「ティム・バートンの世界」展に行ってきました
ティム・バートンと言えば、一般的には「バットマン」シリーズ、「チャーリーとチョコレート工場」、「アリス・イン・ワンダーランド」等のハリウッド大作やジョニ・ーデップと組んだ「シザーハンズ」、「エド・ウッド」等の異色作で知られていますが、その他にも「フランケンウィニー」他のアニメも手掛ける等、その活躍は幅広いけれども、ほとんど“映画作家”として括られているだけです。
だけどこの展覧会を見れば、実態はもっと多彩なマルチ・クリエイターであって、映画はバートン・ワールドのほんの一部でしかなかった事が分かります。
映像分野だけでも、映画以外にTVアニメーション、ミュージック・ビデオも手掛けていますが、映像以外のジャンルでも、膨大なイラスト、絵画を描き、さらには絵本まで手掛ける等、その活躍は幅広く、多岐に亙っている事を、この展覧会を見て、私自身も初めて知りました。いやー感動しました。
入場していきなり、紙ナプキン・アートのコーナーがあります。食堂等にある普通の紙ナプキンを4つ折りにして、ペンで描いているのですが、その数は5~60点はあるでしょうか、人物、怪物、SF的建造物等々、中にはバートン作品に登場するキャラクターの原型らしきものまで、それこそ思いつくままに奔放にイメージを書きなぐった、まさにコンセプトにある“バートンの頭の中を覗いた”ような、ファンタスティックな世界が広がっていて圧倒されます。コーヒーの染みなんかもついたままなのが楽しい。
そして多数のイラスト。これも、台紙はスケッチブックを裁断した小さなものから、画用紙、大きなキャンバス、さらには黒ビロードを下地にしたものまで実に幅広く、画材も、鉛筆、ペン、クレヨン、マーカー、水彩、アクリル、油彩…とこれも多彩。
中に、ゴジラだのガメラだのサンダ対ガイラだのといった、日本の特撮怪獣もののイラストも多数あって、やっぱりオタク趣味だなとニヤリとさせられます。
作品では、キャンバスに描かれた油絵が特に素晴らしい。その色使い、イマジネーションの広がりには圧倒させられます。個人的にはアンディ・ウォホルをも超えて、いや、そのシュールな世界観はもっと上、ピカソかダリに近い、と言ったら褒めすぎになるでしょうか。しばらくは見入ってしまいました。
映画に登場したキャラクターの立体造形や、ビデオによる映像もあるが、本命はやはりイラスト、絵画でしょう。これはじっくり見ておくべきです。
なにしろ、2009年には米国ニューヨーク近代美術館、その他世界各地でアート作品の展覧会が開催され、いずれの都市でも記録的な入場者になったそうです。おそらくは、画家になっても、世界的な名声を博したかも知れません。
実は入る前は、1時間半もあれば見れるだろうと思ってたのですが、あまりの素晴らしさに、アートだけで2時間、映像(実質的なデビュー作「ヴィンセント」(1982)も上映)も含めて、なんと計2時間半も会場に居座ってしまった。おかげで、その後に観る予定だった映画の上映時間に間に合わなくなってしまいました(笑)。
これらの作品を見ていると、バートンの、異形のもの、奇形のものに寄せる深い愛が感じられて、なるほど、こういう偏愛から、あの「シザーハンズ」や「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」、「フランケンウィニー」などが生まれたのだなと納得させられます。
今後は、バートンの旧作映画を観る時にも、これらの作品を思い浮かべて、また新たな気持ちで作品世界に浸る事が出来るかも知れません。本当にすばらしい展覧会でした。
バートン・ファンは無論のこと、絵画・アートに興味のある方も必見であるとお奨めしておきます。
グランフロント大阪での開催は4月19日まで。お早めにどうぞ。
公式ページ→ http://www.tim-burton.jp/
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