「ジュラシック・ワールド」
2015年・アメリカ/アンブリン=ユニヴァーサル
配給:東宝東和
原題:Jurassic World
監督:コリン・トレボロウ
キャラクター創造:マイケル・クライトン
原案:リック・ジャッファ、アマンダ・シルバー
脚本:リック・ジャッファ、アマンダ・シルバー、デレク・コノリー、コリン・トレボロウ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、トーマス・タル
スティーブン・スピルバーグ監督による1、2作目が大ヒットした「ジュラシック・パーク」シリーズの、「ジュラシック・パークIII」以来14年ぶりとなるシリーズ4作目。監督は日本未公開作「彼女はパートタイムトラベラー」(2012)でデビューし、これが長編2作目となる新人コリン・トレボロウ。原案・脚本は「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」シリーズでもコンビを組んだリック・ジャッファとアマンダ・シルバーに「彼女はタイム-」の脚本も手がけたデレク・コノリー。主演は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のクリス・プラット、「レディ・イン・ザ・ウォーター」等のブライス・ダラス・ハワード。
かつて多くの犠牲者を出した“ジュラシック・パーク”があったコスタリカ沖のイスラ・ヌブラル島に、新たな恐竜テーマ・パーク“ジュラシック・ワールド”がオープンし、連日多くの観光客が押し寄せていた。パークの監督官クレア(ブライス・ダラス・ハワード)の甥で、16歳のザックと11歳のグレイの兄弟もここをを訪れていたが、多忙なクレアに彼らをかまっている時間はなく、部下の女性に世話をまかせっきりだった。折しもパークでは、Tレックスよりも巨大で凶暴な新種の恐竜“インドミナス・レックス”をDNA組み換え操作で創り出し、新たな目玉アトラクションとして準備中だったが、それを知った飼育係のオーウェン(クリス・プラット)は不吉な予感を感じていた…。
「ジュラシック・パーク」(1993)が登場した時には、本物の恐竜としか思えないリアルなCGの発達に驚嘆したものだったが、もうあれから22年も経ったのかと感慨深いものがある。本年は「ターミネーター」や「スター・ウォーズ」(本作上映前に予告編上映)といった伝説的名作SFの続編が次々登場しているが、遂にこの傑作の続編までもが登場するとは…。ハリウッドもネタギレ気味のようである。
とはいえ、ファンとしては、やっぱり続編とあらば観たい。特に前作の頃にはなかった3Dで製作されたと聞けば余計観たくなる。
で、家の近くでIMAX・3Dで上映されていたので早速行ってみた。
(以下ネタバレあり)
いやー、さすがIMAX、すごい迫力で見応え十分。ストーリーは後から考えるとかなりアラや突っ込みどころはあるのだが、この作品は映画、というよりも、ユニバーサル・スタジオにおけるアトラクションを楽しむ感覚で観るのが正解だろう。とにかく恐竜たちが目の前に迫って来て、手に汗握る興奮を味わえればそれでいいのである。
そういう意味では、是非にと言うか絶対、3D-出来ればIMAX方式で観るべきである(最近は4DXとかもあるらしい)。
全般的なストーリー展開は、1作目とほぼ同工異曲。DNA操作で現代に恐竜を蘇えらせたが、ちょっとしたアクシデントから恐竜が柵の外に逃げ出し、人々は逃げ惑ってパニックになる…と、いった具合で、この点では旧作と変わらない。
異なっている点は、①テーマパークが営業を開始し、1日2万人もの観客が押し寄せている点(考えたら、過去の3部作ではまだ営業してなかったのだ)、②遺伝子組み換えによって、太古には実在していなかったハイブリッド恐竜を作り出してパークの目玉にしようとしている点
この2点が全体の流れに大きく関わっている。うまい設定である。
特に2番目のDNA組み換えで作り出された新種恐竜、“インドミナス・レックス”は、Tレックスをメインに、いくつかの恐竜のDNAも組み込んで、Tレックスよりも巨大で凶暴で、しかもかなり知性があるというやっかいな存在である。
こいつがうまく人間をだまくらかして脱走し大暴れする。体内にGPSを仕込んで位置が分かるようになっているのだが、途中でこのGPSを体から剥ぎ取って捨てているからかなり利口である。擬態で隠れるという技もあるようで、退治に向かった部隊を全滅させてしまう。
こうなると、恐竜と言うよりはモンスター(怪物)である。まさに悪役にふさわしい。
1作目から一貫するテーマは、“科学の発達が生み出したモンスターによって、人間が復讐される”という、SF映画では実は昔からよくあるものである。
古くは、「フランケンシュタイン」がそうだし、水爆実験によって蘇えったわが「ゴジラ」もそう。近年では、「ターミネーター」もこのジャンルに入るだろう。
本作は、そのメイン・テーマがさらに深化している。
