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2016年9月19日 (月)

「超高速!参勤交代 リターンズ」

Choukousoku22016年・日本
配給:松竹
監督:本木克英
原作:土橋章宏 (「超高速!参勤交代 老中の逆襲」)
脚本:土橋章宏
撮影:江原祥二
音楽:周防義和
製作総指揮:大角正
プロデューサー:矢島孝   

2年前、スマッシュヒットを記録し、第57回ブルーリボン賞作品賞も獲得した時代劇コメディ「超高速!参勤交代」の続編。監督は前作に引続きメガホンを取る本木克英。出演者も前作の湯長谷藩藩主役の佐々木蔵之介以下、深田恭子、西村雅彦、寺脇康文、陣内孝則、市川猿之助ら主要キャストが再集結し、新たに古田新太、渡辺裕之、宍戸開、富田靖子らが参加している。

老中・松平信祝(陣内孝則)の悪企みを打ち負かした湯長谷藩藩主の内藤政醇(佐々木蔵之介)ら一行は、藩に戻る交代の帰路、牛久宿で長逗留していたが、そこに湯長谷で一揆が起きた旨の急報が届けられた。吉宗の日光社参による恩赦で閉門蟄居を解かれた信祝が復讐の為、さらに大きな権力と最強の刺客を使って湯長谷藩を壊滅させようと企んだ罠だった。一揆を収めるためには2日以内に湯長谷へ帰らなくてはならず、政醇らは行きの倍の速さで走って故郷に向かったが、行く手には信祝が放った尾張柳生の刺客が待ち構えていた…。 

前作は、第37回城戸賞を受賞した土橋章宏のアイデアに満ちた脚本のおかげで、ユニークな時代劇コメディの佳作に仕上がっていた(前作の拙作品評はこちら)。

興行的にも予想を上回るヒットとなり、当然の如く続編が作られる事となった。
元となったのは、土橋章宏自身による小説「超高速!参勤交代 老中の逆襲」(文庫本化の際、映画と同じ「超高速!参勤交代 リターンズ」に改題)。これを土橋自ら映画用に脚色した。小説タイトルは無論これも続編もの「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」のもじり。
“リターンズ”は文字通り、参勤交代の復路という意味と、老中・信祝の逆襲=リターン・マッチという意味も兼ねているのだろう。

(以下ネタバレあり。注意)

多分予算も増えたこともあるし、超高速・少人数での参勤交代作戦アイデアも前作で出尽くした事もあってか、本作では高速参勤交代シークェンスはごく短く、代りに信祝が、予ねてより吉宗に不満を持っていた尾張藩主吉春と尾張柳生一派を焚きつけ、なんと将軍吉宗暗殺を企てる…という国を揺るがすクーデター計画にスケールアップ。ラストも信祝の軍勢1千人対内藤政醇たち湯長谷藩七人のサムライとの一騎打ち、とこれまた大バトルが展開される。

お話を大きくするのはいいけれど、ちょっと風呂敷を広げ過ぎの感もあり。将軍暗殺まで行くと、たかだか東北の貧乏小藩の話どころではなくなってしまう。というか将軍暗殺というクーデターを成功させたかったら、信祝自ら軍勢引き連れ東北まで行ってる余裕などないだろうに、とツッ込みたくなる。

ラストの千人対七人の対決は、絵としては面白いけれどあまりに無謀で、もし尾張柳生の当主が何故か突然「時期尚早」と言いだしたりせず、かつ大岡忠相たちの動きがなかったら(政醇は知らない)政醇たちは多勢に無勢で討死にしていただろうし、湯長谷藩は取り潰し、藩士とその家族は路頭に迷う事になる。賢い方法ではない。ここはもう少しアイデアを練って欲しかった。

とはいえ、いろんなエピソードを網羅し、今回も参勤交代行列を大人数に見せかけるアイデアやら、指名手配のお触書が回っている関所をどう通過するかとか、尾張柳生に奪われたお城をどう奪還するか等の知略・策略は相変わらず楽しいし、適所に配置されたチャンバラ・シーンもスリリングかつ豪快で見ごたえがある。中でも尾張柳生の剣豪・諸坂三太夫(渡辺裕之)と荒木源八郎(寺脇康文)との息詰まる対決は久しぶりに時代劇アクションの醍醐味を堪能出来る。欲を言えば、寺脇も熱演だが、もう少し“剣豪”の風格がある役者が荒木に扮していればもっと興奮出来ただろう。

そして前作にもあった政醇の、臣下や民百姓たちを思う幅広い心の優しさは本作も変らず、さらに憎っくき信祝に対してまでも、罪を償い、湯長谷藩へ来てはどうかと声をかける心の広さには感服する。
ラストでも将軍吉宗が、信祝に切腹でなく遠島を申し付ける寛容ぶりを示し、「怒りは敵と思え、堪忍こそ無事長久の元よ」と語る言葉に、現代にも通じる、復讐の連鎖、不寛容な時代の空気に対する作者のメッセージを感じ取る事が出来る。
その後の吉宗の言葉「それにしても世襲ばかりでは幕府も危ういのう」が何とも皮肉で笑ってしまった。

