« 「TOKYO TRIBE」 | トップページ | 「柘榴坂の仇討」 »

2014年9月30日 (火)

「るろうに剣心 伝説の最期編」

Rurounikenshin312014年・日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:大友啓史
原作:和月伸宏
脚本:藤井清美、大友啓史
撮影:石坂拓郎
アクション監督:谷垣健治
製作総指揮:ウィリアム・アイアトン
エグゼクティブプロデューサー:小岩井宏悦

前作「京都大火編」も大ヒット中の「るろうに剣心」シリーズの完結編。監督・主演は前作に引き続き大友啓史と佐藤健。その他の出演者も武井咲、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、藤原竜也、神木隆之介と「京都大火編」とほぼ変わらず。また「龍馬伝」で大友監督や佐藤ともタッグを組んだ福山雅治が、剣心の師匠・比古清十郎役で参加している。

日本征服を企てる志々雄真実(藤原竜也)に連れ去られた薫を追って、志々雄の鋼鉄艦・煉獄に乗り込んだ剣心(佐藤健)だが、海に落とされた薫を追って剣心も海に飛び込み、一人岸へ打ち上げられたところを、かつての師匠・比古清十郎(福山雅治)に拾われる。今の自分では志々雄を倒せない…剣心は清十郎に奥義の伝授を懇願する。一方、剣心が生きていると知った志々雄は、政府内務卿の伊藤博文(小澤征悦)に圧力をかけ、剣心を人斬り時代の暗殺の罪で公開打ち首にするよう迫った。その頃、剣心は志々雄に最後の戦いを挑むべく、東京へと向かっていた…。

前作、「京都大火編」には唸った。
チャンバラ映画史の歴史を変えるかの如きスピーディなソード・アクション、それでいて、単なる娯楽映画に留まらず、「殺さずの誓い」を立てた緋村剣心というニューヒーローの、人を殺す事の空しさ、“復讐の連鎖”に対する批判、という現代的なテーマが盛り込まれた内容にも感動した。
まさに、近年まれに見るチャンバラ映画の秀作であった。

その後編である本作にも、否が応でも期待は高まったのだが…。

うーん、期待しすぎたせいだろうか、やや物足りない出来であった。

無論、アクション・シークェンスは前作以上に素晴らしい。次々と登場する激しいチャンバラには興奮させられた。アクションに関しては十分満足出来る仕上がりではある。

だが、1作目や前作に見られた鋭いテーマ性が、本作ではやや希薄である。

矢継ぎ早に展開する膨大な原作のストーリーを追いかけるのに精一杯で、登場人物たちの内面心理等が描ききれていない。
例えば、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)は何故剣心にしつこく戦いを迫るのか、そして剣心に敗れた後、今度は一転剣心に協力し、共に志々雄と戦うようになるのは何故なのか。
原作ではきちんと描かれているのだろうが、映画を観る限りにおいては分かり難い。

剣心の師匠、比古清十郎が登場し、剣心は清十郎に奥義の伝授を依頼するのだが、その奥義も分かったようで分かり辛い。どうやら、「死ぬ事よりも、命の重さを心に留め置く」という事らしいのだが、剣心は既に1作目にして“人を殺す事の空しさ”を悟り、命の大切さを重んじるようになっている
であるなら、今さらという感じで、こんな終盤に至って比古清十郎が登場する必要性は薄いように思う。時間がないのだからカットしてもよかったのでは。

比古は剣心に別れ際「死ぬなよ」と言うのだが、相手に敗れれば死ぬわけだから、結局は勝て、という事で、言わずもがなではないだろうか。

志々雄の配下、十本刀が前編に登場した沢下条張、本作の瀬田宗次郎と安慈を合わせても3人しか対戦相手として登場しておらず、残りはほとんどその他大勢扱いで、どんな強敵かと期待したのに拍子抜け。まあ時間が足らないので致し方ないが、それなら最初から“三本刀”としておいたら問題なかったのに。

ついでに言うなら、伊藤博文ら明治政府の位置付けがあいまい。剣心にしろ志々雄にしろ、都合よく利用して、用済みになれば捨てるという権力者のエゴイズムを鋭く批判するのかと思ったら(実際、煉獄に剣心らがいるのに砲撃しているし)、最後は剣心たちに最敬礼、には唖然とした。剣心たちも、皮肉の一つでも言うべきだろう。

その他、鋼鉄艦・煉獄の建造費はどうやって捻出したのかとか、志々雄の目的は明治政府の転覆だったはずなのに、いつの間にか剣心と戦う事が目的のようになっている、とか、突っ込み所も多い。

…とまあ難点を挙げたが、これはそれだけ期待値が高い事への裏返しである。映画を観ている間はアクションに次ぐアクションに十分興奮させられたし、娯楽映画として水準以上の秀作であるのは間違いない。