科学者の好奇心というか欲望が、恐竜を復元するだけでは物足らなくなり、いろんなDNAを混ぜ合わせ新種を作る、という恐ろしい事をやってしまう。
無論、会社側の、パーク来場者を増やす為に新しい恐竜を、という要望がそれを後押ししたという点もあるだろうが。
(複数種のDNAを継ぎはぎしているという点では、死体を継ぎはぎしたフランケンシュタインの怪物と似た要素がある。新恐竜を作ったウー博士(B・D・ウォン)はその点でフランケンシュタイン博士と同様のマッド・サイエンティストと言えるだろう)
人間側は、そんな凶暴な怪物を創っても、ハイテクノロジーを使って人為的にコントロール出来る、と慢心している。
だが、そうした人間の驕りが、とんでもない事態を招いてしまうのである。
こう考えた時、思い当たるのがあの福島第一原発の事故である。
核融合によって膨大なエネルギーを生み出す原発は、人間に幸福をもたらす科学技術の発展の成果、と信じられて来た。事故など起こるはずがない、という安全神話に支えられて来た。
だが一たび事故が起こると、人間に凶暴な牙をむいて襲い掛かって来る。コントロール不能となる。
こう考えると、本作のモンスター、インドミナス・レックスは、原発のメタファーでないかと思えて来る。
映画の中で、オーウェンが手なずけたヴェロキラプトルを、軍事目的に利用しようという話が出て来るが、原発に使用する核は元々軍事目的で開発されたものである。
思えば、体内に放射能を帯びた稀代のモンスター、ゴジラは、“核の恐怖”そのものののメタファーであったはずだ(1984年公開の「ゴジラ」では原発を襲って放射能を吸収するシーンが登場する)。
ゴジラつながりで言えば、終盤、前作までは悪役だったラプトルが、Tレックスとタッグを組んで凶悪怪獣インドミナス・レックスと闘う展開となるが、これは、前作までは悪役だったゴジラやラドンが、モスラの説得で人間に味方し、凶悪怪獣キングギドラと壮絶な死闘を繰り広げる「三大怪獣・地球最大の決戦」のパロディ的オマージュではないだろうか。
キングギドラ自体、翼手竜やらドラゴンやら八岐の大蛇やらの、いろんなモンスターを混ぜ合わせたハイブリッド怪獣とも言えるし。
ちなみにラドンは、終盤大暴れするプテラノドンが進化したものである。
1作目「ジュラシック・パーク」へのオマージュがあちこちに登場したり、プテラノドンが人間を襲うシーンはヒッチコックの「鳥」オマージュぽかったりと、いろいろお遊びも仕込まれていて楽しめる。
まあそういった隠し味は、映画を観終わってからゆっくり吟味すればいい事で、映画を観ている間はアトラクション感覚でドキドキしながら楽しめばいい。
監督のコリン・トレボロウ(右)は、まだ低予算作品(日本未公開)を1本撮っただけの新人だが、いきなりビッグ・バジェットの超大作をまかされながらも大健闘。十分及第点と言えるだろう。前作を見ただけで抜擢したスピルバーグもえらい。今後が楽しみだ。
突っ込みどころはあれど、そこらは楽しませてもらった分と相殺して大目に見て、採点はやや甘く…。 (採点=★★★★)
(付記)
原案並びに脚本を担当したリック・ジャッファとアマンダ・シルバーは、本作の前にもコンビで「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」を書いているが、思えばこの2本も、開発された新薬によって猿が遺伝子レベルで進化し、人間への復讐を開始し、やがては人類滅亡に至るというストーリーだった。
その前の1997年に二人が脚本を担当した「レリック」(ピーター・ハイアムズ監督)も、様々な生物の遺伝子を取り込んで生まれた怪物が人間を襲うパニック・ホラーだった。
こうした過去作品の流れが、本作のベースになっていると思われる。この二人の起用も本作成功の一因だろう。
「猿の惑星」「ジュラシック・パーク」という映画史に残る名作SF映画のリブート作品を手がけて、いずれも成功を収めたジャッファ=シルバー・コンビ。さて、次はどんなSF名作のリブートを手がけるのだろうか。注目したい。
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コメント
3Dはあまり好きではないので、2D字幕版を見ました。
お話にツッコミ所は多いですが、なかなか面白かったです。
これが2作目のコリン・トレボロウ監督の手腕はなかなかのものだと私も思いました。
クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワードの主演コンビもなかなかいいです。
ハワードの役は事態を引き起こした犯人の一人じゃないの、という気もしましたが。
ヴィンセント・ドノフリオの悪役演技が楽しいですね。
「最強のふたり」のオマール・シーも出ていました。
TOHOシネマズ新宿で見ましたが、スクリーンが大きく座席にも余裕があって良かったです。
投稿: きさ | 2015年8月17日 (月) 23:08