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2016年8月 6日 (土)

「ロスト・バケーション」

Theshallows2016年・アメリカ/コロムビア・ピクチャーズ
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
原題:The Shallows
監督:ジャウム・コレット=セラ
脚本:アンソニー・ジャスウィンスキー
製作:リン・ハリスマッティ・レシェム
製作総指揮:ダグ・メリフィールド、ジャウム・コレット=セラ

サーファーの女性がたった一人で人食いサメと対峙するパニック・サバイバル・アクション。監督は「フライト・ゲーム」「ラン・オールナイト」のジャウム・コレット=セラ。主演は「アデライン、100年目の恋」のブレイク・ライブリー。

サーファーで医学生のナンシー(ブレイク・ライヴリー)は、休暇を利用して秘境ビーチにやって来た。美しい海に魅せられ、ナンシーは日が暮れるのも忘れてサーフィンに没頭していた。ところが突然、海中で何かにアタックされ脚を負傷。必死に近くの岩場までたどり着く。その正体は獰猛なホホジロザメだった。海岸までは200メートルほどの近さだったが、サメが岩の周囲を旋回し逃げられず、助けを呼ぶ事も出来ない。やがて時間とともに潮が満ち、満潮になればそこは確実に沈む。果たしてナンシーはこの危機をどう乗り切るか。タイムリミットは刻々迫っていた…。

サメが人間を襲う映画は、スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作「ジョーズ JAWS」を筆頭に、A級からC級に至るまでこれまで数多く作られて来た。ロジャー・コーマン製作の「シャークトパス」シリーズのような笑える珍品もある。

バリエーションとしてはもう出尽くした感があって、いいかげん食傷気味だったのだが、どっこい、この手があったか、と思わず膝を打ちたくなる、これは実にスリリングで見応えあるサメ映画の秀作であった。

(以下ネタバレあり)

プロットはごくシンプル。“海で若い女性がサメに襲われるサバイバルアクション”と、1行で説明出来る(笑)単純明快なお話である。

主要登場人物はブレイク・ライブリー扮する女性サーファーただ一人。その他の登場人物はチラリ出てくる程度で、ほぼ全編、凶暴なホホジロサメとライブラリーとの1対1の対決だけで終始する。

こういうワン・シチュエーション・ドラマは、脚本がよほど練れていないと単調で飽きてくるのだが、その点はよく考えられている。サメに足を噛み付かれて重傷を負い、放っておくと出血多量か傷口の壊死で死ぬかも知れないという時間的切迫危機に、たどり着いた岩場も満潮になれば沈んでしまうという、2重のタイムリミット・サスペンスが仕掛けられ、この絶体絶命の状況から、ナンシーはどう脱出するのか、観ている方もハラハラし、緊張感が高まって行く。

これら、幾重にも仕掛けられた危機的状況を、ナンシーが持てる知恵と能力(医学生であるという設定が生きて来る)を振り絞って一つづつ乗り越えて行く展開がスリリングで、シンプルであるにも関わらず飽きさせない。ピアスとかヘッドセット・ビデオカメラ等の小道具の使い方もうまい。
また、翼を怪我して動けないカモメが一緒に岩場に留まり、ナンシーの話し相手になるという設定もうまい。これによって恐怖で折れそうになるナンシーの心も癒され、単調になりがちな物語の彩りにもなっている。随所に工夫を凝らした脚本が秀逸。

こういう、1対1の対決だけで物語が進行する、という内容で思い出すのがスピルバーグ監督の本邦初登場作品「激突!」
大型タンクローリーに追いかけられた小さな車がひたすら逃げ回るという設定だけで物語を引っ張る脚本・演出が出色であったが、獲物を見つけた巨大なモンスターが、ゆっくりといたぶるように一人のか弱い人間を攻撃し、攻防の末、弱い人間が最後に反撃し勝利する、という展開が本作とそっくりで、多分本作の作者たちはこちらのスピルバーグ作品も参考にしたのではないだろうか。

そういう意味では本作は、「ジョーズ、激突!版」と言えるだろう、いや逆に「激突!、ジョーズ版」と言えるかも知れない。まあどっちでもいいが(笑)。

コレット=セラ監督の演出は緩急自在、スリル満点で、86分という短い上映時間とは思えない位、タイトに引き締まったサスペンスの好編であった。コレット=セラ監督、着実に力を付けて来ているようで、今後も期待大である。
ブレイク・ライブリーのピチピチ、ビキニ姿も拝めたり、サーフイン・シーンもありと、夏らしい映像も楽しい。後から考えればややツッ込み所もあるけれど、観ている間は十分楽しめるエンタティンメントの快作である。頭をカラッポにして物語に浸る事をお奨めする。    (採点=★★★★☆

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(付記)

本作の原題は"The Shallows"「ロスト・バケーション」は配給会社が付けた邦題)。これは名詞では「浅瀬」という意味。200メートル沖合いは浅瀬ではないだろうと思えるが、Shallowには形容詞として「浅はかな」という意味もある。女の子一人で、危険な生物がいるかも知れない海に入って、しかも万一の時の対応(連絡手段等)も考えていなかったのは、リスク管理が出来ていない浅はかな行動と、暗にヒロインを戒めているのかも知れない。いや、複数形になってるから、ナンシーの「来ちゃダメ!」の警告も無視して海に入ってサメに食われてしまう3人のダメな男たちも含めて「浅はかな人たち」を指しているのかも。
そう考えるとこの題名、浅いどころか、なかなか深い意味があると言えるのではないか。

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コメント

さすがジャウム・コレット=セラ監督、面白かったです。
岩場に取り残されたヒロインがサメと戦うというシンプルな話ですが、セラ監督らしくサスペンスが効いていて見せます。
ほとんど一人芝居のブレイク・ライブリーも熱演していました。
最初は爽やかな海の風景で涼しく、中盤からはサスペンスとサメの怖さで涼しくなります。
なるほど、激突のサメ版ですか。

投稿: きさ | 2016年8月 9日 (火) 08:05

「浅い」で連想するのは「浅井企画」。欽ちゃん関係の芸能人がいっぱい在籍する芸能事務所。うん、確かにウド鈴木とかまんま「浅はかな人々」で、生きて岩礁から帰ってこれないと思う。

投稿: ふじき78 | 2016年8月17日 (水) 00:02

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