大友啓史監督と谷垣健治・アクション監督のコンビには、今後もさらに躍動感溢れる、アクション映画の力作を生み出す事を期待したい。

採点は、本作「伝説の最期編」については(★★★★)。但し前・後編トータルでは(★★★★☆)としておこう。

 ランキングに投票ください → にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ    ブログランキング

|

« 「TOKYO TRIBE」 | トップページ | 「柘榴坂の仇討」 »

コメント

面白かったです。
前編と同様アクションが快調で楽しめました。
船上のアクションが凄かったです。
ただ、お話はちょっと、、私もラストの伊藤博文のセリフには納得できません。
結構好きな滝藤賢一、前作よりは活躍したかな。

投稿: きさ | 2014年10月 2日 (木) 22:47

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「るろうに剣心 伝説の最期編」:

» [映画]「るろうに剣心 伝説の最期編」(大友啓史監督作品) [タニプロダクション(11/15「JUNK!」中野ヘビーシックゼロ)]
出演 佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、神木隆之介、江口洋介、福山雅治、藤原竜也他 新所沢レッツシネパーク 座席位置 前方中央 評点・・・☆☆☆☆ ダンゼン優秀! 以下、facebookより転載 大友啓史監督「るろうに剣心 伝説の最期編」観ました。「京都大火編」に続いて、... [続きを読む]

受信: 2014年10月 1日 (水) 20:15

» 劇場鑑賞「るろうに剣心 伝説の最期編」 [日々“是”精進! ver.F]
どう死ぬかではなく、どう生きるか… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201409130000/ 【楽天ブックスならいつでも送料無料】映画るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編 写真集 [ 菊...価格:2,160円(税込、送料込) 【送料無料選択可!】るろうに剣心 伝説の最期編...... [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 06:14

» 『るろうに剣心 伝説の最期編』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「るろうに剣心 伝説の最期編」□監督 大友啓史□脚本 藤井清美、大友啓史□原作 和月伸宏□キャスト 佐藤 健、武井 咲、青木崇高、蒼井 優、大八木凱斗■鑑賞日 9月13日(土)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★★(5★満点...... [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 08:22

» るろうに剣心 伝説の最期編 [佐藤秀の徒然幻視録]
まさかのオールスター・ゾンビ・バトルロワイアル 公式サイト。和月伸宏原作、大友啓史監督。佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、土屋太鳳、田中泯、宮 ... [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 08:25

» るろうに剣心 伝説の最期編 [Akira's VOICE]
魂の消耗戦。圧巻!   [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 10:10

» 「るろうに剣心 伝説の最期編」  人を活かし、己も生きる [はらやんの映画徒然草]
「るろうに剣心 伝説の最期編」、公開初日に観賞です。 昨日は会社帰りに「京都大火 [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 17:44

» るろうに剣心 京都大火編・・・・・評価額1750円/伝説の最期編・・・・・評価額1650円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
世界よ、これが日本のアクションだ! 和月伸宏原作のコミックを基に 、2012年に公開された「るろうに剣心」の続編にして、完結編となる二部作。 前作は日本映画にスウォードアクションの新たなる地平を切り開き、伝統的な時代劇の創造的破壊を試みたが、その流れは更に加速。 良い意味で漫画チックでエキセントリックなキャラクターたちが、明治初頭の東京と京都で暗躍し、見たことも無いスピードで壮絶な...... [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 20:44

» るろうに剣心 伝説の最期編 [映画的・絵画的・音楽的]
 『るろうに剣心 伝説の最後編』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。 (1)前編の『京都大火編』の出来栄えが素晴らしかったので、後編もと期待して映画館に行ってきました。  前編の最後で、志々雄(藤原竜也)の一味が操る軍艦から突き落とされた薫(武井咲)を追って海...... [続きを読む]

受信: 2014年10月 3日 (金) 20:27

» るろうに剣心 伝説の最期編 [だらだら無気力ブログ!]
相変わらずアクションシーンは圧巻。 [続きを読む]

受信: 2014年10月 3日 (金) 21:57

» るろうに剣心 伝説の最期編 [象のロケット]
浜辺に打ち上げられた剣心を助けたのは、師匠・比古清十郎だった。 今の自分では志々雄を倒せないと悟った剣心は、飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)の奥義伝授を清十郎に懇願する。 一方、剣心が生きていることを知った志々雄は、黒船から攻撃を仕掛け、政府に剣心の公開処刑を要求する…。 剣客アクション・ロマン。... [続きを読む]

受信: 2014年10月 6日 (月) 08:18

» るろうに剣心 伝説の最期編 : ありがとう、剣心! [こんな映画観たよ!-あらすじと感想-]
 広島カープ、今日の負けで奇跡の逆転優勝はなくなりましたね。でも、このリベンジはCSできっちり果たしてほしいものです。ちなみに、本日紹介する作品はこちらになります。 [続きを読む]

