親の葬儀中、マザー・ファッカー軍団の襲撃を受け、デイヴは拉致されてしまうのだが、その車の屋根にしがみついたヒット・ガールの一大バトル・シーンはこの映画最大の見もの。それまで守勢でやられっぱなしだったディヴやミンディたちが、ここから一気に反転攻勢となるわけで、スカッとする。「レイダース/失われた聖櫃(アーク)」のパロディもちょっと入っているので、同作品を観た人なら余計楽しめる。
そして、下品さは前作よりさらにパワーアップ。秘密兵器ゲ○ゲ○棒には大笑い。
前作ではからきし弱かったディヴは、ミンディに頼んで特訓してもらい、筋肉もつけて多少は強くなっており、これが、ラストでヒット・ガールの手を借りずにマザー・ファッカーとタイマン勝負するクライマックスに繫がる事となる。
あまり深く考えず、頭をカラッポにして、ちょっと大人になったヒット・ガールのアクションを楽しめばいい。とにかく期待し過ぎない事である。
なお、エンド・クレジット後にもお楽しみがあるので、最後まで席をたたないように。 (採点=★★★☆)
(付記)
プロデューサーとして、ブラッド・ピットの名前がある。前作でもクレジットされていたはず。まもなく公開される社会派ドラマ「それでも夜は明ける」にもプロデューサーとして名を連ねており、今後はプロデュース業にも力を入れるのかもしれない。
が、それにしても、まったく傾向の違うこの2つの作品を同時期にプロデュースするとはね。本人はどっちのジャンルに興味があるのだろうか。その方が気になる。
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コメント
それなりに面白く見ましたが、前作と比較するとちょっとね、、
全作は思わぬ拾いものという印象でしたが。
クロエ・グレース・モレッツがきれいになりましたね。
3作目に期待かな。
投稿: きさ | 2014年3月 5日 (水) 07:58
◆きささん
続編はどうでしょうね。本作でもクロエたんが成長してしまって、1作目の魅力が半減してますものね。
次はもっと大人になってますでしょうからね。別のおチビちゃんに役者交代すべきか、でもクロエたんのアクションも見たいし。うーん悩みます(笑)。
投稿: Kei(管理人) | 2014年3月11日 (火) 01:12