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2014年8月31日 (日)

大阪・千里セルシーシアター閉館

Selcy3また一つ、大阪から名物映画館が消える。

大阪・豊中市の、「千里セルシーシアター」が、8月31日をもって閉館される事となった。

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地下鉄御堂筋線終点・千里中央駅から歩いて3分程、という交通の便の良さ。
私の家からも自転車で行ける距離で、何度かお世話になった。

ロードショー落ちの新作や、古い映画、都心では上映してくれない地味な良心作等を上映してくれる、いわゆる“名画座”で、料金も一般1,300円、学生1,000円と安く、近隣に映画館がない事、交通の便の良さもあって、結構人気があった。

ここは、20年も前に、当時ほとんどなかった「会員制シネマクラブ」を設立し、200人からスタートして、今でも1,200人もの会員を有している。
以後、多くのミニシアターが会員制システムを採用するきっかけにもなった。

収支はほぼトントンだったそうで、なら何故閉館するのかというと、やはり例の、“映画配給のデジタル化”が最大の原因である。

以前に、天六ユウラク座・閉館の記事でも書いたが、デジタル化が進んで多くの映画がデジタル配信されるようになり、デジタル設備のない映画館では、上映出来るフィルムの確保が困難になった事が、名画座の閉館を加速する事態となっている。
新作だけでなく、昔のクラシックな名画ですら、デジタル化が進み、もはやフィルムだけの上映を続ける事は不可能に近くなっている。

デジタル設備を導入するには、1,000万円ほどのコストがかかるので、採算的に厳しい映画館は、閉館しか道が残っていないという事なのである。
残念でならない。
セルシー閉館によって、大阪府内では一部ピンク系を除いて、フィルム上映専門劇場はゼロになったそうだ。

千里セルシーシアターの番組は、大阪では唯一と言えるくらい、良心作、レアなアート系の作品を多く上映しており、そのユニークな番組を知って愛知県や徳島県からも熱烈な映画ファンが遠路はるばるやって来るほどであった。
これは、交通の便の良さも幸いしてるのだろう。何せ新幹線の新大阪駅からは、梅田に出るのと同じくらいの10分少々で着くのだから。

最近の主だった番組を列挙してみると、
2月 「アンコール!」 「クロワッサンで朝食を」
3月 「昼下りの情事」 「情婦」 (ビリー・ワイルダー監督特集)
同  「007/ロシアより愛をこめて」
同  「きっと、うまくいく」 「スタンリーのお弁当箱」
4月 「蠢動」 「ルノワール 陽だまりの裸婦」
5月 「眺めのいい部屋」 「アナザー・カントリー」
6月 「勝手にしやがれ」 「気狂いピエロ」 (ジャン=リュック・ゴダール監督特集)
同  「ハンナ・アーレント」 「もう一人の息子」
7月 「ノスタルジア」 「サクリファイス」 (A・タルコフスキー監督)
8月 「黒蜥蜴」 「黒薔薇の館」 (美輪明宏特集)
同  「天国の日々」 「ひまわり」
そしてラスト・ショーは「最強のふたり」 「おじいちゃんの里帰り」 「クリスマスのその夜に」

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いかがだろうか。映画ファンなら涎が出てくるほどのユニークかつ貴重な作品揃いである。
ビリー・ワイルダーの2本とか、「眺めのいい部屋」、「アナザー・カントリー」、タルコフスキー監督作などはなかなか劇場で観る機会は少ない。それをフィルム上映で観られるというのも貴重である(都心でやってる「新・午前十時の映画祭」もデジタル上映になっているし)。
美輪明宏(当時は丸山明宏)主演作2本なんて、ファンには若い時の美輪さんの美しさを知って驚くだろう(笑)。

こういう、昔見逃した作品、懐かしい名作、公開当時話題となったが今では忘れられてしまったような埋もれた秀作…等を好んでチョイスする、番組編成のユニークさが映画ファンにはたまらない。
ラストショーの地味な番組も、いかにもこの劇場らしい。

昔はこうした名画座は、関西にもいくつかあった。大阪の大毎地下劇場、戎橋劇場、ATGの北野シネマ、神戸の阪急文化、ビック映劇、等々。これらの劇場で、多くの名画、名作を観ることが出来たのは、人生の大切な宝物と言っても過言ではない。
今では、ロードショー中心のミニシアターは数あれど、古い作品を上映してくれる名画座は絶滅状態である。デジタル上映化でさらにそれが加速して行く。寂しい事である。

DVDレンタルや、CS等の有料チャンネルが普及した事で、昔の名画や芸術的作品を観るのに不自由はしなくなった事は確かだろう。
しかし映画ファンとしては、映画はやはり劇場で観たい。暗闇の中で、大きなスクリーンで、臨場感溢れる音響システムで、周囲の観客の反応を感じながら鑑賞する醍醐味は、茶の間のモニターでは絶対に味わえない感動と幸福感がある。ユニークで優れた番組編成を行っている名画座には、公的な助成とかも行って、なんとか存続出来るようにして貰えないものだろうか。前にも書いたが、名画座は、映画文化、映画ファンの育成の場でもあるのだから。

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個人的にはここで、ロードショー館では上映してくれなかった、川本喜八郎、ユーリ・ノルシュテインらが結集した傑作アニメ「連句アニメーション『冬の日』」を観ることが出来たのが一番の思い出。この劇場が上映してくれなかったら、多分これを劇場で観る事は一生なかっただろう。心から感謝したい。

さようなら、千里セルシーシアター…。

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閉館を伝える新聞記事(クリックすると拡大)

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コメント

東京では新橋文化劇場・ロマン劇場が閉まりました。

http://www.cinematoday.jp/page/N0064448

投稿: タニプロ | 2014年8月31日 (日) 22:54

◆タニプロさん
新橋文化劇場・ロマン劇場も8月31日閉館ですか。残念ですね。
ここも35㎜フィルム上映ですか。JR高架下の耐震補強工事の為という事になってますが、デジタル化の波も影響してるのでしょうね。
ラストショーが「デス・プルーフinグラインドハウス」と「タクシードライバー」というのも楽しいですね。
劇場の名前に引っ掛ける訳ではありませんが、こういうユニークな劇場が消える事によって、映画文化、映画のロマンの香りも消えてしまう気がしますね。

投稿: Kei(管理人) | 2014年9月 1日 (月) 00:09

橋本愛、ロマンポルノ&ピンク映画にはまっていた

http://www.cinematoday.jp/page/N0066053

twitterで話題になってるんですが、橋本愛さんは新橋文化・ロマン劇場の常連だったそうです。

投稿: タニプロ | 2014年9月 3日 (水) 20:58

橋本愛さんのinstagramはこれです。

http://instagram.com/p/sbzBpQvJMT/?modal=true

投稿: タニプロ | 2014年9月 3日 (水) 21:01

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