それにしても、大岡忠相(古田新太)って江戸町奉行のはずなのに、遠く湯長谷藩まで出向くなんて…まるで隠密同心だ(笑)。

そんなわけで、ツッ込みどころも多いけれど、チャンバラ・アクション・エンタティンメントとしては前作よりも派手になり、今回も楽しめるウエルメイドな作品に仕上がっている。

ちょっと残念なのは、コメディなのに人が死ぬシーンがかなりリアルに描かれていた事。ラストも、政醇ら七人が敵軍勢をバッタバッタ斬り倒すのだが、彼らも上に命令されてるだけ。悪人ではないのだから、今ひとつ爽快な気分にはなれない。前作でも死人は出ていたが、本作ほど多数ではない。個人的な感想だが、こうしたコメディ主体の映画では、出来るだけ人が死なない作りの方が、もっと気楽に楽しめるのではないか。なにしろ古くは小津(「生れてはみたけれど」)、木下(「お嬢さん乾杯」)から「寅さん」「釣りバカ」に至る、喜劇映画の伝統ある松竹作品なのだから。  (採点=★★★☆

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(で、お楽しみはココからだ)

本作には、あちこちに過去の時代劇の名作からの引用が散りばめられており、これらを見つけるのもお楽しみである。

前作でも黒澤明監督「七人の侍」へのオマージュが感じられたが、本作でもラストで大軍勢に挑むのは政醇をリーダーとする七人の侍である。

黒澤繋がりで言うと、手配書が回っている関所を、村人に化けて奇策で通過するくだりは、黒澤作品「隠し砦の三悪人」で六郎太(三船敏郎)以下4名がまんまと関所を通り抜けるシーン(「褒美寄こせ!」)を意識しているに違いない。
(思い出したが、棺桶に隠れて敵の目を逃れる作戦は、黒澤監督の「用心棒」で三十郎(これも三船)が使ったアイデアである。つまりは黒澤の2本の傑作時代劇のアイデアをブレンドしてる事になる)

尾張柳生一派の凄腕の侍たちが謀略を張り巡らせるくだりは、深作欣二監督「柳生一族の陰謀」を思わせる。特に顔半分を仮面で隠した柳生幻道(宍戸開)は、片目を眼帯で覆った柳生十兵衛(千葉真一)へのオマージュだろう。

柳生と言えば、本作における尾張柳生一派の暗躍は、若山富三郎が拝一刀に扮し一世を風靡した「子連れ狼」に登場する裏柳生一族のそれにヒントを得ているのではないだろうか。老人風の尾張柳生当主も、拝一刀の宿敵・柳生烈堂を思わせる。

柳生十兵衛と言えば、千葉真一も有名だが、東映時代劇華やかなりし時代では、何と言っても剣豪俳優、近衛十四郎が十兵衛を演じた「柳生武芸帳」シリーズが忘れ難い。前作でもオマージュされた「十三人の刺客」(1963)登場以降、東映では“集団時代劇”と呼ばれる凄惨なタッチの時代劇が続々作られたが、初期はわりと大らかな作りだった「柳生武芸帳」シリーズもこれらに刺激されて、後半になるにつれてどんどん集団時代劇化して行った。

Katamesuigetsunokenそのシリーズの6作目「柳生武芸帳・片目水月の剣」は、なんと参勤交代が重要なモチーフとなっており、幕府転覆を狙う黒幕が外様大名に「無理な参勤交代は外様を取り潰す為の幕府の謀略」とけしかけるエピソードが登場する。

その他でも、9作目「十兵衛暗殺剣」では十兵衛が壮絶な斬り合いの果て、本作の諸坂三太夫同様に刀を折られてしまう

17ninja集団時代劇と言えば、そのハシリは1963年の天尾完次プロデュース、池上金男脚本の「十七人の忍者」(長谷川安人監督)である。この作品の基本プロットは、忍者たちが鉄壁の守りを誇るお城に、策略を弄して侵入するというもの。
この作品が好評で、同じ天尾完次プロ+池上金男脚本コンビで同年、集団時代劇の傑作「十三人の刺客」が作られる事となるのである。
その「十七人の忍者」で、忍者たちの前に立ちふさがる凄腕の侍を演じたのが、十兵衛役者・近衛十四郎であったというのも、また面白い取り合わせである。

原作・脚本の土橋章宏氏、前作でも感じたが、東映集団時代劇の熱烈なファンなのではないだろうか。

 

       
原作本
原作・文庫版
       

 

                         
DVD・前作
       
DVD「柳生一族の陰謀」
       

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コメント

続編も面白かったですね。
まあ、結構お話には前作と同じくツッコミ所多いですが。
参勤交代という要素は薄れましたが、その分アクションや色々な趣向があり楽しめます。
まあ、結構ベタですがこういう映画もいいですね。
佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文といった前作から引き続きのキャストもいいですし、渡辺裕之、古田新太といった新キャストも良く、楽しい映画でした。

投稿: きさ | 2016年9月22日 (木) 08:11

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