受信: 2014年10月 6日 (月) 21:18

» 『るろうに剣心 伝説の最期編』をトーホーシネマズ渋谷3で観て、それにしても監督ディスられすぎふじき★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【★★★面白いけど話としては予定調和すぎないか?】   前篇で海に投げ出された剣心と薫。 そこで、二人とも死んで話が終わるという事は勿論なく、剣心は師匠と再 ... [続きを読む]

受信: 2014年10月 6日 (月) 21:23

» るろうに剣心 伝説の最期編 [にきログ]
さて、京都編後編も見てきたので感想を 原作既読うろおぼえな人の感想です あらすじ 海を漂流し流れ着いたところを、剣術の師匠である比古清十郎(福山雅治)に助けられた緋村剣心(佐藤健)。その後剣心は、山中で居を構え陶器作りに励む師匠に対し、飛天御剣流の奥義を教えてほしいと懇願する。一方、甲鉄艦・煉獄に搭載した大砲で一つの村を襲撃した志々雄真実(藤原竜也)は、政府に対して剣心を指名手配し...... [続きを読む]

受信: 2014年10月13日 (月) 13:13

» 「るろうに剣心 伝説の最期編」 [ば○こう○ちの納得いかないコーナー]
自分は、ldquo;昭和のrdquo;ウルトラ・シリーズを見て育って来た人間。ウルトラ・シリーズには数多の怪獣や宇宙人、ロボット等が登場するが、其の中には未だに忘れられないキャラクターが少なく無い。記事「実相寺氏、光の国に旅立つ」等、過去に何度か触れたが...... [続きを読む]

受信: 2014年10月23日 (木) 00:39

» 「るろうに剣心〜伝説の最期篇〜」 [ここなつ映画レビュー]
「カッコいい…」そう思って思わず涙がこぼれてしまった。後にも先にも、役者のカッコ良さに本当に涙がこぼれたのはこの作品だけだ。「心の中で涙がこぼれた」とか「身悶えした」とかは数あれど…。多くは語りません。でも本当にカッコ良かったです。涙がこぼれたのは、京から横須賀へ向かう山道での蒼紫との闘いが終わり、蒼紫に剣心が言葉をかけるシーンと、横須賀の浜辺で剣心が斎藤一から逆刃刀を受け取るシーン。年取って涙腺が弱くなったとはいえ、知らず知らずのうちに涙がつーっとこぼれていた。ヤバイね、ホント。この作品はもちろん... [続きを読む]

受信: 2014年12月18日 (木) 12:36

» るろうに剣心 伝説の最期編 [いやいやえん]
【概略】 志々雄を倒すため、剣心は師匠の比古清十郎に奥義の伝授を懇願する。一方、剣心が生きていることを知った志々雄は政府に圧力を掛け、剣心の処刑を命じる。 アクション 未来のために。 オリジナルの展開できっちり締めているところ、前作と変わらずアクションのスピードと身体動作、キャラ感が半端ないところなどは評価できると思う。 ただ…例えば翁が死んじゃうとか、例えば蒼紫さまの葛藤がないとか、例えば宗次郎の過去が台詞の説明でしか明かされないとか、細かい部分での「そこ端折りすぎ!」っての... [続きを読む]

受信: 2015年1月21日 (水) 09:13

» るろうに剣心 伝説の最期編 [銀幕大帝α]
2014年 日本 135分 アクション/時代劇 劇場公開(2014/09/13) 監督: 大友啓史 原作: 和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』 脚本: 大友啓史 主題歌: ONE OK ROCK『Heartache』 出演: 佐藤健:緋村剣心 武井咲:神谷薫 伊勢谷友介:四乃森蒼紫 青木...... [続きを読む]

受信: 2015年1月23日 (金) 00:09

» るろうに剣心 伝説の最期編 [タケヤと愉快な仲間達]
監督:大友啓史 出演:大友啓史 出演:佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、江口洋介、藤原竜也、福山雅治 【解説】 和月伸宏原作のコミックを基に『プラチナデータ』などの大友啓史監督と佐藤健主演で映画化したアクション大作の完結編。激動...... [続きを読む]

受信: 2015年2月 1日 (日) 19:58

» るろうに剣心 伝説の最期編 [とつぜんブログ]
監督 大友啓史 出演 佐藤健、藤原竜也、武井咲、福山雅治、伊勢谷友介、蒼井優  このシリーズもこの映画でめでたく完結。確かに、日本映画では今までにないアクションを見せてくれた。アクションだけみれば出色の映画である。この殺陣、アクションは千葉真一全盛期に...... [続きを読む]

受信: 2015年5月12日 (火) 08:55

« 「TOKYO TRIBE」 | トップページ | 「柘榴坂の仇討」 »