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2017年3月20日 (月)

「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」

Cherdan2017年・日本/ツインズジャパン、他
配給:東宝
監督:河合勇人
脚本:林 民夫
企画プロデュース:平野隆
プロデューサー:辻本珠子、下田淳行
撮影:花村也寸志

2009年に全米チアダンス選手権大会で優勝した福井商業高等学校チアダンス部の実話ををモデルに映画化。監督は「鈴木先生」「俺物語!!」の河合勇人。主演は「ちはやふる」に続き高校部活ものに主演の広瀬すず。共演は「劇場版   零~ゼロ~」の中条あやみ、「野のなななのか」の山崎紘菜、「アマルフィ   女神の報酬」の天海祐希など。

中学を卒業し県立福井中央高校に進学した友永ひかり(広瀬すず)は、中学からの同級でサッカー部に入部した孝介(真剣佑)を応援したいという軽い気持ちでチアダンス部に入部した。しかしチアダンス部の顧問・早乙女薫子(天海祐希)は全米大会制覇を目標に掲げ、厳しいスパルタ指導に当たっていた。そんな猛烈指導にに続々と退部者が出、ひかりも一時は挫けそうになるが、チームメイトの彩乃(中条あやみ)と共に、部活を続ける決心をし、全米大会という大きな目標に向かって、ひかりたちは猛特訓を重ねて行く…。

この手の、若者たちが目標に向かって練習を積み重ね最後に勝利するというパターンの作品(主に学園が舞台)は私は大好きで、これまでも何度か書いて来たが、結構感動する秀作が多い。これは是非観たいと思った。

これは実話だそうだが、実話で、しかも舞台が北陸の地方都市と聞けば、あの傑作「フラガール」をいやでも思い出す。ますます期待が高まる。

で、観ての感想。


うーん、期待し過ぎたのか、やや物足りなかった。

ストーリー的には、チームが寄せ集められ猛特訓→しかし最初の試合では大失敗→チーム解散の危機→心機一転、再度猛特訓→最後に見事大成功
…とこの手の王道パターンをうまく踏襲している。その点では十分楽しめる。

良かった点を先に挙げておくと、夜の街のショーウインドウの前で一人踊る唯(山崎紘葉)を見つけたひかりがステップを合わせて踊り出し、そこに彩乃が加わるシーン。
それと、授業中に机の下でひかりたちが足でリズムを取るシーンに続いて、カットが変わりカメラが引くと、昼休みの校庭で全員が同じように足を動かしている。
どちらも洋画のミュージカルを髣髴とさせる演出であった。こうしたタッチで全体を統一したなら、日本では数少ないミュージカル映画の秀作になったかも知れない。

首をひねったのは、顧問の早乙女先生を、ぶっ飛んだ破天荒コメディ・キャラにした事。
コメディ作品であるならこれもアリだろうが、実話に基づいた感動の作品なのだから、もっと普通のキャラで良かった。で、ラストでは涙の抱擁シーンがあるのだから余計この前半が浮いてしまっている。
この他にも、ピンチに陥ったタイミングで 部室の後方に立てかけた物がズルッと傾いたり落ちたりするといった、「ウォーターボーイズ」にも出て来たようなコミカルなシーンがあるのだが、少々サムい。
「ウォーターボーイズ」の成功にあやかろうとしたのか、無理にコメディ仕立てにして、却ってつまらなくしている。

見習うなら、むしろ同じく実話が素材の「フラガール」を見習って欲しかった。笑いなど入れずとも、力のこもった演出だけで人を感動させる事は出来るのである。

途中の福井県大会、東京での全国大会と共に優勝を獲得した大会で、いずれもダンス・シーンをパスして見せないのも物足りなかった。さあどんなパフォーマンスを見せるのかと思っていたら肩透かしである。
これはラストの全米大会で一気に盛り上げようとしたのだろうけれど、俳優は大変だろうが、大会を経るごとにダンスがどのようにスキルアップして行ったかのプロセスも見たかった。

それと、その全米大会でのダンスが、見ている先生や地元応援団のカットを挿入したり、アップカットを入れたりと細かくカットを割っているのもよくない。極力長いカットで見せる方がより感動するはずである。演じた女優たちが頑張った特訓の成果を見せているだけに。

人物の描きこみも不足している。早乙女先生のチアダンスに賭ける思いはもっと早くから丁寧に描くべきだし、謎にしておく必然性はない。
一番足りないのは、ダンスコーチの 大野コーチ(陽月華)の扱いである。重要な役柄なのに、あまりに存在感が薄い。この人は「フラガール」で言うなら、フラダンスコーチの平山まどか(松雪泰子)に当る人物と思われるが、「フラガール」が、平山コーチの心情をきめ細かく描いて感動を読んだのに比べて扱いが軽過ぎる。
後半になると、大野コーチ、ますます影が薄くなる。ラストでひかりたちは早乙女先生を囲んで泣くのだが、大野コーチも称えてあげないと不公平だろう。

