「園子温という生きもの」
本作は大島新監督が、園子温に1年以上密着してカメラを回し、映画監督のみならず、詩人、小説家、アートパフォーマンス、ロックバンド(Revolution9)活動など、マルチで精力的な活動を続ける園子温の実態をあます所なく伝えている。
大きな白い布に、奔放にメッセージを塗りたくるパフォーマンスには圧倒される。まるで岡本太郎だ(笑)。
「ひそひそ星」のメイキング映像もある。
また染谷将太や二階堂ふみ、田野邉尚人(別冊「映画秘宝」編集長)、「部屋/THE ROOM」でも組んだ映画プロデューサーの安岡卓治、アーティスト集団Chim↑Pomのエリイ、そして神楽坂恵と、ゆかりの人たちへのインタビューも見どころである。
私的には、田野邉尚人のインタビューが興味深かった。「25年前にもし園子温に金を出すプロデューサーがいたなら、日本映画の歴史は変わっていたのではないか」という田野邉氏の発言は、まさにその通りだと思う。
個人的には、愛知県豊川市の園の実家を訪れた際に出て来た、園が幼少期から書き溜めていた観劇ノートに感動した。観た映画の半券を貼り付け、映画の感想やイラスト等が几帳面な字でびっちり書き込まれている。実は私も同様に学生時代からノートに半券を貼り付け、感想を書いていたので、より親近感が湧いた。けど園子温のきめ細かさと情報量の多さには、私など足元にも及ばない。
監督の大島新は、巨匠・故大島渚監督の次男である。テレビでドキュメンタリー作家として活動しており、2014年にテレビ番組で園子温を取り上げたが、時間がなくてとてもテレビでは伝えきれなかったので、本作を作る決心をしたのだという。父・大島渚監督も初期にはテレビ・ドキュメンタリーの傑作を作っている。さすがはカエルの子はカエル。今後も是非、映画の世界でも活躍して欲しいと思う。
園監督に興味のある人、ファンにはお奨めである。「ひそひそ星」と合わせて一緒に観るとなおいい。あるいは、こっちの方が面白かったと思う人も多いかも知れない。
(採点=★★★★)
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