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2017年6月11日 (日)

「家族はつらいよ2」

Kazokuhaturaiyo22017年・日本
配給:松竹
監督:山田洋次
原作:山田洋次
脚本:山田洋次、平松恵美子
撮影:近森眞史
音楽:久石譲
タイトルデザイン:横尾忠則

昨年公開された山田洋次監督の喜劇「家族はつらいよ」の続編。前作の主要キャスト、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、風吹ジュンらがそのまま再登場。また前作にも出演した小林稔侍は別の役で出演している。脚本もこの所コンビが続く山田洋次と平松恵美子の共作。

周造(橋爪功)と富子(吉行和子)の熟年離婚の危機から数年後。マイカーでの外出をささやかな楽しみにしている周造だったが、最近周造の車に凹みやすり傷が目立つようになり、家族は高齢ドライバーの危険運転による事故を心配し、運転免許を返納させようとするが、頑固な周造はバカにするなと激怒し、平田家は再び不穏な空気に包まれる。そんなある日、富子がオーロラを見る海外旅行に出かけることになり、鬼の居ぬ間にと周造はお気に入りの居酒屋の女将かよ(風吹ジュン)を乗せて車を走らせるが、その途中、高校時代の同級生・丸田(小林稔侍)とバッタリ再会する…。

前作「家族はつらいよ」 について、私はやや辛口の批評をした。笑いの中にも、人間のおかしさ、哀しさ、残酷さを鋭く凝視し、時に鋭く時代の状況に斬り込んで来た一連の山田喜劇をこよなく愛する私にとっては、前作は他愛ないコメディ止まりでややもの足りなかったからである。

特に不足していると思った点は、①舞台が中流の上の家庭内で起きるコップの中の嵐止まりで、過去の山田喜劇にしばしば登場した、一般社会からはみ出した人々(寅さんもそう)や、底辺に生きる下層庶民が登場しなかった事、②現代社会が抱える諸問題や社会の歪みへの切り込み不足、の2点であった。

無論これは私の独断と偏見で、「コメディなんだからそこまで求めなくても」というご意見もいただいた。ちょっと辛すぎたかなと反省もした次第である。

そこで登場のパート2。文句を言いながらも、やっぱり山田洋次作品なら観たくなるのがファンの性である。

(以下ネタバレあり)

いやあ、観てちょっと驚いた。私が指摘した、前記2つのテーマが今回はちゃんと盛り込まれているではないか。
小林稔侍扮する、事業に失敗し家族離散、日々の生活にも事欠き、安アパートで一人暮らしの独居老人・丸田は、まさに①の社会の底辺で暮らす下層庶民だし、周造自身の高齢者ドライバーの免許返納問題や、憲子(蒼井優)の家庭の介護、認知症問題、丸田の孤独死・無縁社会問題など、今回は②の要素もかなり取り入れられている。

まさか私のブログを読んだわけではないだろうし、多分山田監督自身が、前作は問題提起が少なかったと反省したのかも知れない。

しかしそうした深刻になりがちな話を盛り込みながら、随所に笑いをまぶして暗くならないよう、最後は観客がホッとするようなエピソードでまとめている点はさすがである。

特に私がニヤリとしたのは、亡くなった丸田の死体を使ったブラックな笑いの部分である。2階から仏を下ろそうとして、下の一人が足を踏み外して丸田の死体を落としてしまい、それを見た鰻屋の出前が震え上がって逃げ出すくだりでは大笑いしてしまった。

亡くなった人間を笑いのネタにするなんて不謹慎、という声も出そうだが、実は山田監督、過去にも死体を笑いのネタにした事は何度もある
1966年の落語をモチーフにした長屋時代劇コメディ「運がよけりゃ」では、死んだ婆さんの死体を担ぎ出し、強欲なオーナーの屋敷に持ち込んで死体にカッポレを躍らせるというムチャクチャぶり。「男はつらいよ」の直前に監督した、やはり長屋もの(ただし時代は現代)「喜劇・一発大必勝」ではハナ肇が死んだ谷啓の死体を棺桶から引っ張り出して死人とダンスし、そのショックで死んだ谷啓が生き返る。
「男はつらいよ」の大ヒットで以後はこうしたブラックな笑いは影を潜めていた。まさかこのお歳で“死体で笑う”ブラックユーモアが復活するとは思わなかった。ただ、昔ほど毒気が強くないのが難点だけれど。まあホームドラマではこれが限界か。

出演者も、2作目でツボが分かって来たのか、絶妙のアンサンブルぶりで、周造の自己チュー、頑固ぶりもますます拍車がかかって、今回は楽しめた。

そんな周造のワガママぶりに辟易しながらも、丸田の葬儀には家族みんな時間をやりくりして参加する。喧嘩したり揉めたりしながらも、平田家の家族はみんな人情に厚い人たちばかりのようである。そんな家族の絆の強さに、ちょっぴり泣けてしまった。

 
周造が丸田を呼んでささやかな同窓会を開いた後、かよの居酒屋で丸田を囲んで夜更けまで飲み、丸田を周造の自宅に連れ込むくだりは、小津安二郎の「東京物語」における同じようなシーン(笠智衆が友人の東野英次郎を娘の杉村春子の家に連れ帰る)を思い出す。

また、周造の自分勝手な家父長的ワンマンぶりは、木下恵介監督の「破れ太鼓」(1949)のバンツマ演じる主人公・津田軍平を思わせたりもする。
軍平の次男(木下忠司)は音楽家志望のピアノ弾きなのだが、奇しくも本作の周造の次男・庄太もピアノの調律師とどちらもピアノに縁がある

山田洋次監督は、その小津、木下両巨匠が率いた松竹・大船の伝統を引き継ぐ名匠であり、これらのシーンは、あるいは小津、木下監督へのオマージュなのかも知れない。

そんなわけで、私が1作目で感じた不満が本作ではかなり解消され、笑いの中に現代社会を皮肉り風刺する切り口も絶妙で、安心して楽しめる作品になっている。

個人的には、亡くなった私の父が、本作の周造と同様、車に凹み傷を一杯付けてたので、家族で協議して車を取り上げようとしたら怒り出してうまく行かなかったという、本作とそっくりな経験をしているので他人事とは思えず、余計身につまされた。この点でも点数が高くなった。

パート3の話もあるようだが、高齢化と社会的格差がどんどん進む現代、ネタには事欠かないだろう。次作も期待出来る。
山田監督自身もご高齢(85歳!)で、どこまで作れるか分からないけれど、体の続く限り新作を発表していただく事を望みたい。        (採点=★★★★

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