優勝決定後に、それから数年後の彼女たちのその後が描かれるのだが、蛇足である。優勝し、みんなが抱き合った所で終わらせた方がすっきりする。
その後の顛末については、実話に基づいた洋画作品でよく使われるように、黒バックに字幕で簡単に説明すれば足りる事である。その方がさらに実話らしくなる。

…とまあ不満点を挙げたが、王道パターンに沿った物語展開は安心して観ていられるし、クライマックスの優勝シーンはそれなりに盛り上がって、ちょっぴり泣けたのも事実ではある。青春スポコンものとしては十分面白い作品に仕上がっている。

 
で、なぜ厳しい事を書くかというと、こうした王道パターンの作品は、多くがその年のベストワンかベストテン上位を賑わし、かつ監督を担当した人がその作品をきっかけとして大きく飛躍する等、ある意味ゲンのいい作品が多いのである。
例えば、「シコ、ふんじゃった。」「フラガール」はどちらもその年のキネ旬ベストワン。監督の周防正行、李相日は共にこれで一躍脚光を浴び、以後日本を代表する一流監督となった。
矢口史靖監督も、それまではあまり注目されていなかったが、2001年、「ウォーターボーイズ」で大ブレイク、キネ旬ベストテンでは8位だったが読者のベストテンでは3位、やはり以後売れっ子監督となる。
「がんばっていきまっしょい」(1998)を監督した磯村一路はピンク映画出身で、それまではマイナーな位置にいたが、この作品がキネ旬3位と高評価を得て、以後メジャー会社で活躍するようになった。一昨年には「おかあさんの木」を監督している。
そして昨年の「ちはやふる」も、やはりそれまではマイナーなポジションにいた小泉徳宏監督が、初メジャー作品となった本作で若い観客からの支持を集め、ヒットした事は記憶に新しいところ。
「青春デンデケデケデケ」(1992)の監督大林宣彦は、当時既にベテランであったが、その年のキネ旬ベストテンで2位となり(同監督作品の中では多分ベストテンの最上位作)、新しいファンを開拓した。ちなみにその年のベストワンが「シコ、ふんじゃった。」で、これがなければベストワンになった可能性もある。

つまりは、そんな具合にこのジャンルの作品は、どれもクオリティが高く、作った監督がその作品を足掛かりとして一流監督になっているのである。

そういう縁起のいいジャンルなのだから、河合勇人監督には、青春スポコン・コメディに留まらず、もっとハイレベルの、「フラガール」並みのベストテン上位を狙うような力作に作り上げて欲しかった。そうすれば河合監督の評価も上がったはずである。もったいない事である。
それこそ、“福井県に留まらず、全米一という高い目標を目指し、見事全米一となった”福井商業高等学校にならって、高い志を持って日本一(ベストワン)を目指すべきだったのである。

…まあこれは私の個人的な、ないものねだり。観て損はない、存分に楽しめる青春映画の佳作である。   (採点=★★★★

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コメント

前半は割と誇張が多く大丈夫かなと思いましたが、中盤からはしっかりした演出で見せます。
広瀬すずはもちろんいいですが、どちらかというと前半は部長役の中条あやみが中心です。
この二人だけでなく個性豊かな部員たちがいいです。
顧問の天海祐希はちょっと気の毒な描き方でした。。
河合監督の演出も良く何よりチアダンスが素晴らしい。

投稿: きさ | 2017年3月28日 (火) 08:01

この映画に一番似てるのは、アメリカ映画の「ピッチ・パーフェクト」及び「ピッチ・パーフェクト2」だと思います。

投稿: タニプロ | 2017年4月21日 (金) 02:15

私はまだその映画を観てないんですが、友人の映画評論家がキネマ旬報で「PARKS」について、「はじまりのうた」を引き合いに出してます。
もう日本映画に日本映画らしさを求めること自体が古くなったんではないでしょうか。
たとえば、私は劇場公開されるようになってからずっと山戸結希監督の作品を観ていて、真利子哲也監督も、誰も観てないような映画までずっと観てきました。
あの二人、昔の名作とかたぶん全然知らないけど、若い観客を掴む映画が撮れてます。
山戸結希監督なんて、映画撮る技術すら学ばず学生映画で劇場公開されてました。
黒沢清監督がフランスで映画撮る時代なんで、日本映画の監督が他に知らないといけないこと、観て評論する側も他に知らないといけないことがある時代なんじゃないかと思ってます。

投稿: タニプロ | 2017年4月23日 (日) 01:59

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